【感想】隠蔽捜査(新潮文庫)

今野敏 / 新潮文庫
(409件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
121
189
63
7
2
  • 今野敏がようやくメジャーになった吉川英治文学新人賞受賞作。

    最初は、主人公の竜崎に感情移入できず嫌なキャリアだと思っていた。むしろもう一人の主役伊丹の方が非常に人間味があって現場主義とカッコイイ。まあ、これが作者の狙いなのですが。案の定、読み進めるうちに竜崎が「役人とは国の為に尽くすものである」を建前としてではなく本音でやっている非常にまじめな人間であることがわかってくる。その為あらゆることに妥協しない。そういう生き方が傍からは変人に見られているというかなり今までにないキャラクターで新しいキャリア像を作り出しており、これが本作のキモになっています。
    そんな人間が直面する身内と仕事の不正。これを彼はどう判断して結論を出すかというミステリーというよりは役人とは、父親とは、警察官とは、を問うた社会派小説です。
    続きを読む

    投稿日:2013.11.15

  • 男、竜崎!

    警察庁の官僚を主人公とした、異色の警察小説です。警察組織のしくみなど、なかなか勉強になりますし、なんといっても痛快です!組織に属する人間だったら、必ずや竜崎みたいになりたいと思うはず。中年の男心を刺激されます。続きを読む

    投稿日:2013.09.24

  • こんな上司を持ってみたい

    公務員であれ、会社員であれ、こんな上司のもとで働いたらおもしろいだろうな、と思わせる主人公の人物設定。
    といっても、全く絵空事ではなく、現実社会との折り合いや、問題の乗り越え方に作者の力量を感じます。
    ハンチョウシリーズも好きですが、これから先、どのように主人公が警察社会のなかを生きていくか という面で、
    こちらのシリーズの方が、気がかりです。
    続きを読む

    投稿日:2014.09.14

  • こんな上司もいいかな

    堅物の変人の竜崎と、人情味あふれる現場主義の伊丹。事件が進むうちに苦しくなるのは、竜崎と思っていたが、実は違った。
    役人全員が竜崎みたいなタイプだと息苦しいと思うが、でもリーダーには、こんなタイプの人であってほしい。続きを読む

    投稿日:2015.04.07

  • 警察組織の苦悩

    気さくな伊丹刑事部長とよくある脇役なような堅物の竜崎課長二人を対比した物語とだと思う。最初は推理ものかと思って読み進めていたが、警察組織内での闘争や息子の不祥事への悩みなど、堅物ならではの熱い思いがおもしろく。一気に読み進めることができた。続きを読む

    投稿日:2016.03.21

  • いい意味で予想外の作品

    これは意外な警察小説でした。
    主人公の竜崎の描写が巧みで、読み始めと終わりでは全く別の印象に。
    竜崎と対照に書かれていた伊丹もまた同じく。
    ミステリーの謎解き要素はありませんが、
    キャリア警察官の葛藤を書いた作品は少ないのではないのでしょうか。
    悪者で書かれることが多いですし(笑)
    数ある警察小説でもおすすめです。
    続きを読む

    投稿日:2017.10.11

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ブクログレビュー

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  • 浩太

    浩太

    7から読み始めて面白かったので、最初から読もうとシリーズを集めました。
    最初から読むと、周囲が言うように「変人」というしか無い。強烈なエリート意識、常に相手をキャリアかノンキャリアで見る。長男にも東大に行くことを求めて、私大を辞めさせて浪人させる。娘には政略結婚を勧める。それでいて家庭のことは妻任せ。これだけだと嫌な人になってしまうが、行動は原理原則通り。ブレが無い。自分が間違っていると分かれば躊躇なく修正する。それが明確なので読んでいてスッキリする。
    この本でも迷いは確かに有ったが、最後は正しい方向に邁進している。降格人事となってしまったが、次の大森署長での舞台が楽しみになる。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.09

  • meirin213

    meirin213

    今野敏『隠蔽捜査』読了。痺れた。よもや警察組織、官僚機構においてこんなにも格好いいヒーローを描かけるとは。まかり間違って高校生や大学生の頃に読んでいたら警察官僚を目指してしまっていたかもしれない。現実との対比ということもあるだろうけどれど。続きを読む

    投稿日:2024.03.22

  • kamiyajin

    kamiyajin

    今野敏といえば警察小説というイメージだが、随分前に一作読んだことがあるのみだった。
    先日読んだ堂場瞬一がガッカリだったので、何か警察小説で良いのがないかと思って読んでみた。

