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長谷敏司 / ハヤカワ文庫JA (74件のレビュー)
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総合評価:
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5
意外な面白さだった
人の感情、知識、経験を取り出すことのできるナノマシン(すいません、理解が追い付かずざっくり自己流です)を開発中の女性が主人公。 装丁からハードSFかと思ったら、舞台設定が近近未来なせいか道具立ては驚く…ほど身近。 いかにもありそうだし、すぐにこういう世の中になるんだろうというシチュエーションがたくさんあって、今私たちはSFの世界に生きてるんだなぁと思わせられた。 しばらく読んでから気づいたが、話は主人公をピンポイントで追っていていつまでたっても登場人物は増えないし、舞台となる場所も限られてる。なのに全く飽きずに読み進められる、というのは作者の力量のおかでだろうか。 主人公がちょっとぐるぐるしちゃうのが気になったけど、死にまつわる話なのでわざとそうしたのか作者もぐるぐるしちゃってるのか・・・。 このテーマでこの設定でただ主人公を追うだけでこの量を書ききったのはすごいと思う。 ロボットも宇宙も未知の生命体も出てこなくてもSFが好きという人は楽しめるでしょう。続きを読む
投稿日:2014.02.18
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4
少し玄人向けのSF作品です
ITPと呼ばれる人工知能(人工知能としましたが、的確な表現が思いつきませんでした)の開発責任者となったものの、開発中に、ただ死を待つだけの身に突如なってしまったサマンサ。彼女が死に直面し、そして死にど…う対処していくのかというストーリーとなっています。 ひたすら死について考えさせられる作品なので、重い内容ですが、wanna beとの会話や彼女自身が取る行動や決心には、深く考えさせられました。そして非生命であるwanna beとサマンサの死に関する会話が、この作品の大きな盛り上がりであり、そのあとに続く「とあるもの」との会話も、生命や人工的な知能について、問題提起していると感じました。 ただ文章が分かりづらく、そして長すぎると感じ、その為★は3つにしました。しかしSF作品の読書としては、十分に楽しめました。 日頃読書をしない方や、初めて読むSF作品としては、ちょっとオススメはできませんが、内容自体は素晴らしい作品です。続きを読む
投稿日:2014.08.24
miosuke
3
人工知能の恋
開発した人工知能(的なもの?)とのラブストーリーとして読みました。SFをそれほど読み慣れていないので、近未来的な設定を味わうには私には力不足で、雰囲気として浸るくらいしかできませんでした。 …それでも、ひとりの研究者が避けられない病による死を前にした恐怖はとてもリアリティがあり、そこで差し出される人工知能(的なもの。でももっと機械に近いので余計愛おしく感じられる)からの、純粋にみえる親愛の感情は、読者である私自身も救われるようでした。 ままならないことばかりで、自分のせいで孤独である主人公の生活はモノクロで、人工知能とのやり取りが徐々に色づきカラーになっていくように感じます。 泣けました。続きを読む
投稿日:2015.12.04
K.K
2
絶望的だけどじわじわと心に響く
痛くて辛くて絶望的な物語。 人工知能を通して理性と感情と肉体(死)を,人間の本質を,突きつけられる。
投稿日:2014.12.31
おもち
1
(ファミチキください)こいつ直接脳内に・・・!
ITPはこんなんしたいプロトコル 1984年から百年後 神経の発火と電子信号 人は道具か道具は何か 過去に対するプロテスト 未来に向ける物語 私と《私》 《あなた》とあなた 〈《私》はお役に立てまし…たか?〉続きを読む
投稿日:2016.03.08
とよ
難しい!と思いました
死にゆく科学者が自分の作ったシステムを通して自己を振り返る。 彼女の発明は人間の人格をhtml言語のように書き出せること。これを別の人が自分にコピーすることで知を共有できる。そんな画期的な発明であった…。 その検証のために作られた人工人格は彼女のために物語を書くために作られた。 そんな人工人格との会話の中で自分の死を見つめ直す… そんな話なのですけど、難しかった~ 残っているイメージがトイレに座っているゲリのおばさん… 主人公のキャラが強くてなかなか入り込めなかった。 非常に難しい。素直な感想です。続きを読む
投稿日:2016.04.27
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しんた
SF作品としては派手で分かりやすい展開がなく、地味である。 でもこの物語から目が離せない。 テクノロジーの進歩と決して逃れられない一人の人間の「死」。それを見つめるように物語は進んでいく。死に向かう者…の肉体や精神が苛まれていく様は悲しく、息が詰まりそうだがどうしてかこの物語からはそんな風に見えない。文体のなせる技だろうか。 仮想人格である《wanna be》との絆には切なさがあるし、静かな物語なのに迸る感情がある。続きを読む
