Maxwellさんのレビュー
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原発のウソ
小出裕章 / 扶桑社BOOKS新書
放射線の恐ろしさ
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小出先生の本は何冊か読んでいますが,内容的には他の著作と重複する箇所もありますので,
既に小出先生の著作を読んでいる方には既知の内容があるかもしれません.
ですが私が読んだ範囲内で他の著作には記載が…なく,且つ非常に衝撃的だったことがあります.
それは,茨城県東海村のJCO臨界事故で亡くなった作業員の方が,事故の後どのような経過を辿って亡くなったかということです.
放射線でDNAが破壊されるとヒトの身体がどうなってしまうのかということがよく判りました.
判りすぎて,ちょっと辛かったです...
原子力とはそういう技術なんだと,改めて思い知らされました.
続きを読む投稿日:2013.09.28
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ソニー 厚木スピリット
立石泰則 / 小学館
読みごたえがあります.というか,ちょっと難しいです.
2
最初はソニーが業務用機器(テレビ局や映画撮影などで使うビデオカメラや編集用の機械)の分野にいかに進出し,
シェアを伸ばしていったかという成長物語です.
ソニー厚木の生みの親とも言える森園さんの活動に焦…点を当てた物語になっていて,頭の中にすいすい文章が入ってきました.
特に印象的だったのは,サポート体制の徹底ぶりです.
ソニーのサポート拠点がない地域では機器を販売しない.理由は万が一壊れた場合にすぐに修理や交換ができないから.
製品の性能や技術力だけでない,カスタマーの仕事をいかにして支えるかまで考えたビジネス手法が,ソニーが放送・業務分野で
高いシェアを持つ理由であり,その精神が厚木スピリットということなのでしょう.
中盤以降は,ビデオカメラのことをよく知らない私にはなじみのない単語が多く出てきてなかなか理解ができず,
ひととおり読み終えた後でもまだ消化不良なところが多々あります.
もっともそれは,それだけ技術的な詳細に踏み込んでいるということの裏返しでもありますから,
ビデオカメラが好きで好きでたまらない人には垂涎ものだと思います.
続きを読む投稿日:2013.09.28
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検証 財務省の近現代史~政治との闘い150年を読む~
倉山満 / 光文社新書
鵜呑みにはできないが、読んでおく価値はあるかな、と。
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まず最初に。
財務省の立場で正しい悪いの価値判断がされているので、そこは割り引いて読む必要があります。
また、私はあまり近現代史に詳しくないですが、「え~、そうなの?本当に?」と思うような歴史解釈も…あります(著者も「通説とは違うものもある」と認めていますが)。通説が常に正しいとは限りませんが、ある程度知識を持って、批判的な視点を持って読むのがよさそうです。
ただ、財務省(昔は大蔵省)が「健全財政」の方針のもと近代日本の発展を支えてきたのはたぶん間違いではなく、その歴史的事実と「健全財政」の意味するところをこの分量で知ることができるという点で、読んだ価値はあったかな、と思います。
かなり意外だったのは、もともと大蔵省は「増税は最悪の手段である」と考えていたということ。
財務省というと「財政規律」(=「歳出≦歳入。そのためには増税必須!」 )を振りかざして消費税増税したくて仕方がないというイメージがありますが、本来の財政規律とは「何も考えずに歳出>歳入にしてはいけない」ということであって、増税がセットではないのです。 続きを読む投稿日:2016.01.02
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熊とワルツを リスクを愉しむプロジェクト管理
トム・デマルコ, ティモシー・リスター, 伊豆原弓 / 日経BP
ナノパーセント日!
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おもしろおかしく書いてあるのでついつい笑って済ませてしまいたくなりますが、本書の内容を知らずにある程度規模の大きなソフトウェア開発をすると、たぶん相当イタイ目に遭います。
ただ、一度くらいイタイ目に遭…っていた方が、実感を持って本の内容を受け止められそうなので、ある程度開発経験のある人向けの「リスク管理」の本なのかなと思います。
でも、駆け出しのプログラマであっても「ナノパーセント日」は知っておくときっと役に立つと思います。
「ナノパーセント日」は、プログラマが予想するプログラムの完成予定日。
ナノは10億分の1であり、ここではほとんどゼロ、という意味。
つまり、この日までにプログラムが完成する可能性は限りなくゼロに近い、と言う主張です。
実際にプログラムが完成するまでにかかる期間は、経験的に、予想の1.5~3.0倍と言われています。
プログラマはリスクを織り込まない楽観的な見通しを立てる傾向が強い(技術者の性?あるいは神ならぬ人間の能力の限界?)、という戒めです。
自分は慎重だと思い込まず、計画は楽観過ぎないか、自分に都合のよい仮定をおいていないか見直してみる、これがきっとリスク管理の第1歩です。 続きを読む投稿日:2015.08.31
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放射能汚染の現実を超えて
小出裕章 / 河出書房新社
20年以上前に出版された本なのに、まったく色あせていない
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川内原発の再稼働を機にもう一度読み直してみました。
本書が出版されたのは1991年、タイトルにある放射能汚染の焦点はチェルノブイリ原発事故です。
福島原発事故が起きた後の今読んでもその内容に古臭さの…ようなものは一切ありません。
福島原発事故後、小出先生の著作を読んだ方、講演を聞いた方も多いと思いますが、本書との違いは焦点が福島かチェルノブイリかの違いくらいしかないと思います。それほど、先生の主張は一貫しているし、明快です。
チェルノブイリの事故は地理的には福島よりはるかに遠く離れていたとは言え、福島と同じように食品の放射能汚染が問題になっています。また、福島では放射能汚染のためいまだに自宅に帰れない方が多数いますが、本書では、仮に九州でチェルノブイリと同じ規模の原子力事故が起きたら汚染地帯がどこまで広がり、そこに住む人は着の身着のまま逃げなければいけないということまで指摘しています。
事故が起きてしまった場合の代償がいかに高いかこの時すでに判っていたわけだし、事故後に発生する(社会的)問題の予想は恐ろしいほど的中しています。
20年以上前に、そう警鐘を鳴らしてくれる人がいたのに、どうして原発をやめられなかったんだろう(やめられないんだろう)と思います。 続きを読む投稿日:2015.08.16
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メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故
大鹿靖明 / 講談社文庫
事故の全体像をまとめたドキュメンタリー
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福島第一原発事故の後,おそらくもっとも早く出版された,事故の全体像をまとめたドキュメンタリー.
私はこの本で,あの事故がどういう進展を辿っていて,東電,政府などの関係者がどう動いていたかの概要を知りま…した.
なお私が読んだのは,2012年に出版された,同じ著者による同名の電子書籍の方で,表紙のレイアウトは同じですが色がグレーでした.
気づいたらSony Reader Store からその本がなくなっていて,替わりにこの本(表紙が水色)になっていました.
ひょっとしたら私が読んだ方とは内容が変わっているかもしれません.
非常に深刻な事故なのに,思わず失笑してしまう箇所がありました.
東電の説明を「こんにゃく問答」と揶揄したり,対応の遅い東電を「尻を叩かれないと動かない」と批判したり,
もちろん笑っていられる状況ではありません.
あの時も,2年半以上たった今も. 続きを読む投稿日:2013.09.27