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円城塔 / ハヤカワ文庫JA (166件のレビュー)
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総合評価:
naotan
9
あまりの荒唐無稽っぷりに笑ってしまう
20の短編からなる、著者のデビュー作。頭に弾丸を埋め込まれた少女や、箱であるかどうかも分からない立方体を年に一度転がし続ける男、全く同じ理論を同時多発的に発見した26人の学者など、それぞれがまるで無関…係な次元の話を装いつつ、一連のつながりを持って収束していく。 途中でわけがわからなくなりつつも、思わずくすりとさせるような言葉に不意を突かれたりして、楽しく読みました。 何度読んでも面白い、円城塔のマイベストです。続きを読む
投稿日:2013.11.29
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天パ
最近、脳みそを揺さぶられていない人へおススメ
大人になると、感動というか、脳みそが揺さぶられる体験って減りますよね。 今朝、私の息子(6歳)が「パパ!でっかい鼻くそが出た!」と目をキラキラさせながら教えてくれました。 私は「おお!すごいな!」と…一緒に感動したそぶりをしたのですが、でっかい鼻くそごときで、ハイテンションに感動できる息子がうらやましいと思いました。 歳を重ねるということは、どんどん不感症になるということなのだなあと感じる、今日この頃です。 さて、この円城塔著「Self-Reference ENGINE」は、そんな不感症な大人たち、最近、脳みそを揺さぶられていない人たちにおススメの一冊です。 一見すると不条理で奇想天外な小説、その実はハードSFです。とある「イベント」の影響で時間やら次元やらがコンガラガッテしまった宇宙での出来事が、短編集という形でまとめられています。 冒頭から読む人を拒絶する難解さで攻めてきますが、文章自体はきれいで読みやすく、不条理さから生じる「笑い」の配分も絶妙で、その独特の世界観が心地よくなってきます。 わけわからなくなりながら、こういうことかな?と解釈してみるけど、それ以上のスケールで覆されて話がすすんでいく……みたいな、とにかく想像の上をいく、文字通り次元が違うストーリーが展開されます。 個人的にはフロイトが畳の下から22体のお話と、アルファケンタウリ星人襲来のお話がお気に入りです。 さあ、みなさんも脳みそを揺さぶられましょう。続きを読む
投稿日:2014.03.26
bookkeeper
4
正直なところ、ついていききれず
時間とは何か、言語とは何か、有限と無限、自己同一性などなど、テーマは思い切り直球勝負。けれど直球勝負のテーマの数々をてんこ盛りに盛りすぎているのと、奇をてらった構成や語り口や小道具のせいで、ふざけてい…るようにしか見えません。ストーリーをこわすギャグが多すぎて、体をなさなくなった芝居みたいなものでしょうか。 あまりに韜晦が過ぎて物語の持ち味を殺しているような気がするんですよね。しかし、こんなお話をまじめな顔でされても困ってしまうかもしれません。粋みたいなものを感じつつ読むのが良いでしょう。続きを読む
投稿日:2014.07.05
豚山田
3
本作を正しく理解できる方を僕は巨大知性体と呼ばせていただきます
この物語を正しく理解できる方を、僕は巨大知性体と呼ばせていただくことにします。 少なくとも、SF初心者の僕には早すぎる作品でした。 再読必至どころではない…正直五回読んだって正しく理解できる自信があり…ません。 とにかく難解でした。 とはいえ、決して読みにくかったという訳ではありません。 むしろ軽妙でユーモラス、ちょっと古風な匂いさえする文章は、むしろ親しみすら湧くほど。 だからこそ、自分は何を読み落としたのか、何を理解できなかったのか、ホトホト頭を悩ませてくれます。 仕方ないのでこの世界のイベント後にもう一度読みます。続きを読む
投稿日:2014.11.03
sabachthani?
