【感想】Self-Reference ENGINE

円城塔 / ハヤカワ文庫JA
(164件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
30
48
45
12
2
  • あまりの荒唐無稽っぷりに笑ってしまう

    20の短編からなる、著者のデビュー作。頭に弾丸を埋め込まれた少女や、箱であるかどうかも分からない立方体を年に一度転がし続ける男、全く同じ理論を同時多発的に発見した26人の学者など、それぞれがまるで無関係な次元の話を装いつつ、一連のつながりを持って収束していく。
    途中でわけがわからなくなりつつも、思わずくすりとさせるような言葉に不意を突かれたりして、楽しく読みました。
    何度読んでも面白い、円城塔のマイベストです。
    続きを読む

    投稿日:2013.11.29

  • 最近、脳みそを揺さぶられていない人へおススメ

    大人になると、感動というか、脳みそが揺さぶられる体験って減りますよね。

    今朝、私の息子(6歳)が「パパ!でっかい鼻くそが出た!」と目をキラキラさせながら教えてくれました。
    私は「おお!すごいな!」と一緒に感動したそぶりをしたのですが、でっかい鼻くそごときで、ハイテンションに感動できる息子がうらやましいと思いました。
    歳を重ねるということは、どんどん不感症になるということなのだなあと感じる、今日この頃です。

    さて、この円城塔著「Self-Reference ENGINE」は、そんな不感症な大人たち、最近、脳みそを揺さぶられていない人たちにおススメの一冊です。

    一見すると不条理で奇想天外な小説、その実はハードSFです。とある「イベント」の影響で時間やら次元やらがコンガラガッテしまった宇宙での出来事が、短編集という形でまとめられています。
    冒頭から読む人を拒絶する難解さで攻めてきますが、文章自体はきれいで読みやすく、不条理さから生じる「笑い」の配分も絶妙で、その独特の世界観が心地よくなってきます。
    わけわからなくなりながら、こういうことかな?と解釈してみるけど、それ以上のスケールで覆されて話がすすんでいく……みたいな、とにかく想像の上をいく、文字通り次元が違うストーリーが展開されます。

    個人的にはフロイトが畳の下から22体のお話と、アルファケンタウリ星人襲来のお話がお気に入りです。

    さあ、みなさんも脳みそを揺さぶられましょう。
    続きを読む

    投稿日:2014.03.26

  • 正直なところ、ついていききれず

    時間とは何か、言語とは何か、有限と無限、自己同一性などなど、テーマは思い切り直球勝負。けれど直球勝負のテーマの数々をてんこ盛りに盛りすぎているのと、奇をてらった構成や語り口や小道具のせいで、ふざけているようにしか見えません。ストーリーをこわすギャグが多すぎて、体をなさなくなった芝居みたいなものでしょうか。

    あまりに韜晦が過ぎて物語の持ち味を殺しているような気がするんですよね。しかし、こんなお話をまじめな顔でされても困ってしまうかもしれません。粋みたいなものを感じつつ読むのが良いでしょう。
    続きを読む

    投稿日:2014.07.05

  • 本作を正しく理解できる方を僕は巨大知性体と呼ばせていただきます

    この物語を正しく理解できる方を、僕は巨大知性体と呼ばせていただくことにします。
    少なくとも、SF初心者の僕には早すぎる作品でした。
    再読必至どころではない…正直五回読んだって正しく理解できる自信がありません。
    とにかく難解でした。
    とはいえ、決して読みにくかったという訳ではありません。
    むしろ軽妙でユーモラス、ちょっと古風な匂いさえする文章は、むしろ親しみすら湧くほど。
    だからこそ、自分は何を読み落としたのか、何を理解できなかったのか、ホトホト頭を悩ませてくれます。
    仕方ないのでこの世界のイベント後にもう一度読みます。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.03

  • 円城さんの言葉選びのセンスに脱帽

    後れ馳せながら、フィリップ.K.ディック特別賞受賞のニュースを知り読んで見ましたが、今まで読んでなかったのが勿体なく感じます。一見バラバラに見える各エピソードが重なり合う多次元的な構成も面白いのですが、言葉の選び方にユーモアが感じられ思わずクスリとさせられます。これがデビュー作だと言うのがにわかには信じられませんでした。
    ちょっと煙に巻かれた感が無くはないのですが、それもまた味です。個人的には、円城作品を読み始めるなら芥川賞受賞作よりもこちらの方が取っつき易いと思います。
    日本語だからこそ楽しめるフレーズも結構あるので、受賞した英訳版が どんな感じなのか気になります。配信されませんかねぇ?
    続きを読む

    投稿日:2014.05.07

  • 卓越した筆力で描く不条理コント

    全部で20編ある作品の内容はさまざまなのに、全体としてはゆるやかにつながっている。連作短編集に似ているけれど、やっぱり違う気もする。――本書はそんな不思議な作品集です。
    隙のない文章からは著者の筆力がひしひしと感じられますが、ユーモアのセンスもかなりのものです。ここぞというところに笑える一文を忍ばせてみたり、コントのような内容を大真面目な筆致で語ったりと、並の作家には真似できない技を見せてくれます。
    正直、後半は理解が追いつかない部分もあったのですが、それでも文章の力に引きずられて楽しく読めました。特に好きなのは、家に伝わる謎の箱の話と、フロイト大量発掘の話です。
    続きを読む

    投稿日:2014.06.10

Loading...

