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Maxwellさんのレビュー
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  • 福島原発 現場監督の遺言

    福島原発 現場監督の遺言

    恩田勝亘

    講談社

    私たち双葉郡民を日本国民と思っていますか.法の下に平等ですか.

    「私たち双葉郡民を日本国民と思っていますか.法の下に平等ですか.」 本の冒頭にあるこの言葉が,すべてを物語っていると思います. 日本は法治国家で,言論・表現の自由,健康で文化的な生活を営む権利が憲法で保障されています. ですが,いわゆる原子力ムラの中では,そんなものは名ばかりであると考えざるを得ませんでした. 福島第一原発の事故以降,原発は危険なものであるという認識が広く広まったと思います. ただ,原発というものを中心に究極の差別社会が形成されているということは,原発が危険なものだ という認識ほどには広がっていない気がします. 福島第一原発の事故後,事故自体に関する書籍,原発に関する書籍,放射能の危険性に関する書籍など 原発に関連する書籍が多数出版されていますが,この本は原発や放射能に関する記載に加え, 原発を持つという社会の在り方がいかに非人道的かという着眼点があるという点で, 他の書籍と一線を画していると思います. この手の書籍は文章が固く単調でつまらないことがままありますが,この本には当てはまりません. わかりやすく読みやすく,小説を読んでいるかのように頭の中にすいすい文章が入ってきました.

    1
    投稿日: 2013.10.01
  • されど、愛しきソニー 元役員が本気で書いた「劇的復活のシナリオ」

    されど、愛しきソニー 元役員が本気で書いた「劇的復活のシナリオ」

    蓑宮武夫

    PHP研究所

    いいこと書いてあるけれど,ちょっと感傷的

    かつてソニーが輝いていた理由が判ります. 簡単に言うと,能力の高い人を集めて,やる気にさせる. 口で言うのは簡単ですが,実現するのは簡単なことではありません. これをソニーではどうやって実現していたのか,ということが具体的なエピソードを通して説明されています. なるほどと思うこと,そのとおりだと納得できること,そして引用して誰かに伝えたくなる言葉が散りばめられています. ただ残念なのは,著者がソニーで携わった仕事を思い返しながら「昔はよかった」という感傷に浸っているかの ような雰囲気が醸し出されていることです(特に後半). そのせいか読後感としては,愚痴を聞いてちょっと疲れた,というところでしょうか.

    2
    投稿日: 2013.09.29
  • 太平洋戦争、七つの謎 官僚と軍隊と日本人

    太平洋戦争、七つの謎 官僚と軍隊と日本人

    保阪正康

    角川oneテーマ21

    太平洋戦争を始めたのは官僚だった

    愕然としました. 太平洋戦争は,その終結までの具体的なシナリオもないまま,官僚によって始められてしまった,という本書の記述に. 実際,戦争開始という国家の重大事が,国会の議決もなく始められてしまっています. そしてシナリオもなく勢いで始められてしまった戦争で,何百万人もの国民の命という高すぎる代償を払うことになりました. 官僚が始めた,と書きましたが,特定の誰か,ではありません. しいて言うなら,官僚組織,官僚の集合体です. この状況が,今現在の日本とどこか重なっている気がして背筋が寒くなりました. 膨らみ続ける国の借金,収束しない原発事故... 誰も破局に向かう道を選びたくないのに,誰も制御できない巨大組織の意思のようなものによって破局に至り, 政治的にもっとも弱い立場の一般市民がその代償を払う... 歴史は繰り返す,とも言いますが,そうならないように歴史に学ぶこともできるはずです.

    6
    投稿日: 2013.09.28
  • ソニーの「B面」 知られざる黒子事業(週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.6))

    ソニーの「B面」 知られざる黒子事業(週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.6))

    後藤直義,藤田章夫

    週刊ダイヤモンド特集BOOKS

    プロフェッショナル魂を感じます

    ソニーの技術力の高さと,サポート体制がいかに徹底されているかが伝わってきます. ビジネスユーザーから高く評価され信頼されているのも頷けます. (2014/04/26 追記) 改めて読み直すと,ソニーの持つ技術力よりも(もちろん技術力も卓越していますが), 他人(顧客,将来のソニー)を最優先し,自分のこと(自身の成功や会社の現在の利益)は 二の次にしている姿勢が強く感じられました. 特に印象に残ったのは2点です. ・故岩間和夫氏は,投資回収は21世紀になるかもしれないと言われたCCD(撮像素子)に開発投資を続行し,  将来のソニーの成長の種を撒いた(←短期的な利益や自分の手柄だけを考えていたらできない行動). ・放送局,映画撮影などプロフェッショナルが使う機器であるだけに,万一故障があればすぐに対処できるよう  全世界にサポート拠点を設けている(←利潤最大化だけを考えていたらこんなことはできない). いわゆる「黒子事業」が,ソニーという会社の中だけでなく, 顧客(放送業界,映画業界のプロフェッショナルたち)の「黒子」という 立場に徹している印象を受けました. この姿勢から,設立趣意書に井深氏が記した創業の精神  「真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場」  「不当なる儲け主義を排し,あくまで内容の充実,実質的な活動に重点を置き,  いたずらに規模の拡大を追わず」 を思い起こしました.