2
円城さんの言葉選びのセンスに脱帽
後れ馳せながら、フィリップ.K.ディック特別賞受賞のニュースを知り読んで見ましたが、今まで読んでなかったのが勿体なく感じます。一見バラバラに見える各エピソードが重なり合う多次元的な構成も面白いのですが…、言葉の選び方にユーモアが感じられ思わずクスリとさせられます。これがデビュー作だと言うのがにわかには信じられませんでした。 ちょっと煙に巻かれた感が無くはないのですが、それもまた味です。個人的には、円城作品を読み始めるなら芥川賞受賞作よりもこちらの方が取っつき易いと思います。 日本語だからこそ楽しめるフレーズも結構あるので、受賞した英訳版が どんな感じなのか気になります。配信されませんかねぇ?続きを読む
投稿日:2014.05.07
ツクヨミ
卓越した筆力で描く不条理コント
全部で20編ある作品の内容はさまざまなのに、全体としてはゆるやかにつながっている。連作短編集に似ているけれど、やっぱり違う気もする。――本書はそんな不思議な作品集です。 隙のない文章からは著者の筆力が…ひしひしと感じられますが、ユーモアのセンスもかなりのものです。ここぞというところに笑える一文を忍ばせてみたり、コントのような内容を大真面目な筆致で語ったりと、並の作家には真似できない技を見せてくれます。 正直、後半は理解が追いつかない部分もあったのですが、それでも文章の力に引きずられて楽しく読めました。特に好きなのは、家に伝わる謎の箱の話と、フロイト大量発掘の話です。続きを読む
投稿日:2014.06.10
"powered by"
あでにん
このレビューはネタバレを含みます
初の円城塔作品。 20+2のお話で構成されており、一つ一つ独立した最高に面白いSFとして読むこともできるが、世界観は同じで少しずつ繋がっているため、壮大な長編として楽しむこともできる。 プロローグの「Writing」での本についての書き出しから、圧倒的文才と理系的思考が爆発していて一気に掴まれた。 第一部:Nearsideの 「01 Bullet」ではこめかみに銃弾が埋まった少女とそれに恋をする少年のお話だが、そこからタイムパラドックス的なお話が展開されていくのが楽しかった。 「02 Box」では箱を倒すという謎の儀式を毎年行う家族のお話で、現実でもありそうと思ったがそこから話はさらに遠くへと飛んでいく。 「03 A to Z Theory」はこの本の中でも上位に好きなお話で、とある論文についての話なのだが、そのありえなさと妙なリアリティが心地よかった。ミステリーオタクとSFオタクの描写も必見。 「04 Ground 256」はイベントによって家具やら何やらが生えてくる村のお話である。明るめのお話で読みやすいSFであったが、重要な要素がちょこちょこ登場していることに後で気づき、もう一度読みたくなった。 「05 Event」はいままでのお話で匂わされてきたイベントや巨大知性体についてのお話となっており、この作品の要素の核となるお話であると思った。 「06 Tome」はトメ教授の最終講義、鯰文書、興味をそそるワードが出まくりで面白かった。 「07 Bobby-Socks」はタイトルの通り可愛い靴下が主人公のお話。ありえない設定にすごいリアリティ。これこそSFだと思う。 「08 Traveling」は他のお話とは色が少し変わって、ゴリゴリSFだと思った。操縦桿は上下左右に過去と未来! 「09 Freud」はあのフロイトが床下から出てきてしまった家族のお話。これも設定で勝ち。 「10 Daemon」では人間ジェイムスと巨大知性体ユグドラシルのやり取りによって進む。人間と巨大知性体の対比をしつつ、敵からの攻撃に対するこちら側の疾走感が感じられ良かった。 第二部:Farside 「11 Contact」では超越知性体が登場し、10で巨大知性体の凄さが際立てられていたために余計に恐怖を感じた。 「12 Bomb」では、いままでのこのお話全てを否定するような医者が登場する。このタイトルの理由は何なのかぜひ見届けてほしい。 「13 Japanese」では日本文字についてのお話である。文字を題材にSFを書けるのかと驚いた。 「14 Coming Soon」では映画の予告風なお話となっており不穏な終わりの雰囲気を感じつつも楽しく読むことができた。 「15 Yedo」では突然江戸っ子口調の二体の巨大知性体が登場し、そのテンションのまま話が進んでいく。とても読みやすい。 「16 Sacra」では巨大知性体の崩壊について描かれる。人間より上位の存在であっても崩壊する時が来るという切なさを感じる。 「17 Infinity」では、「01 Bullet」でのこめかみに銃弾が埋まっていた少女が主人公となりおじいちゃんとの不思議な関係が描かれている。