
スロウハイツの神様(上)
辻村深月
講談社文庫
いい意味で小説らしい小説
結末に至るまでの道筋を考え抜いたうえで書かれた作品は、どこか強引さがただようものですが。この作品はそれを感じさせず、各登場人物もきちんと描かれています。読んでよかったと思いました。
0投稿日: 2017.07.04嫌われ松子の一生シリーズ3冊セット【電子版限定】
山田宗樹
幻冬舎
続編がよかった
確か映画になった物語…というぐらいの認識しかなかった。 もちろん映画も見ていない。 でも、読んでよかったと思えました。 本編だけでなく、続編の「ゴールデンタイム」があることで、単に亡くなった人の生き様を描くだけでなく 小説の中の他の人物の清々しい生きた方が心に残ります。 この作者の他の著作も読んでみたくなりました。
0投稿日: 2016.11.10ロスト・ケア
葉真中 顕
光文社文庫
社会派ミステリー
「介護」とは仕事であり、奉仕であり、義務であり、利益を生む産業でもあり…それぞれの登場人物の立場・視点から問題点をうまく浮き立たせており、考えさせられました。 ミステリーの要素は強くないが、一気に読ませるだけの力量を感じました。 次の作品も読んでみたいと思います。
0投稿日: 2016.04.24RIKO ─女神の永遠─
柴田よしき
角川文庫
辛い
読んでいて、読み続けるのが辛いと思った。 だけど、読み続けたいと思った。 「聖なる黒夜」は、男同士の研ぎ澄まされた感性のやりとりであったけれど、この物語は職場内での逃げ場所のない女性としての生きざまを、痛々しいまでに容赦なく描ききっています。 いろいろな意味において、男は吐きだす側であり、女は受け止める側であるのが宿命なのかも知れません。 シリーズものの続編も必ず読みたいと思いますが、少し時間を置かないと・・・・
0投稿日: 2016.01.27聖なる黒夜(上)
柴田よしき
KADOKAWA
しばらく後を引く作品です
乃南アサの音道貴子シリーズも、刑事である前に「人」としての心のうごめきや、関わり合う「人」との(心理的な)距離感がうまく描かれていて、刑事ものというより、どうしようもないままに、流れに巻き込まれた「人」の生きざまが(多少の救いも交えながら)描写されているが、この作品は、それが一段ととぎすまされた感じで、描きこまれています。 作者の力量を感じました。 他の作品も読みたいと思います。
0投稿日: 2015.11.28女刑事音道貴子 風の墓碑銘(上)(新潮文庫)
乃南アサ
新潮文庫
女性刑事ものなら!
刑事もので、女性が主人公ならこのシリーズが僕は好きです。 女性ならではの視点・感性の描写が結構ありますが、じめじめしてなくて、物語のテンポもいい。 「凍える牙」もそうだが、切なさののこる読後感でした。
0投稿日: 2015.09.18警視庁情報官 シークレット・オフィサー
濱嘉之
講談社文庫
自慢話
仕事に有能で女性にもて、失敗もせず、上司の覚えもめでたい人間の、職場と職務の自慢話を聞かされている感じ。 著者は公安出身とあるので、それなりの真実味はあるも、物語としての奥行は感じられなかった。 このシリーズの他のストーリーはわからないが、少なくともこの1冊目は・・・
0投稿日: 2015.08.28神々の山嶺(上)
夢枕獏
集英社文庫
圧倒されました
山岳小説というと新田次郎を思い浮かべますが、この本は凄かった。 そのリアルさに圧倒され、とてもフィクションとは思えないと調べてみたら、登場人物にはそれぞれ実在のモデルがいるようだ。 いい記事は足(つまり取材)で書く と言われるが、相当緻密な取材・体験なしには描けない描写である。 8千メートル以上の山々は、神の領域 といわれる意味がすこし分かった気がする。 僕にとってはミステリーというよりも ノンフィクションと感じた程の一冊でした。
2投稿日: 2015.04.29出口のない海
横山秀夫
講談社文庫
日本人として
特別なストーリーではなく、驚愕する話でもないが、知っておかなければならない事であると思う。 映画化されたが、本と映像、どちらも甲乙つけがたい。 生きることに悩むのではなく、「死」に向かい合うということの重さが伝わってくる。 何かに閉塞感を持った時、読み返してみたい。 背筋が伸びる一冊である。
1投稿日: 2015.04.29娼年
石田衣良
集英社文庫
これは恋愛小説ではない
社会人・家庭人としてまとっている殻を全て脱ぎ、「人」として自分自身の価値・存在にどれほどの意味があるのか・・・ 普段すごしている環境の中では、そういった「人」と「人」が向きあうことはほとんどないが、娼婦(夫)を買うという特殊(?)な場合には、余分なものを一切脱ぎ捨てた人間同士の関係が生じる。 当然、SEXを含めての関係で、体と体だけの交渉で終わってしまう場合もあるが、心と心が触れ合う場合も出てくる。 本書の主人公は、その中で自分の価値と役割を見つけ出していく。 非日常的なシチュエーションかもしれないが、僕をやすらいだ気持にしてくれた作品です。
2投稿日: 2015.04.16