    0
    投稿日: 2013.09.28
  • 青の炎

    青の炎

    貴志祐介

    角川文庫

    感動のサスペンス,青春小説

    読んでいる最中は,主人公の秀一にすっかり感情移入してしまって彼の「犯行」が露見しないかとドキドキし, 読み終えた後は胸がきゅんとして,その後数日はふとした時に本の内容を思い出しては切ない気持ちになっていました. 私のつたない文章力ではとても表現できませんが,こういうのを「感動した」と言うのだと思います. こんな本に出会ったのは久しぶりです. 試験の前とか,たくさん仕事がある日の前には読まない方が身のためです. そうでないと,勉強や仕事に集中できないかもしれません.

    18
    投稿日: 2013.09.28
  • 「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場

    「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場

    小出裕章,渡辺満久,明石昇二郎

    集英社新書

    放射能をばらまく,ホントに最悪の施設です.

    原発はまがりなりにも放射能をプラント内に閉じ込めています. が,再処理工場は放射能を海や大気中にばらまきます. その量は「原子力発電所が1年で放出する量を1日で放出する」ほど莫大だそうです. 大気中には主としてクリプトン,三重水素,炭素が放出されるそうですが, それらを捕捉して放出させない技術があるにも関わらず,「コストがかかるから」 ばらまく,と. 福島第一原発の事故以降,農作物や魚介類の汚染が社会問題化しましたが, 政府や電力業界のエライ人たちは,こんな施設を稼働させて こっそり放射能をばらまくつもりなんでしょうか?

    1
    投稿日: 2013.09.28
  • ルポ 東京電力 原発危機1カ月

    ルポ 東京電力 原発危機1カ月

    奥山俊宏

    朝日新書

    こんにゃく問答

    「議論は非常にありましたけれども,...誠にに心苦しいことではありますが,  格納容器からですね,圧力を少し出すと,いうことをしようという手順を組んでおりまして,  その判断をやろうというふうに,考えた次第であります.」(※本文より引用) 読めば読むほど何を言いたいのかわからなくなってきます. もし試験でこんな問題が出されたら? (問)上の文章はどういう意味か説明せよ.  (A)格納容器ベントの準備中である.  (B)格納容器ベントの準備をするかどうかを考え中である.  (C)格納容器ベントを実施するかどうか考え中である.  (D)格納容器ベントを実施しようとしている. 私はアミダクジで答えを選ぼうと思います.正解する確率1/4. ですが原子炉格納容器が今にも破裂するかもしれないという状況で, 呑気にアミダクジしているヒマはないのです.

    1
    投稿日: 2013.09.28
  • ソニー 厚木スピリット

    ソニー 厚木スピリット

    立石泰則

    小学館

    読みごたえがあります.というか,ちょっと難しいです.

    最初はソニーが業務用機器(テレビ局や映画撮影などで使うビデオカメラや編集用の機械)の分野にいかに進出し, シェアを伸ばしていったかという成長物語です. ソニー厚木の生みの親とも言える森園さんの活動に焦点を当てた物語になっていて,頭の中にすいすい文章が入ってきました. 特に印象的だったのは,サポート体制の徹底ぶりです. ソニーのサポート拠点がない地域では機器を販売しない.理由は万が一壊れた場合にすぐに修理や交換ができないから. 製品の性能や技術力だけでない,カスタマーの仕事をいかにして支えるかまで考えたビジネス手法が,ソニーが放送・業務分野で 高いシェアを持つ理由であり,その精神が厚木スピリットということなのでしょう. 中盤以降は,ビデオカメラのことをよく知らない私にはなじみのない単語が多く出てきてなかなか理解ができず, ひととおり読み終えた後でもまだ消化不良なところが多々あります. もっともそれは,それだけ技術的な詳細に踏み込んでいるということの裏返しでもありますから, ビデオカメラが好きで好きでたまらない人には垂涎ものだと思います.

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    投稿日: 2013.09.28
  • 原発のウソ

    原発のウソ

    小出裕章

    扶桑社BOOKS新書

    放射線の恐ろしさ

    小出先生の本は何冊か読んでいますが,内容的には他の著作と重複する箇所もありますので, 既に小出先生の著作を読んでいる方には既知の内容があるかもしれません. ですが私が読んだ範囲内で他の著作には記載がなく,且つ非常に衝撃的だったことがあります. それは,茨城県東海村のJCO臨界事故で亡くなった作業員の方が,事故の後どのような経過を辿って亡くなったかということです. 放射線でDNAが破壊されるとヒトの身体がどうなってしまうのかということがよく判りました. 判りすぎて,ちょっと辛かったです... 原子力とはそういう技術なんだと,改めて思い知らされました.

    2
    投稿日: 2013.09.28
  • 廃炉時代が始まった この原発はいらない

    廃炉時代が始まった この原発はいらない

    舘野淳

    リーダーズノート

    技術的な視点で語られる,原子力発電の危険性

    原子力発電の危険性を,技術的な視点からわかりやすく説明しています. ・稼働率の低い原子炉ほど危険 稼働率が低いということは,それだけ小さな事故で頻繁に停止,修理をしてきたということの証. ・照射脆化 核分裂反応の際に飛び出す中性子線によって鋼鉄製の原子炉圧力容器は脆くなっていく. 何らかの衝撃で(たとえば緊急炉心冷却装置が作動して急激に冷やされるなどした時に)容器が割れてしまう恐れがある. ・緊急停止の危険性 冷却材喪失事故に備えて,原子炉には緊急炉心冷却装置が備え付けられている. だがこの機構が作動すると大量の水が炉心に注入され,一気に冷やされた原子炉圧力容器にダメージを与える可能性がある. 小さな事故を繰り返し何度も緊急炉心冷却装置が作動した原子炉は,何度も負荷がかかって脆くなっている. どこまで耐えられるという技術的な裏付けはない.

    1
    投稿日: 2013.09.27