    まず、この作者は難しい言葉、漢字などは一切使わず、読みやすい文章に好感が持てた。
    ストーリーとしては、警察官僚(キャリア)である主人公・竜崎伸也が、連続殺人事件と息子の件を絡めながら同時進行で描かれる。
    竜崎は、小さい頃から勉強に励み、東大を経て国家公務員試験に合格し、警察官僚となる。
    多くの小説では、叩き上げの警部が主人公で、その
    邪魔をする存在として描かれることが多い「キャリア」だが、本書ではそのキャリア視点から描かれているのがとてもユニークと感じた。
    私の大好きな、ウィングフィールド作品に登場するフロスト警部が、まさに現場叩き上げタイプだ。上司である署長の言うことなど聞かず、やりたいように捜査を進めてしまう、その破天荒さがたまらなく楽しい。
    普通だと、竜崎のような人間だと感情移入しづらく面白くないのではないかと思うのだが、とんでもない。
    とにかく、この真面目で原則を重要視し融通の効かない仕事ぶり、いや生き方に逆に爽快感さえ感じて応援してしまうのだ。
    おそらく、自分自身で考えてみると、今までの人生で何事にもつい妥協し、仕事でもある程度適当?に誤魔化して過ごしてしまう自分自身の情けなさといったものを実は感じているからだろうか。
    単なる優越感、ブライドではなく、竜崎の警察官僚としての使命、矜持というようなもので突き進んでいく姿に感動し憧れてしまうのだ。
    終盤に、部下の谷岡との会話では、思わず涙が止まらなかった。それまでは、ひたすらキャリアとしての仕事を遂行することだけが重要で、他人や同僚との個人的な関係は不要と考えている竜崎だが、谷岡からの言葉は嬉しかっただろうと思う。

    「隠蔽捜査」はシリーズ物のようだ。
    竜崎のこれからの活躍が、まだ何巻も味わえると思うと楽しみで仕方ない。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • bmaki

    bmaki

    ひまわりめろんさんの本棚によく今野敏さんが登場するのだが、

    まぁ、相変わらず事件の中身はね
    うんまぁどうってことないですよ
    竜崎がなんか喋ってるだけでいいんです
    ファンてそういうことですから!

    いうひまわりめろんさんの感想を読んで、気づいたら今野敏の隠蔽捜査を購入していた。

    もうね、このひまわりめろんさんの感想そのまんまでしたわ( ̄▽ ̄)

    事件の中身は、うんまぁどうってことなかったですわ。
    竜崎が喋ってるのが面白かった( ̄∇ ̄)


    無能な上司は、何か問題が起きたときに、それが誰の所為か追及したがる。有能な上司は、対処法を指示し、また何かのアイデアを部下に求める。


    かっけー。
    私の上司は、前者だな(笑)

    それはまきちゃんが、そうやったもんで、そうなったじゃん!

    他人の所為にしかしない( ̄▽ ̄)


    こりゃなかなか面白い。
    続きも読もうo(^▽^)o
    続きを読む

    投稿日:2024.03.02

  • yunilla

    yunilla

    ぶっとい筋が一本通ってて凄く好き。

    「あなたは、気づいていないかもしれないけど、一番父親らしいことをやったのよ」
    「道を踏み外しちゃいけないって、子供たちに教えた。だから、言ったのよ。無能な父親にしてはよくやったって」続きを読む

    投稿日:2024.03.01

  • Sayuri

    Sayuri

    2008年(発出2005年) 409ページ

    以前Kindle Unlimitedで読んだものを文庫本で再読。

    読み始めと読み終わりでは、竜崎伸也に対するイメージがガラリと変わっているでしょう。
    46歳の冴えない中年、家庭をかえりみない仕事人間、仕事場では無愛想、陰険と思われていて、自らも自分は陰性なのだと自覚する男。
    しかし、読み終わった後は、冷静だが心の底に熱いものを秘めた愛すべき竜崎伸也に変貌していました。
    東大卒の警察のキャリア官僚を描いた作品です。
    法と秩序を重んじ、原理原則に従って行動する男。
    妻からは唐変木と言われ、同僚からは変人と言われている。しかし、不正は許さず正義感に溢れている。国家のためなら命を投げ出す覚悟もある。
    竜崎が、警察の隠蔽と家庭の問題にどう立ち向かっていくのかが見どころです。乗り越えたところに見えたのは、竜崎の心境の変化でしょうか。

    いい味を出しているのは、竜崎の奥さんの冴子ですね。同僚のことを無能な役人とこき下ろす一方で、竜崎は冴子に無能な父親と言われます。竜崎は「俺はその無能という言葉が一番嫌いなんだ」と言っていましたが(笑)
    冴子はいいセリフを言っています。「あなたは、一番父親らしいことをやったのよ。道を踏み外しちゃいけないって、子どもたちに教えた。だから、言ったのよ。無能な父親にしてはよくやったって」

    最後は異動となってしまった竜崎ですが、すごく読後感の良い小説でした。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.15

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