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tameさんのレビュー
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  • 妖奇庵夜話 魔女の鳥籠

    妖奇庵夜話 魔女の鳥籠

    榎田ユウリ,中村明日美子

    角川ホラー文庫

    母と娘の愛情が軸になる話し

    シリーズ最初から読んでいますが、今回は一番辛く感じました。 母は長年に渡る愛情を心血と共に娘に注ぎますが、娘から見れば逃れられない支配と感じることもあります。 辛いテーマが基本だけれど、榎田ユウリ先生はとても文章構成が上手い作家さんなのでじわじわくる恐怖と声を出して笑ってしまう楽しい場面とを上手く切り替えてくれます。 和の世界観に浸りつつ忍びよってくる怖さを体験する読書の楽しさを満喫しつつ最後までイッキヨミしました。 ホラーに属しているけれども、怨念とかではなく人の歪んだ愛情から起きる犯罪のお話しです。 そして今回は、シリーズ中気になっていた洗足伊織の幼少の頃の様子を実母との会話から垣間見る事が出来て嬉しく感じました。 そして、今の゛血が繋がっていないが大事な家族゛である家令の夷さんと同居人のマメ君との絆の深さを深く知るお話しでもありました。 脇坂刑事と、前巻から登場した妖人「犬神」のあの男も相変わらず伊織さんから毒舌攻撃浴びていますが、そこが面白くて読んでいるようなものなので(笑) 凄く大事な事を最後に。 前巻を読んでいないとネタバレになることが基本に流れているので、是非前巻を読後に本書を読んで頂きたいです。

    3
    投稿日: 2015.07.14
  • 神様の御用人

    神様の御用人

    浅葉なつ

    メディアワークス文庫

    ほっこり

    神様の事は一般の日本人が持っている程度の知識しかない良彦。 怪我によって会社を辞めてしまって、アルバイトしながらも社会からはみ出してしまった寂しさを抱えています。 そこへモフモフの狐にしか見えない神様が現れて、神様の御用人になれと言われます。 神様の御用を戸惑いながらも言われるがままこなしていく物語を読みすすんでいくうちに、良彦の事がどんどん好きになっていきました。 神様や、人に分け隔てなく優しく思いやる気持ちや、困っている神様や、人に何とかして役に立とうという誠実さが良い。 神様も個性的で面白いし、会話もテンポ良くて笑いながらほっこりとなります。 神職に就いている親友との、信頼があるからできる気のおけない会話も良いですよ。 神様のこと興味が無い人にも気軽に読んで貰いたいです。 読後感が良かったので続きも是非読みたいと思います。

    6
    投稿日: 2015.07.13
  • 体育館の殺人

    体育館の殺人

    青崎有吾

    東京創元社

    人物紹介では探偵が「駄目人間」

    作者が鮎川賞を受賞してデビューしたのが本作だ。 鮎川賞って何?と物知らずな私ものっけからぐいぐい引き込まれていった。 探偵役の高校生、裏染は学校の使われていない文化部の部室に住み着き、夜中にアニメ観賞して昼間の授業は居眠りしてる駄目っぷり。しかし中間テストで500満点中500点とってしまう天才。 そもそも探偵役を承諾したのも、容疑者になってしまった先輩を助けたい卓球部員の柚乃から、10万払うから容疑を晴らしてくれと頼まれたからで。なぜってオタク生活にはイロイロとお金がかかるからで。 オレサマで、警察にも堂々と対等に対峙して、殺人現場に残された少ない遺留品と数分刻みの証言から、早々に柚乃の先輩の容疑を晴らしてしまう。 と、ここまではなんかかっこいいじゃない?なんて思った。 けどこの後、犯人探しを要求されると、さらに5万円上乗せ要求する駄目人間裏染天馬。 なにせオタクはオカネがかかるのだ。 ここで一つ言い訳させて欲しい。 駄目人間とは私の感想ではなく著者が書いている事をそのまま引用しているだけ。 オタク生活を送って、成功報酬を要求する駄目人間探偵だけど、私も気持ちは良く判る。オタクは悪くなーイ(^_^;) とってもユニークな探偵役と、その探偵に上から目線で使われるワトソン役の柚乃。事件担当の刑事の柚乃の兄。部室に住んでいることを唯一知ってる良き理解者で、何暮れとなく世話を焼いてくれる新聞部部長の幼馴染みの女子高生香織。彼らから協力を得ながら(柚乃の兄は協力しているつもりはないが)、事件解決に奔走する。 読者への挑戦の章があり、その後に駄目人間ぶりをぬぐい去るかっこいい謎解き場面があり。 そして本当に最期まで驚く展開があり。 キャラが立っていて、くすっと笑えるオタク語録があって、ロジックで攻める本格派で、しかも読みやすくて面白い推理小説をお探しの方にお勧めします。

