あなたのための物語

長谷敏司 / ハヤカワ文庫JA
(67件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
18
20
14
7
0
  • 意外な面白さだった

    人の感情、知識、経験を取り出すことのできるナノマシン(すいません、理解が追い付かずざっくり自己流です)を開発中の女性が主人公。
    装丁からハードSFかと思ったら、舞台設定が近近未来なせいか道具立ては驚くほど身近。
    いかにもありそうだし、すぐにこういう世の中になるんだろうというシチュエーションがたくさんあって、今私たちはSFの世界に生きてるんだなぁと思わせられた。
    しばらく読んでから気づいたが、話は主人公をピンポイントで追っていていつまでたっても登場人物は増えないし、舞台となる場所も限られてる。なのに全く飽きずに読み進められる、というのは作者の力量のおかでだろうか。
    主人公がちょっとぐるぐるしちゃうのが気になったけど、死にまつわる話なのでわざとそうしたのか作者もぐるぐるしちゃってるのか・・・。
    このテーマでこの設定でただ主人公を追うだけでこの量を書ききったのはすごいと思う。
    ロボットも宇宙も未知の生命体も出てこなくてもSFが好きという人は楽しめるでしょう。
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    投稿日:2014.02.18

  • 少し玄人向けのSF作品です

    ITPと呼ばれる人工知能(人工知能としましたが、的確な表現が思いつきませんでした)の開発責任者となったものの、開発中に、ただ死を待つだけの身に突如なってしまったサマンサ。彼女が死に直面し、そして死にどう対処していくのかというストーリーとなっています。

    ひたすら死について考えさせられる作品なので、重い内容ですが、wanna beとの会話や彼女自身が取る行動や決心には、深く考えさせられました。そして非生命であるwanna beとサマンサの死に関する会話が、この作品の大きな盛り上がりであり、そのあとに続く「とあるもの」との会話も、生命や人工的な知能について、問題提起していると感じました。
    ただ文章が分かりづらく、そして長すぎると感じ、その為★は3つにしました。しかしSF作品の読書としては、十分に楽しめました。
    日頃読書をしない方や、初めて読むSF作品としては、ちょっとオススメはできませんが、内容自体は素晴らしい作品です。
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    投稿日:2014.08.24

  • 人工知能の恋

    開発した人工知能(的なもの?)とのラブストーリーとして読みました。SFをそれほど読み慣れていないので、近未来的な設定を味わうには私には力不足で、雰囲気として浸るくらいしかできませんでした。

    それでも、ひとりの研究者が避けられない病による死を前にした恐怖はとてもリアリティがあり、そこで差し出される人工知能(的なもの。でももっと機械に近いので余計愛おしく感じられる)からの、純粋にみえる親愛の感情は、読者である私自身も救われるようでした。

    ままならないことばかりで、自分のせいで孤独である主人公の生活はモノクロで、人工知能とのやり取りが徐々に色づきカラーになっていくように感じます。
    泣けました。
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    投稿日:2015.12.04

  • 絶望的だけどじわじわと心に響く

    痛くて辛くて絶望的な物語。
    人工知能を通して理性と感情と肉体(死)を,人間の本質を,突きつけられる。

    投稿日:2014.12.31

  • (ファミチキください)こいつ直接脳内に・・・!

    ITPはこんなんしたいプロトコル
    1984年から百年後
    神経の発火と電子信号
    人は道具か道具は何か
    過去に対するプロテスト
    未来に向ける物語
    私と《私》
    《あなた》とあなた

    〈《私》はお役に立てましたか?〉続きを読む

    投稿日:2016.03.08

  • 難しい!と思いました

    死にゆく科学者が自分の作ったシステムを通して自己を振り返る。
    彼女の発明は人間の人格をhtml言語のように書き出せること。これを別の人が自分にコピーすることで知を共有できる。そんな画期的な発明であった
    その検証のために作られた人工人格は彼女のために物語を書くために作られた。
    そんな人工人格との会話の中で自分の死を見つめ直す…
    そんな話なのですけど、難しかった~
    残っているイメージがトイレに座っているゲリのおばさん…
    主人公のキャラが強くてなかなか入り込めなかった。
    非常に難しい。素直な感想です。
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    投稿日:2016.04.27

ブクログレビュー

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  • ほーさん

    ほーさん

    面白かった。SF苦手だけど楽しく読めた。
    死についてふわっとしか考えられてなかったのかも、と思った。

    投稿日:2021.07.01

  • kashibook

    kashibook

    読了するまで、海外作家作品の翻訳本かと思ってしまった。それだけ設定が近未来的(SF久しぶりだからそう感じただけの可能性もある)で、さっぱりとした語り口だった印象がある。
    それだけにラストが切ない。

