
国家と秘密 隠される公文書
久保亨,瀬畑源
集英社新書
情報公開という点で日本は後進国だ、と主張している本
情報公開の基盤ともいえる情報公開法、公文書管理法がようやく制定されて運用が始まったところだったのに、特定秘密保護法なんかを作ったのはけしからん、と、そんな内容です。 残念ながら面白いとは言えない本です(堅苦しい部類の本です)が、1回休憩挟んだだけで読み切ったので、この手の本としては読みやすい部類なのかなと思います。 印象に残った点をいくつか挙げます。 <知識は無知を永遠に支配する> 情報がいきわたっていない、あるいは入手する手段のない『人民の政府』なる存在は、笑劇か悲劇の序章か、あるいはその両方以外のなにものでもない。知識は無知を永遠に支配する。だから、自ら統治者となろうとする人々は、知識が与える力で自らを武装しなければならない。 ジェームス・マディソン アメリカ合衆国第4代大統領 本文第2章より引用 <公文書管理法の制定に尽力したのは福田元総理だった> 福田元総理と言うと、国会で「(自分が)かわいそうなくらい苦労しているんです!」と答弁したり、「私はね、自分を客観的に見ることができるんです、あなたとは違うんです!」と言って1年で辞任したりした、というイメージが強すぎて、お世辞にも名宰相とは言えないと思っていましたが、いい仕事もしていたのですね。ちょっとだけ福田元総理に対するイメージが変わりました。 <(公文書は)国民共有の知的資産> これは公文書管理法にある文言です。 「公文書」だとちょっと実感が湧かないですが、例えば他の人がやっていた仕事を引き継いだ時に、経緯などがきちんと文書化されているのといないのとでは、引き継ぎ後の作業効率に雲泥の差があります。という実体験を踏まえて、この文言には大いに賛同したいです。日本のお役所の場合、決定事項として残っている公文書はあれど、そこに至る経緯などが記載された文書はあまり残っていないというたいへん残念な状況だそうで(実務に携わっていない人が知りたい情報は、結果より経緯であることが多い)、ここは今後に期待したいところです。 <官僚は秘密にしたがる> 官僚の性として、自分が取ってきた情報は重要だと言いたいので、機密にしたくなる。また機密にすべき情報を公開してしまうと罪に問われるが、公開して問題ない情報を機密にしても罪には問われないので、不要なものまで機密扱いにする傾向に拍車がかかる。らしいです。 官僚、つまり行政側にそういう傾向があるなら、立法府が法律でこれに対して歯止めをかけないといけないと思うのですが、立法府が作ったのは特定機密保護法なのですね・・・。
0投稿日: 2015.08.16
ニュースで伝えられない この国の真実
辛坊治郎
KADOKAWA
「事実」自体はニュースでばっちり伝えられていると思いますが・・・
本書の内容は、著者がメールマガジンで配信した記事36個です。 難しいことは書いていないので、さくっと読めます。 タイトルに「ニュースで伝えられない」と書いてありますが、事実(実際に発生した事象)はテレビのニュースでも新聞でも伝えられています。 テレビで「伝えれらない」のはその事実に対する著者の考察で、その考察自体はそれほどびっくりするようなことではなかったです。 ただ、目からウロコの内容が1つありました。 日本は言論の自由が憲法によって完全に保障されている稀有な国、なのだそうです。 本書の内容がテレビで「伝えられない」のは、テレビなど一部のメディアには放送法によってその自由に制限がかかるから(例えば、「政治的に公平であること」など)。 ヨーロッパなど多くの国ではテレビに限らず言論の自由自体が法律の範囲内でしか認められないもので、例えばドイツでヒットラーを礼賛するようなことを言おうものなら逮捕、だそうです(このあたりについては、本書の「はじめに」と「グローバル企業なりの苦労」の節に詳しく書いてあります)。 第9条以外の点でも、日本国憲法は、とても進歩的なのですね(もちろん、良い意味で)。
4投稿日: 2015.08.15
人間 井深大
島谷泰彦