設定というよりは主人公の思考が理系よりのSFという感じだった。 「18 Disappear」では巨大知性体の絶滅について描かれる。その中で最初の滅びた理由でないものを挙げていくところが特に好きで、その一つ一つで作品を書きてほしいと思うぐらいバラエティ豊かな滅び方にワクワクした。 「19 Echo」は、もともとは人間の女性だったのが、数々の功績を残した後に箱型の巨大知性体となるというお話で、ゴリゴリSFで話は進みながらも最終的にはほっこりしてしまう素敵なお話だった。 「20 Return」はタイトルの通り全てが戻ってくるような最後にふさわしいお話だった。 エピローグの「Self-Reference ENGINE」では作品名の意味を知ることができ、最後の最後までこの作品の世界観を堪能できた。 初めてということでビビっていたが、一つ一つの設定が面白く少しづつ繋がっているのでもう一度読んで更に深く楽しみたいと思った。 特に好きなのは、1,3,7,11,12,13,15,18
投稿日:2024.05.25
LKS
左脳と右脳が変に働いたのか、疲れた。高次の知能で読むもんなのかな笑。生成された文章をただ読むままにまかせるように読了。巨大知性体、今だとAIなのかなと考えたりした。
投稿日:2024.03.28
帆掛船
「ところで、僕らのいるこの時間では、彼女はまだ撃たれてすらいない。彼女にはまだ撃たれた経験がないんだから、ただの銃弾が頭に入っている女の子にすぎない。 で、彼女が矢鱈と発砲を続ける理由はこうだ。彼女…が撃たれる前に、彼女を撃つ相手を撃ってしまえばいい。そいつは彼女の未来方向にいるはずだから、未来方向へ撃てばいい。幸いにして弾は普通、未来方向へ進む。少なくとも過去方向に撃つよりか簡単だ」 2020/9/20読了 これがデビュー作とのことだが、“訳が判らん”。上記の話など、まるで映画『TENET』だが、アチラは時間が順行か逆行かだけだったが、コチラは時空が粉々になり、多数の宇宙が並立・干渉し合っているという、更に理解困難な設定である。それでも何故だか、投げ出すということもなく、読み通した。続きを読む
投稿日:2023.09.24
BRICOLAGE
"P, but I don’t believe that P.(p.3)" 昨年の年末に読んだ『文字渦』に続いて、2冊目の円城塔。予想に違わず、トンデモなくぶっ飛んでいる! この本のあらすじ(そ…んなものが仮にあれば、の話だが…)をまとめるのは、僕には少しばかり荷が重いので、裏表紙の紹介を引く。 "彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める―" 一読して理解できる人がいたら、ぜひお目にかかりたい(笑) 何を食べて育ったら思いつくねんとつっこみたくなる荒唐無稽なアイデアが、これでもかと炸裂している。この途轍もない「法螺話」を面白がれるかどうかで、大喜びする人と同じくらい、肌に合わない人が居そうな類の本だ。 本書は、「自己言及のパラドックス」と「因果律の崩壊」という2つのモチーフによって緩やかに結びついた、ほとんど独立した22のパートからなる。モチーフのうち前者について少し説明すると、これは論理学におけるパラドックスの一つであり、例えば「この文は偽である」といった文のことを指す。仮にこの文が真であるとすると、まさにこの文が主張していることからこの文は偽であることになり、偽であればこの文の否定が正しいはずだからこの文は真であることになり、そして真であれば…と無限に続く(最初にこの文が偽であると仮定した場合も同じ)。これが、本書をSelf-Reference "ENGINE"と題する所以だろう。つまり、自己言及文を宣言することにより、自分の尻尾に齧り付こうとしてグルグルと回るような、永久の運動が駆動し始める。 本書の舞台は、"イベント"以降、時間がお行儀よく揃って進むのを止め、複線化してしまった未来の世界である。時間も空間もすべてバラバラに弾け飛び、因果は巨大知性体によっていとも簡単に書き換えられていく。あったことがなかったことになり、なかったことがあったことになる。 "彼女と一緒にいた短い時間、僕たちはより本当に近いことを話そうと努力した。この頃には沢山のことが、なにがなんだかわからなくなっていて、本当のことなんてそう簡単には見当たらなかった。そこにあった石ころは目をはなすと蛙になっていたし、目をはなすと虻になっていた。昔蛙だった虻は昔蛙だった自分を思い出して、虻を食べようと舌を伸ばそうと考えて、それとも自分は石だったのかと思い出して、それをやめにして墜落していた。