ブクログレビュー

"powered by"

  • LKS

    LKS

    左脳と右脳が変に働いたのか、疲れた。高次の知能で読むもんなのかな笑。生成された文章をただ読むままにまかせるように読了。巨大知性体、今だとAIなのかなと考えたりした。

    投稿日:2024.03.28

  • 帆掛船

    帆掛船

    「ところで、僕らのいるこの時間では、彼女はまだ撃たれてすらいない。彼女にはまだ撃たれた経験がないんだから、ただの銃弾が頭に入っている女の子にすぎない。
     で、彼女が矢鱈と発砲を続ける理由はこうだ。彼女が撃たれる前に、彼女を撃つ相手を撃ってしまえばいい。そいつは彼女の未来方向にいるはずだから、未来方向へ撃てばいい。幸いにして弾は普通、未来方向へ進む。少なくとも過去方向に撃つよりか簡単だ」

    2020/9/20読了
    これがデビュー作とのことだが、“訳が判らん”。上記の話など、まるで映画『TENET』だが、アチラは時間が順行か逆行かだけだったが、コチラは時空が粉々になり、多数の宇宙が並立・干渉し合っているという、更に理解困難な設定である。それでも何故だか、投げ出すということもなく、読み通した。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.24

  • BRICOLAGE

    BRICOLAGE

    "P, but I don’t believe that P.(p.3)"

     昨年の年末に読んだ『文字渦』に続いて、2冊目の円城塔。予想に違わず、トンデモなくぶっ飛んでいる!
     この本のあらすじ(そんなものが仮にあれば、の話だが…)をまとめるのは、僕には少しばかり荷が重いので、裏表紙の紹介を引く。
    "彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める―"
    一読して理解できる人がいたら、ぜひお目にかかりたい(笑) 何を食べて育ったら思いつくねんとつっこみたくなる荒唐無稽なアイデアが、これでもかと炸裂している。この途轍もない「法螺話」を面白がれるかどうかで、大喜びする人と同じくらい、肌に合わない人が居そうな類の本だ。

     本書は、「自己言及のパラドックス」と「因果律の崩壊」という2つのモチーフによって緩やかに結びついた、ほとんど独立した22のパートからなる。モチーフのうち前者について少し説明すると、これは論理学におけるパラドックスの一つであり、例えば「この文は偽である」といった文のことを指す。仮にこの文が真であるとすると、まさにこの文が主張していることからこの文は偽であることになり、偽であればこの文の否定が正しいはずだからこの文は真であることになり、そして真であれば…と無限に続く(最初にこの文が偽であると仮定した場合も同じ)。これが、本書をSelf-Reference "ENGINE"と題する所以だろう。つまり、自己言及文を宣言することにより、自分の尻尾に齧り付こうとしてグルグルと回るような、永久の運動が駆動し始める。
     本書の舞台は、"イベント"以降、時間がお行儀よく揃って進むのを止め、複線化してしまった未来の世界である。時間も空間もすべてバラバラに弾け飛び、因果は巨大知性体によっていとも簡単に書き換えられていく。あったことがなかったことになり、なかったことがあったことになる。
    "彼女と一緒にいた短い時間、僕たちはより本当に近いことを話そうと努力した。この頃には沢山のことが、なにがなんだかわからなくなっていて、本当のことなんてそう簡単には見当たらなかった。そこにあった石ころは目をはなすと蛙になっていたし、目をはなすと虻になっていた。昔蛙だった虻は昔蛙だった自分を思い出して、虻を食べようと舌を伸ばそうと考えて、それとも自分は石だったのかと思い出して、それをやめにして墜落していた。(p.11)"

     雑に言ってしまえば、全くもってナンセンスなSFである。それぞれのパートから惹起されるイメージは面白い。一方で、それら相互の関連性はごく薄く、設定も放りっぱなしの感があって、全体が「拡散」しているような印象を受けた。少なくとも、読者が意味を理解できるようには書かれていない。そもそも、果たしてこの本に「内容」があるのか? あたかも、無機質な何かが、不明な規則に従って出力を吐き出し続けているような。あるいは、気紛れに流れる電気信号を種に、微睡みのなか生成される映像のような。それがまさに作者の狙いかもしれないと確かに思わなくもないが、好みでは『文字渦』に軍配が上がる。率直な感想を述べると、本作はinterestingではあったが、残念ながらあまりexcitingではなかった。

