【感想】神々の山嶺(下)

夢枕獏 / 集英社文庫
(149件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
87
40
10
5
0
  • 神々しい輝きを放つ山岳小説の最高峰

    「死んだらゴミだ」
    深町はエベレスト登山から失脚し、長いこと消息を絶っていた天才クライマー、羽生丈二に出会い、その人生に惹かれていきます。
    彼は未だ諦めきれずに、人類未踏の夢を追いかけているのでした。

    人は何故山に登るのか?
    「そこに山があるから」というマロリーの言葉に対をなす、羽生が見つけ出した答えとは?

    エベレストの謎からさらに大きな謎に挑む、深町と羽生の挑戦が加熱する下巻。
    ただひたすら男臭いけど、読後は清々しい気分に包まれます。
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    投稿日:2015.03.17

  • なぜ山に登るかだって?・・・

     これは本だし、山に登る気もさらさらないのに・・・このシビレる感じはなんなのだろう。上巻で書いたレビューと矛盾しますが、登場人物の誰にも感情移入はできなかったです。それほど強烈な個性、想い、苦しみ、迷いをもった人間が、神の頂に挑みます。なぜ山に登るかだって?それは・・・・。 魂、震えます。

     夢枕様があと書きで、「ストレート」に想いをこめたと書いていますが、なるほど、文章よりも、詩的な表現の方が直球・剛球なのだな思い知りました。山での過酷なシチュエーションと相まって、文字でつづる表現の力を実感。
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    投稿日:2015.07.16

  • 痺れる 圧倒される のたうつ 放心状態

    上下巻、一気に引き込まれます。羽生の生き様に魅せられ、まさしく息つく暇なく手に汗握り、肩に力が入る小説です。
    読んで絶対後悔しないそれでいて大きな影響を受ける作品です。
    上巻の前半は冗長さを感じます、その後一気にリアルな山岳の世界に引き込まれます。
    読後、まいったと放心状態になること間違いないです。
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    投稿日:2013.09.29

  • ただただエベレストに圧倒されます

    上巻はミステリーの要素が強かったですが、下巻はいよいよ最高峰のエベレストへの挑戦。
    無謀な挑戦をカメラマンとして追っていくも、難攻不落のルートに対する自力の不足、死と隣り合った時の限界ギリギリの描写が、山に対する人間の小ささを感じさせられます。
    上下巻一気に読破し、エベレストのスケールに圧倒され、せめてネパールでエベレストを拝みたいと思いました。
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    投稿日:2015.03.07

  • 山岳小説の最高峰です。

    山岳小説の最高峰といっていいと思います。
    もう完全に自分が主人公となり、山麓の町での準備から
    超リアルで緻密なアルピニスト体験がまっています。
    そして凍りつく酸欠のエベレスト登山の真っただ中に
    入っていけます!
    読み終わったときは、自分が世界一流の登山家になったような感覚に
    なっていました。圧倒的な迫力とリアル雪山の世界に浸ってください。
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    投稿日:2015.02.22

  • とことんリアルな空気感

    熱い。心が温まるなんて熱さではなく、血が沸騰して自らの熱で燃えてしまいそうになるように熱い。山岳小説も冒険小説も歴史小説も、好きな本は全て同じような熱を持っていることに改めて気がついた。武士も、海の男も、山の男も、死なないため、生きるために死ぬ気で挑む。苦悩や悲しみなど全てひっくるめて、覚悟を決め、生きるために命を削りながら闘っているから熱いのか。上巻では、山岳小説でミステリーと書きましたが、下巻はとにかく山岳小説。いろんな謎なんてどうでもよくなってくるくらい、命懸けの登攀のシーンに圧倒される。名作です。続きを読む

    投稿日:2016.02.18

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ブクログレビュー

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  • cinejazz0906

    cinejazz0906

    このレビューはネタバレを含みます

    前人未踏の「エヴェレスト南西壁無酸素単独登頂」を目指すのは、登攀中にパートナ-を死なせた罪障感に悩む伝説の男・羽生丈二。酸素濃度が地上の1/3という頂上付近では、手足が硬直し、幻覚や錯乱状態に陥る可能性があるという。 そんな過酷な単独登攀に挑む羽生を追って、雪壁を登り、カメラの焦点を合わせるカメラマン深町。 本作は、圧倒的迫力と克明なディテ-ルで、神に許された者だけが登頂を許される「神の領域」が描かれた、魂を揺さぶる圧巻の山岳大冒険ミステリ-大作。〝 「何故、山に登る?」 「マロリ-は、そこに山があるからだと、そう言ったらしいけどね」...「違うね」「違う?」「ここに、俺がいるからだ。ここに俺がいるから、山に登るんだよ」...「あれは、麻薬だな・・・」「麻薬?」 「そうだ。一度、山で岩の壁に張りついたら、そこで、あれを味わったら、日常なんてぬるま湯みたいなもんだ・・・」〟