投稿日:2024.07.28
nightmare5296
ナノマシンに神経の代役をさせる技術を流用したITP(イメージ トランスファ プロトコル)。 脳の中で擬似神経を操りあらゆる経験/感情をダイレクトに伝達できる。 不治の病に侵されたサマンサの肉体的苦痛の…描写。 ITPで作られ人間の感情を与えられた仮想人格。 その人格が創造性を示す為に書かれ続ける物語。 悲劇それ自体と美しいものを一緒くたにしていない。 読んでいる間、世界が精確に描かれているんじゃないかという実感が確かにあった。 設定や世界観のユニークさだけじゃない、文章自体にSFのおもしろさが詰まってた。 ずっと読んでいて、今月はもう一つ分、人生に触れた気分。 『彼女の仕事にも、経済活動以上の意味などない。ITPも、新しい可能性を与えるものではない。新しいサービスの代価を払える人間と、そうでない貧しい人間とを振りわけただけだ。大学の学費をパートタイムで稼いでいたかつての彼女自身のような経済弱者が、これからはITPを買えない不利を背負うのだ。』 『それが伝統だから?人間にとって、死ぬことが伝統だから、死ななければいけないの』 『ひとつひとつのできごとに、つながりはないわ。シークエンスを作っているから“物語”性を感じるだけよ』 『未来を、現在の人間たちがゴミ箱にするのは、それでも公平じゃないわ。形而上学のつもりで二十年後の未来へ希望を託したら、二十年後には現実になった問題を受け取らないといけないのよ。年数を曖味にして“未来”って呼び続けたって、いつか現実になるってことは変わらない。今の世界だって、過去の誤答を、自分たちの身を守るために修正してるじゃない。“未来”に余計な期待をすることは、理性的だと思わないわ』続きを読む
投稿日:2024.05.26
佐山 諒
#あなたのための物語 #読了 今日、AIが生活を便利にしているけれど、人間の感情と肉体をAIが真に理解する日はこないだろうなと思った。 だからこそ人間は人間らしく生きることが大事だ。 #長谷敏司 …#早川書房 #読書続きを読む
投稿日:2023.02.25
bookkeeper2012
うーん、面白いは面白いのだけれど、どうしても理屈が先に立つというか、その理屈がややくどくて物語に入り込めない
投稿日:2022.12.04
ちょぴん(しろくろ)
このレビューはネタバレを含みます
仮想人格である《彼》が健気で健気すぎて、スキィ!!ですが、読み終えて頭に浮かんできたのは人間のことばかりでした。 病と死の容赦なさが疑似体験したかのように迫ってきた本でした。親しい人間の闘病や死に立ち会ったこともないわたしには、死はまだ身近に感じられない現象で。入院手術の経験があっても、それは死病じゃなかったから、小説に描かれるサマンサの身体の痛みも、死の予感と恐怖も、健康な人間と社会への嫉妬や疎外感も、本当にリアルな意味では受け取れてはいないはず。だけれど、サマンサのすぐ隣で彼女を見て体験したような気分がしたのです。 サマンサは、科学は不満足への抵抗だとし、信仰を否定し、仮想人格を道具として扱え、傲慢でエゴイストで、孤独だけど強い人。 死ぬときはひとり。そうなの?そうかも。サマンサはひとりきりで苦しい死を迎える。ほんとうに容赦がない。 仮想人格の《wanna be》は脳神経の網を言語化するITPという技術の実験とパフォーマンスのために創られた。用が済んだら削除される存在だった《彼》は、そうはされずに、サマンサの研究室に残され、彼女のために物語を創作し続け、ただひとりの読者である彼女へ無私の好意を向けるようになる。 《彼》の「私は何かのお役に立てますか?」は、そのように創られたから出る言葉なのだと知っていても、なぜか暖かく沁みるし、次第に成長していく様子は、健気だな、崇高だな、と思わせてくれる。そんな風に声をかけられて、優しくされたら、わたしはサマンサほど冷静でいられないかもしれないなぁ… 「死」について《彼》が出した答えは、古くから擦り切れるくらい作られてきた物語を思い起こさせるドラマチックさで、《彼》の成り立ちが《物語》であることをよく表しているように思う。 サマンサはそれを受け止める事で、《彼》のリアルに描き込まれた登場人物になり《彼》はきっと満足していったのだろう。だから、《彼》の遺作をサマンサが読む箇所は、当然のように感情を揺さぶられた。救済と断罪が同時に描かれていて、心の中が嵐のようだった。 恋とか愛とかそんなので表せない、存在そのものを向けられるというのは、最高の幸せなのでは? だけど多分、真のクライマックスは、ITP人工人格として書き出された《サマンサ》と死にゆくサマンサとの会話なのかも。全てを曝け出す自分自身との対話。人格とは、肉体と死とは、物語とリアルとは。読後はしばらく放心したようになっていて、わたしはきっと「言葉を奪われる」良い読書体験をしていたんだろうなぁ… この本と出会えてよかった。
投稿日:2022.05.28
毒猫
死と向き合い、人間が尊厳を凌辱され続け 最期に全てを失ってしまう物語 サマンサ程何かを成してはいないが境遇として重ねてしまう人は現代社会には多いんじゃないだろうか
投稿日:2022.05.27
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