    3
    投稿日: 2015.06.07
  • 大名やくざ

    大名やくざ

    風野真知雄

    幻冬舎時代小説文庫

    軽くて面白い

    「大名の皮をかぶったヤクザだよ」と本人の言葉にもあるように、ありえない設定で痛快、笑えて、スカッとする続き物の第1冊目です。 サクサクと軽い時代劇を読みたいときにお勧めします。 主人公の有馬虎之助はヤクザどうしにはヤクザなりの落とし前の付け方をしますが、弱いものには優しいのが、オットコマエだなぁと好感を持てます。 大笑いしながら続きも絶賛読破中です。

    5
    投稿日: 2015.04.14
  • 配達あかずきん 成風堂書店事件メモ1

    配達あかずきん 成風堂書店事件メモ1

    大崎梢

    東京創元社

    本屋さん好きな人ならワクワクする短編集

    書店員の鏡ともいうべきしっかり者の杏子さんと大学生のアルバイト店員で推理力抜群の多絵ちゃんが書店でおきる謎を解くシリーズ。 内容は犯罪から恋愛に絡んだものまで色々と。 正義感と常識を踏まえて謎と巻き込まれてしまった人達に向かいます。 そしてとても暖かい空気感が流れます。 個人的に大好きなのは 「標野にて、君が袖振る」です。映画をみているようにビジュアルが脳内に流れてきて、切なくて涙ぐんでしまいました。 でも悲しいだけじゃなくて終わり方に希望がありました。他のお話も読後感が良いです。 気負わず短時間で読めるので昨今流行りの書店ものをお探しの方にお勧めします。

    2
    投稿日: 2015.03.29
  • 我、天命を覆す 陰陽師・安倍晴明

    我、天命を覆す 陰陽師・安倍晴明

    結城光流,伊東七つ生

    角川文庫

    清明としては異色

    安倍晴明に魅力を感じて色々読んでいますが、この清明はちょっと異色かな。 清明好きならご存知の「母が狐」説の伝説がこのお話では本当と言う事になっています。 その為、20歳の清明は人と化生との間で悩み多き青春を送っていて、常に世の中の人達から距離をおきハスに構えて生きています。 一流の陰陽師なので様々な依頼が来るのですが、到底敵わないバケモノを倒さなくてはならなくなり、獅子奮迅、満身創痍で闘う、人間らしい若い清明が本書の魅力です。 そんな清明でも見守ってくれる師や、気のいい押しかけ友人(清明はツンツンして突っぱねていますが)がいてくれるのは読んでいて救いを感じます。クスクス笑える箇所多数あります。 決して暗くなくスピードがあり、サクサク読めますよ。 お勧めします。