講談社文庫
井深さんのダークな(?)一面も描いた珍しい本
井深さんといえば、ソニーを創業した天才技術者で性格は温厚、というイメージがあり、ソニーに関連する多くの書籍でもそういう描写をされています。 もちろん本書でもそういう面が描かれていますし、多くの人を惹きつけていますが、その一方で、「死屍累々」というなかなか激しい表現で、多くの人が井深さんのもとを離れていったという事実も指摘しています。 それでいながらダークな(?)印象が弱いのは、根底に人に対する優しさがあふれているから、なのでしょう。 井深さんに対する基本的な印象(好印象)は変わりませんでしたが、ちょっと見てはいけないものを見てしまったような?そんな気分です。
2投稿日: 2015.08.15
日本国憲法の二〇〇日
半藤一利
文春文庫
文章は軽妙、皮肉が効いてておもしろい
終戦から日本国憲法制定までのゴタゴタを描いた、ドキュメンタリーでもあり、その時代を生きた人のエッセイでもあります。 戦局はどんづまりで学徒動員で自分たちが作らされたネジは何かの役に立ったとは思えないだの、終戦を境にそれまで大東亜共栄圏だの鬼畜米英だの言っていたオトナたちが180度転向してアメリカ万歳とか言い出した(節操なし)だの、政府首脳は無難な老人たちで固められて日本政府はGHQの命令を翻訳して伝達するしか能がないだの、当時のオトナたちをなかなか痛烈に皮肉っています(筆者は当時15歳)。 天皇、マッカーサー元帥、日本政府、GHQの動きを綴った一級品のドキュメンタリーのそこかしこに、筆者視点での皮肉やら庶民感情が埋め込まれていて、飽きさせません。 筆者の視点が入っているせいかもしれませんが、昭和天皇やマッカーサー元帥はなかなかイイ性格をしていたようです。現実問題としてゴタゴタが本当に丸く収まったかどうかはさておき、とりあえずは平穏な今の日本があるのはこの2人の尽力あってこそ、なのでしょう。 それにしても、70年も昔の話でありながら、なぜか、何やら現代日本にも通じるところがあるような気がしてしかたがないです。
1投稿日: 2015.05.05
暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり
吉本佳生,西田宗千佳
ブルーバックス
ソフトウェア的な技術論というより、どちらかというと通貨論
全体としては、 ・通貨とは何か ・各通貨(ドル、円、江戸時代の小判、ビットコインなどなど)の機能や欠点 ・金融システム についての議論が多かった印象があります。 ビットコインの技術的説明は、されていますが、ちょっと少なめ。 ソフトウェア寄りの深い話を期待しているとちょっとがっかりするかもしれないです。 ソフトウェア論としては、時々ものすごくいいことも書いてあるのですけど。 Windows XP のサポート終了を批判する人が多い件について、「(摩耗する様子が直接は見えないので)ソフトウェアやシステムは摩耗しないと誤解している人が多い。」(つまり見えないけれど摩耗する。)など。 摩耗するというとすり減るイメージがありますが、ソフトウェアに物質的な実体はないので、正確には、技術進歩に対応したメンテナンスをしないとセキュリティの問題など様々な問題が発生してくる、ということですが。 ただ、江戸時代の金融システムの説明とそれが崩壊した理由はとても興味深い内容でした。 考えてみたら、200年以上も安定した統治が続いた時代というのは希少な例ではないでしょうか。 優れた金融システムが経済の安定に寄与し、政治も安定する…人が生きる以上、今も昔も変わらないのでしょうね。
5投稿日: 2015.04.11
迷宮のソニーモバイル 平井体制の末路(週刊ダイヤモンド特集BOOKS(Vol.70))
中村正毅
ダイヤモンド社
量は少なめですが、内容には満足です