(p.11)" 雑に言ってしまえば、全くもってナンセンスなSFである。それぞれのパートから惹起されるイメージは面白い。一方で、それら相互の関連性はごく薄く、設定も放りっぱなしの感があって、全体が「拡散」しているような印象を受けた。少なくとも、読者が意味を理解できるようには書かれていない。そもそも、果たしてこの本に「内容」があるのか? あたかも、無機質な何かが、不明な規則に従って出力を吐き出し続けているような。あるいは、気紛れに流れる電気信号を種に、微睡みのなか生成される映像のような。それがまさに作者の狙いかもしれないと確かに思わなくもないが、好みでは『文字渦』に軍配が上がる。率直な感想を述べると、本作はinterestingではあったが、残念ながらあまりexcitingではなかった。 ただ、少なくとも、こうして円城塔を2冊読み終えて一つ言えるのは、この作者、そしてこの本でしか見ることのできない唯一無二の景色が間違いなくある、ということである。 以下、メモ。 プロローグ Writing 冒頭。全称∀と存在∃の違いについてか? まどろっこしい可能性の網羅・列挙は、論理学・数学、もっと言えば自己言及のパラドックスの前提となる排中律を意識して? 1 Bullet 2 Box “こんな箱が波打ち際に落ちていたら”→Echo? 再帰性、少ないパーツからほとんど無限大を生み出すという点が「自己言及」と関連 “解体不可能な爆弾が存在しないように(p.48)“→量子力学のエンタングルメントを連想した 3 A to Z Theory この名前といえばあの物理学者/数学者ね、と分かる名前がチラホラ 4 Ground 256 トメさん "壊される速度よりも速く複製してしまえばよいではないか。"←Box 5 Event 計算としての自然現象→量子シミュレーション "無数の宇宙を新造するのに、無限の情報量は必要ではなかった。" 「小説家」の比喩 6 Tome 自己増殖オートマトンと自己消失オートマトン 7 Bobby-Socks 自己増殖する(ように見える)靴下の山(というユーモア) 8 Traveling 9 Freud "祖母の家を解体してみたところ、床下から大量のフロイトが出てきた。" 一番わけが分からない話。あまりの気の抜け具合に頭が痛くなる。フロイト→夢? 10 Daemon 11 Contact 12 Bomb "I believe that P, then P is true." 13 Japanese 『文字渦』っぽいテーマ。「日本文字」なる架空の言語。 14 Coming Soon 「予告篇(トレーラー)」。本書全体の構造にとって大事なパートのように思えるが、その実、ただ思わせぶりなシーンの連続でしかないかもしれない。 15 Yedo 喜劇計算。独立な話としても面白く読める。 16 Sacra 自己消滅オートマトンと自己免疫疾患。 17 Infinity リタ再登場(本当に同一人物?←「私」が複数いることの示唆) Writingの、無数の本の中から所望の一冊を探す話の反復。 いわゆる区間縮小法がモデルだろう。そもそも体を構成する分子のconfigurationが同じ人間が2人いたとして、彼らは似通っていると言えるのか、という問題。 18 Disappear 巨大知性体たちの「あらかじめの滅亡」 "人間が彼らの絶滅の理由を知ることができないとされる理由は単純だ。ありえそうな滅亡の理由を人間が思いつく先から、その理由で滅びたわけではないと過去を改変するような時空構造として、彼らは絶滅したのだと考えられている。証拠がどんどん後出しされる推理小説には終わりようがない。はじめから終わってしまっていない限り。" 19 Echo リリカルな挿話。結末が近づいている予感。 20 Return エピローグ Self-Reference ENGINE続きを読む
投稿日:2023.07.30
MS(1763691)
22のパートからなる連作短編集風の長編(?)。言葉運びの優雅さに何度もヤられてしまいました。パートの幾つかで、セルフパロディのようにダレた話になっていたのだけが少し残念(SF的にはアリなのかな)。
投稿日:2022.12.20
左 轟天
ゴジラspの脚本を書かれてる作家さんの本ということで読んだが、自分とはあまり合わないかったのか、読了まで時間がかかってしまった。 追記もしやこの本には何か気づくべき点があったのか…。もしそうなら自…分はそれに気づけなかっただけのようである。続きを読む
投稿日:2022.09.18
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