    3
    投稿日: 2015.02.28
  • 女王国の城 下

    女王国の城 下

    有栖川有栖

    創元推理文庫

    読後感が気持ちいい

    上巻の静かなイメージから打って変わってノンストップな連続殺人と冒険に巻き込まれていく江神部長とアリス達推理研究会の5人。 江神部長が宗教団体に軟禁されていたのに、急に宗教団体の態度が軟化して暖かく迎えられ、部長と再会出来た推理研究会の後輩達。 軟禁したり歓迎されたりと宗教団体の思惑が掴めないでいると、今度は会員が次々と殺されて行く。 すると警察への通報を拒絶し、推理研の5人を又軟禁して外の世界と隔離しようとする宗教団体。 何とか外へ出て警察へ通報しようと5人の抵抗と冒険がスピード感溢れるタッチで書かれている。 特に緒田が一番スピード感があって萌えてしまった(笑) ネタバレになるからここで書けないのが残念(;^_^A 隔離され、混沌とした状態の中で江神さんの知性と推理が秩序をもたらして事件は解決へ向かう。 何故江神部長はこの宗教団体へ接触したのか。 そもそも何故、大学に8年も在籍しているのか。 江神さんの謎が最後に解けた時、気持ちいい読後感が訪れる。 5人揃ってレンタカーで京都へ帰る推理研究会のメンバーが爽やかな風を受けながら気持ちいい疲労感に包まれたように。 最後にマリアとアリスが良い感じで終わってるんだけど、、、 早く次が読みたいので有栖川先生よろしくお願いします。

    0
    投稿日: 2014.11.29
  • 女王国の城 上

    女王国の城 上

    有栖川有栖

    創元推理文庫

    江神部長のファンなら必読

    江神シリーズ第4段は上下巻の長編です。 長いから読むのを躊躇している方もいらっしゃると思います。 私がそうでした。 しかし、江神部長とアリス達推理研究会のファンなら、この長さが何時までも終わって欲しくないほど楽しめると思います。 作者の後書きにもありましたが、上巻は静、下巻は動です。 下巻のノンストップで動き出す推理研究会の5人を取り巻く情勢を迎える為に、まずは上巻をゆったりと楽しんで下さい。 そして下巻は江神二郎の秘密が明らかになります。 お楽しみに。

    0
    投稿日: 2014.11.29
  • 妻は、くノ一

    妻は、くノ一

    風野真知雄

    角川文庫

    読み易い時代劇もの

    何と言う小気味よいタイトルでしょうか。 以前から気になっていた本でした。 時代劇ものはあまり馴染みのない私には難しいのではないかと勝手に思い込んでいましたが、読み始めるとテンポ良くスイスイ読み進んでいきました。 一見、なんだか頼りない平戸藩士の彦馬に急な縁談が持ち上がり、押し付けられるように嫁いで来たのが美しい織江。 幸せな新婚生活ひと月で、不意に居なくなった妻を探して江戸へ出てくる彦馬。 妻を探す日々の合間に数々の事件を見事な推理で解き明かして行きます。 本当は頭の切れる男だったのですね。 そして思いやりの心も持っている。 事件解決の裏には彦馬に未練たっぷりな織江の助けがありました。 お互いに好きだけど、くの一の任務の為に会えない2人がもどかしくて、セツナクなります。 元平戸藩の殿様も出て来てこの後も面白くなる予感で終わりました。 続きも読みたくなりました。

    0
    投稿日: 2014.08.30
  • うちの執事が言うことには

    うちの執事が言うことには

    高里椎奈

    角川文庫

    これからの主従の行く末に期待

    書籍説明を読むと18歳の若き当主花頴の事を、わがままで世間知らずで新米執事を困らせる少年だと勝手に勘違いしていた。 違うのである。 22歳の執事のほうが、年若い故の修行の足りなさというのかな。一生懸命年若い新米当主に仕えようと頑張ってるんだけど、たまに執事にあるまじき毒吐いたりして、成長途中なのである。可愛い♥ 花頴の方も、執事から全身全霊で仕えたいと思われる当主になるように成長しようとしている。可愛い♥ 家令に昇格し離れた所にいる鳳(←大変慕っている)に社交界デビューの写真をメールで送って、立派に成長した姿を褒められると喜ぶ所がまた可愛いのである。 日々の暮らしの中でおきる大小の事件を乗り越えながら少しずつ成長しながらお互いに歩み寄る途中の話し。 今後の二人に期待している。

    4
    投稿日: 2014.07.02