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    投稿日:2024.05.26

  • ひびぬ

    ひびぬ

    このレビューはネタバレを含みます

    上下どっちでも主人公がずっと言ってた、
    人は問題をクリアにして次に進んでるんじゃなくて、問題を抱えながら、また次の問題にも立ち向かってるっていうことはすごく理解できた

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    投稿日:2024.05.19

  • はるパパ@ファミコンしようぜ

    はるパパ@ファミコンしようぜ

    最上の読後感!
    北極、南極と並ぶ三大極地エベレスト山頂。高度8,000m。ジェット機が飛ぶ高さ。地表という枠を外せば宇宙や深海に並んで人間を寄せ付けない場所。自然vs人。そんな俯瞰の知ったかなどはねのけるように、泥臭いほど人間の一人称視点によって切り取られている。

    ──神聖な場所だから人はそこを目指すのか。あるいは人が目指すからその場所が神聖になるのか─


    なぜ山を目指す人間を描くのか。
    風景がくどいほど説明されているわけではない。主人公を除けば、人物の背景も大して語られない。それなのに凄まじい没入感が襲ってくる。まさに極地にいて、歯をガチガチと鳴らし、足を震わせ、生死の境目がびったりと背中に張り付いているような恐怖すらせり上がってくる。これはすごい。
    極限の世界を描きながら、徹底的に自分vs自分を掘り下げていく。ほかの「誰か」ではなく、まるで自分のストーリーのように感じられる。なぜ山を目指すのか。

    ── そこに山があるからじゃない。ここに俺がいるからだ。それしかやり方を知らないから登るんだ─


    自分はいま、どんな山を登っているんだっけ?!
    と思わず振り返りたい衝動に駆られた一文。

    このセリフの余韻にしばらく泣きそうになった。今も。


    またここでも、軽はずみなTVコメンテーターの批判や世間の反応に苦言が添えられている。「山の危険性を軽視するから事故に遭う」「糞の放置なんてモラルがなってない」「周りに迷惑」
    作者はザイルを打ち込む。誰一人として山を軽視している者などいないと。
    あとがきで知ったことだけど、夢枕獏さんご自身が登山家でヒマラヤの経験をお持ちらしい!この作品で「出し切った」と5回くらい連呼するほどの思いがぶち込まれている。それを軽めなテンションで語るのは人柄か。おかげで感動と納得感がさらに増した。


    最近こういった本ばかり読んで自分にも変化が起きた。ニュースを見ても、すぐ馬鹿にする気にならなくなった。裏では何が起きていたのか、どんな心理だったのかを想像するようになってきた。どこまでいっても自分vs自分。今さら何をと言えばそれまでなんだけど。
    本が血肉になるってことのひとつなのかなー。

    山岳小説。
    これはぜひもっと手を広げてみよう。
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    投稿日:2024.03.01

  • おかゆ

    おかゆ

    とにかく没頭してしまいました。

    羽生という男の素性が明らかになっていく上巻を助走に、一気に物語が動き出す下巻は圧巻でした。

    山に生きる男が山に登る、ただそれだけを直球に描いた作品を通して、男にとっての山と読者である自分にとっての人生がリンクして、相当のめり込めました。

    登山の知識や経験は全く必要なく、まっすぐに楽しめます。最高でした。
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    投稿日:2024.02.15

  • mao2cat

    mao2cat

    なぜ命を賭してまで山に登るのか?
    それはなぜ生きるのかと同じ問いだという。
    そこに山があるから登るのではない。
    オレがいるから山に登るのだと羽生は言った。
    生きることに意味がないのと同じように、山に登ることに意味はない。
    生きた時間の長さではなく、生きた時間の濃さなのか?
    私にはわからない。
    そこまで危険と隣り合わせな濃い時間を過ごしたことがないから。
    私はできるだけ安全で安心に生きたいと思う。
    けど、そこまで、命を賭けれるものがあって、闘っている熱い男たちに惹かれるし、羨ましいと思う。
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    投稿日:2023.09.05