    投稿日:2021.05.06

  • chuck

    chuck

    SF的な展開と人間的な描写と、そのレベルが双方高く、それでいてちょうど良い塩梅になっている。

    ITPという人工的に作られた人格が、この小説のSF的な核。他には、未来社会のテクノロジーとして登場する紙状端末や全自動車、羊水ベッドなどのパーツがもよかった。さらに、SFの名作たちが引用されるのはこれまたSFファンの心をくすぐる。しかも、未来世界での、著作権が切れたフリー蔵書というのがまたメタSF的。

    人間描写も良い。ITPというテクノロジーを媒介として、人間とは何かを再発見するような作品。そこでは多面的にテーマが描かれる。信仰と科学。死と生。肉体と精神あるいは知性。人間と人工知能。都会と田舎。科学的真理と世論。死と愛。変わるものと変わらないもの…等。複合的なテーマを多軸で扱う、力量がある作家と見た。

    それからシンプルに、文章の醸し出す雰囲気がよい。日本人作家が書いているのに、どこか海外ドラマチック。映像的で、海外的。だけど日本語で書かれたのだから、失敗した翻訳にありがちな読みにくさはもちろんない。

    物語の終盤には驚くほど没頭した。広げた世界の収斂のさせ方が巧すぎる。

    サマンサは wanna be が解き放たれた様に救われた。そして「過去の自分」に物語を与えることで、自分自身も救った。と読んだ。また、そこでは「人間性の境界」が規定された。それはとても分かりやすく、結末として収まりが良かった。

    それにしても、最後まで「物語」で貫いてみせるのは、上手いねぇ。読者もまた「物語」られているというメタ構造。

    面白かった。これまで読んできた国内SFの中でも、ベスト5に入るんじゃないかってくらいの傑作。再読必至。数年後にまた読み返したい。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/02/11/%E3%80%90%E6%AD%BB%E3%81%AE%E8%81%96%E6%80%A7%E3%82%92%E5%89%A5%E3%81%90%E3%80%91%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E_-_%E9%95%B7%E8%B0%B7%E6%95%8F
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    投稿日:2021.02.11

  • るこ

    るこ

    SF。AI。
    愛と死の物語。
    ここまで主人公の内面をリアルに描写した作品を読むのは初めてかも。
    はじめの7ページの描写が、いきなりインパクト強い。
    内容はなかなか難しいが、心に響くシーンも多い。

    投稿日:2020.06.20

  • palebluedot

    palebluedot

    サマンサ・ウォーカーは死んだ。

    サマンサ・ウォーカーがひとり、病気療養中の自宅でこの世を去ったのは、35歳の誕生日まぢかの寒い朝だった。
    それが、彼女という物語の結末だった。


    という書き出しで始まる、長谷敏司の近未来SF。
    序章で7ページに渡って死の瞬間を描写し、本編はそこに至るまでの、長い、死への物語です。

    人間の脳の状態を再現できる、つまり人間の感情や、人間の人格そのものを再現できる、
    ITPという言語がメインのSFガジェットです。
    感情を人工的に操作したり、コンピュータ上に1から作り出した人間と区別のつかない人格が出てきたり、
    イーガン的というか、昨今のSFの最先端テーマと言える1冊。

    内容も描写も濃い、重い。
    長谷敏司の独特の文体もどうにも読んでて疲れるのですが、それでもぐいぐいと引っ張っていく力はさすが。
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    投稿日:2019.09.07

  • 嶋村史緒

    嶋村史緒

    このレビューはネタバレを含みます

    尊敬もへったくれも無い、生々しくて痛々しい「死」の描写から始まる。
    主人公のサマンサの周囲や社会、死に対する抵抗《プロテスト》な生き様が、余計に読んでいて精神にハードパンチしてくる。

    『小説を書くためだけに開発された仮想人格』の「ワナビー」はサマンサのために、彼女を喜ばせるために、膨大なサンプルを吸収して小説を書く。

    では、人類は誰のために、何のために太古から小説を書いて来たのか?
    別に小説でなくても良い。漫画でもイラストでも彫刻でもアニメーションでもクリエイトするものなら何でも良い。
    需要と供給のあるビジネスだから?それだけでは無いはずだ。
    作中の言葉を借りれば「自己愛」なのかも知れない。

    サマンサに「恋」したワナビーは、たった一人の読者の彼女のために愛を込めて、小説を書く。
    コンピュータのお決まり文句の「何かお役に立てることはありますか?」が《彼》の愛の言葉であった。
    サマンサの死に対する抵抗と怒りの狭間で、仮想人格のワナビーの愛の言葉が紡がれる。それが余計に痛々しい。人工物であるが故に。
    そして、サマンサとは対照的に《彼》の死は儚くも美しい。

    では一体、そもそもこの作品は誰のための物語なのだろうか?

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    投稿日:2019.05.17

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