     ただ、少なくとも、こうして円城塔を2冊読み終えて一つ言えるのは、この作者、そしてこの本でしか見ることのできない唯一無二の景色が間違いなくある、ということである。








    以下、メモ。
    プロローグ Writing
    冒頭。全称∀と存在∃の違いについてか?
    まどろっこしい可能性の網羅・列挙は、論理学・数学、もっと言えば自己言及のパラドックスの前提となる排中律を意識して?
    1 Bullet
    2 Box
    “こんな箱が波打ち際に落ちていたら”→Echo?
    再帰性、少ないパーツからほとんど無限大を生み出すという点が「自己言及」と関連
    “解体不可能な爆弾が存在しないように(p.48)“→量子力学のエンタングルメントを連想した
    3 A to Z Theory
    この名前といえばあの物理学者/数学者ね、と分かる名前がチラホラ
    4 Ground 256
    トメさん
    "壊される速度よりも速く複製してしまえばよいではないか。"←Box
    5 Event
    計算としての自然現象→量子シミュレーション
    "無数の宇宙を新造するのに、無限の情報量は必要ではなかった。"
    「小説家」の比喩
    6 Tome
    自己増殖オートマトンと自己消失オートマトン
    7 Bobby-Socks
    自己増殖する(ように見える)靴下の山(というユーモア)
    8 Traveling
    9 Freud
    "祖母の家を解体してみたところ、床下から大量のフロイトが出てきた。"
    一番わけが分からない話。あまりの気の抜け具合に頭が痛くなる。フロイト→夢?
    10 Daemon
    11 Contact
    12 Bomb
    "I believe that P, then P is true."
    13 Japanese
    『文字渦』っぽいテーマ。「日本文字」なる架空の言語。
    14 Coming Soon
    「予告篇(トレーラー)」。本書全体の構造にとって大事なパートのように思えるが、その実、ただ思わせぶりなシーンの連続でしかないかもしれない。
    15 Yedo
    喜劇計算。独立な話としても面白く読める。
    16 Sacra
    自己消滅オートマトンと自己免疫疾患。
    17 Infinity
    リタ再登場(本当に同一人物?←「私」が複数いることの示唆)
    Writingの、無数の本の中から所望の一冊を探す話の反復。
    いわゆる区間縮小法がモデルだろう。そもそも体を構成する分子のconfigurationが同じ人間が2人いたとして、彼らは似通っていると言えるのか、という問題。
    18 Disappear
    巨大知性体たちの「あらかじめの滅亡」
    "人間が彼らの絶滅の理由を知ることができないとされる理由は単純だ。ありえそうな滅亡の理由を人間が思いつく先から、その理由で滅びたわけではないと過去を改変するような時空構造として、彼らは絶滅したのだと考えられている。証拠がどんどん後出しされる推理小説には終わりようがない。はじめから終わってしまっていない限り。"
    19 Echo
    リリカルな挿話。結末が近づいている予感。
    20 Return
    エピローグ Self-Reference ENGINE
    続きを読む

    投稿日:2023.07.30

  • MS(1763691)

    MS(1763691)

    22のパートからなる連作短編集風の長編(?)。言葉運びの優雅さに何度もヤられてしまいました。パートの幾つかで、セルフパロディのようにダレた話になっていたのだけが少し残念(SF的にはアリなのかな)。

    投稿日:2022.12.20

  • 左 轟天

    左 轟天

    ゴジラspの脚本を書かれてる作家さんの本ということで読んだが、自分とはあまり合わないかったのか、読了まで時間がかかってしまった。


    追記もしやこの本には何か気づくべき点があったのか…。もしそうなら自分はそれに気づけなかっただけのようである。続きを読む

    投稿日:2022.09.18

  • ピンク

    ピンク

    床下に22体のフロイトの死体??????
    文書が自分で消失する?????
    未来から銃撃をうけた女の子?????

    ????????????????

    円城塔さんが脚本を担当された『ゴジラSP』がめちゃめちゃめちゃ面白くてそれまで微塵も興味なかったゴジラシリーズ(と東宝特撮)にハマるくらいだったので読んでみたけどずっと何の話をしているのか分からなかった。私の頭が悪いせいがほとんどなので、意味わからないならわからないで良い。ただ、一人称で進んでいく『否定の否定』みたいな、ラノベみたいな語り口がただでさえ話がややこしいのに余計訳わからなくてずっと「わかりたい、気になる、理解したい」と思えないのがしんどかった。
     でも発想はめちゃめちゃめちゃおもしろいことだけは伝わった。文庫化でフロイト2体増えてるって何?????(爆笑)正気じゃねえ...。(褒め言葉)ここで「円城塔は合わなかった」で終わりたくない...って切実に思うくらい発想と設定の遊び方は面白かったので、違う作品をまた読んでみようと思う。
    続きを読む

    投稿日:2022.08.05

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。