  • lin96

    lin96

    【神々の山嶺】

    夢枕獏の最高傑作!!
    どうだ!!と叩きつけられるような本でした。
    昨年のアニメ映画じゃ全然伝わってなかった…。漫画もあるけど、これは絶対に小説で読むべき。この熱量はそんな簡単にトレースできない。

    山岳小説ど真ん中!ストレート一筋。超どセンターを一切躊躇なくこれでも足りないか!というほどに叩き込む。磨きこまれてるが、ゴツいダイヤモンドのような物語。

    もうこれ以上熱くて面白くて夢中になれる山岳小説はないんじゃないか。今後出てこないんじゃないか。と、思ってしまうくらい圧倒的な作品。こんな本があったのか…夢枕獏、恐るべし。

    あとがきの「書き終わって体内に残っているものは、もう、ない。全部、書いた。全部、吐き出した。力及ばずといったところも、ない。全てに力が及んでいる」という文に嘘偽りない名作である。

    史上最大の山に挑む羽生。
    それに食らいつく深町。

    下巻、エベレスト南西壁トライの描写は、とにかく凄まじかった。言葉から呼吸を、魂の息吹を感じた。頭がおかしくなるんじゃないか、というような表現が何度もあり(実際頭がおかしくなりつつあるシーンなのだが)高所の極限状態が見開きの紙の世界に広がっていた。

    山とはなんなのか。
    なぜ人は山に登るのか。

    マロリーは「そこに山があるから」と答えたが、
    羽生は「ここに俺がいるからだ」と答える。

    山に登る理由なんてない。
    別に頂上に欲しいものがあるわけじゃない。

    ’’無理にいうなら、山に登るというのは、自分の内部に眠っている鉱脈を探しに行く行為なのかもしれない。あれは自分の内部への旅なのだ。’’(引用)

    この言葉は、多くの登山者に響くのではないでしょうか。山やってれば何度も聞かれる「なぜ山に登るのか?」という質問。毎度用意していた理由を答えてしまう、この問い。こんな難しいことを聞くものじゃないよな。と改めて思う。

    ''岩壁で死と向き合わせになった瞬間にしか出会えない、自分の内部に存在する感情。世界との一体感。''(引用)

    あの背中に張り付くような、緊張と集中と魂の鼓動のような押さえようのない感情。それこそがクライミングの醍醐味であり、逃れられない魂が欲するもの。だからやめられない中毒性があるんだ。

    そんなことを書いたけど、まだまだ私にはその一部分の楽しい部分しかわかりません。が、深町という主人公の目を通して、その一部を追体験できました。

    悪天ビバークの後、風が止んでテントから顔を出した時の、

    ''無数の無名峰。
    その中で1人だけ生きている
    1人だけ、自分だけが呼吸をしている
    あー、かなわない。
    この巨大な空間。
    圧倒的な距離感。
    人間が、この自分が、この中でどのようにあがいてもかないっこない。深町はそう思った。
    絶望感ではない。
    もっと根源的な、肉体の深い部分での認識であるような気がした。人の力がこの中で、いかほどのことができようか。
    人が何をしようが、何をやろうが、これは何ほどもゆるぎはしないだろう。
    深町は小さく身震いした。
    冷気とともに自分の内部に宇宙が染み込んでくるようであった。''(引用)

    このシーンがすごく好きです。

    山って広大で、登るたびに自分の小ささを思い知らされるんですが、それって別に絶望じゃないんですよね。
    全は一、一は全。自分が世界の一部になったような感覚。元々世界の一部なんだけど、普段はそんなこと考えてないし。

    その感動と同時に、それはそれ、として、結局大事なのは自分が何をしたいか、何をするのか、自分が今なにの途上であるのか。ということにも気づける。それが大事だし、それを大切にしたいから、私はこの先も山に登り続けるのかなって思います。

    これ、マジですごい本です。
    エベレスト、見に行きたい。
    ベースキャンプまで行ってみたい。

    著者は何度もカトマンズやベースキャンプまで足を運んで、20年以上かけてこの作品を仕上げていて、知れば知るほど抜かりなく、魂を込めて書き上げた作品なのだと知らされます。これが、ただの文字の集合体って思うと、文字という文明はすごい。と、、もうわけわかんないとこから感動してきました。

    これが新品で文庫上下巻合わせて2000円以下って、コスパ良すぎじゃないか…しばらく何読んでも見ても損した気分になりそう…。いや、待てよ…そう考えると、本当はコスパ、悪いのか…??
    続きを読む

    投稿日:2023.07.13

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