週刊誌の特集の抜粋なので量は少なめですが、内容には満足です。 (価格に見合う価値がじゅうぶんにあると感じました。) 文面は、事実を冷静に淡々と書いたものという印象です。 時々、当事者にとっては「ちくっ」と感じそうな記述はありますが。 内容については、タイトルにある「ソニーモバイル」にはそれほど力点が置かれていない印象を受けました。 「スマートフォン事業の減損損失」の件などソニーモバイルが震源地の話題を材料に使ってはいますが、 事業の状況や経営首脳の過去の発言などの事実を淡々と描き、それによって組織や経営の問題点(意思決定の遅さやチェック機能の欠如など)を読者に意識させようとしている感があります。 念のため追記しておきますと、「ソニーモバイル」に関する記述が少ないわけではまったくありません。 Xperiaの販売状況データやソニーエリクソン時代からの事業の推移なども記載されています。 これも「事実を淡々と」。
1投稿日: 2015.03.27
プロメテウスの罠 3 福島原発事故、新たなる真実
朝日新聞特別報道部
学研
三春町は,住民の安全を守った
福島第一原子力発電所の事故では,事態を収拾できず対策も後手にまわるなど とかく失策ばかりが目立ちますが,自らの責任をまっとうに果たした人たちもいることが この第3巻第14章「吹き流しの町」に書かれています. 14章の主役は福島県三春町の職員の方々です. 福島県三春町では,町独自の判断で安定ヨウ素剤の服用を決定し,住民に配布しました. (法律上その権限は国と県に属し,市区町村にはないそうです.) 町の行政を預かる人たちは震災後の混乱の中情報を集め,原発の状況が悪化すれば 安定ヨウ素剤が必要になるかもしれないという結論にいきつくと,安定ヨウ素剤住民全員分を 急いで調達し,さらにそれを必要な時に飲んでもらうための様々な準備を行います. そしていよいよ原発が危ないということになると,住民への安定ヨウ素剤の配布と服用指示を 決定します. この決定に際して副町長の深谷氏が言った「責任は,俺が取る.」という言葉や, 住民全員に確実に届くよう町の職員が留守宅に何度も足を運ぶといった取り組みなど, 住民の安全を守るという意思と,自らの職責を自覚しているプロフェッショナル魂を感じます. 当時の官房長官の発表によれば,福島第一原発からばらまかれた放射能により 「ただちに健康に影響はない」そうですが. それは何年後かにはあるかもしれないということでしょう. 誰も健康被害が出なければいいと思いますが,仮に何年か後に健康被害が顕在化しまったとして, 三春町の人たち(特に子供)で健康被害の出る割合が明らかに少ないとか軽いとかいうことになれば, それは三春町の職員の方々が住民を守ったことの何よりの証拠になるでしょう. (そんなこと証明されない方がいいのですが... 証明される時というのは,統計的に有意な数の健康被害が出てしまった時ですから)
1投稿日: 2014.08.30
週刊ダイヤモンド (2014年4/26号)
ダイヤモンド社
ダイヤモンド社
落として落として,最後にちょっとだけ持ち上げる
「ソニー消滅!!」と過激な副題をつけているだけあって,かなり手厳しくソニーの経営成績と経営陣にダメ出ししています. (批判の主対象は平井氏が社長に就任した2012年度以降). 最後だけは今後「期待できそうな」製品を紹介してちょっと持ち上げていますが. 確かに決算を見る限り主力のエレクトロニクスは赤字続き,業績予想の下方修正続きで, 資産売却で食いつないでいる感があるのは否めません. ただ,ソニーは「人のやらないことをやる」「それまでにない新しいモノを創り出す」ことで 成長してきた会社だから,その原点に立ち返って成果を出そうとしたらある程度の時間がかかるのは 仕方がないと思います. 確かに批判の中には納得できるものもあります. ただ,ここ1年くらいの間で出てきたソニー製品を見る限り(個人的には VAIO Duo13 は秀逸だと思います), またテレビ,雑誌,CESでの基調講演などでの平井氏の発言を見る限り,ちょっと公平な評価ではない気がします. 決算,株価,販売台数のような,明確な数値となって表れるものを主要な着眼点として, 「厳しく評価する」方針でまとめた特集と言えそうです.
12投稿日: 2014.04.22
原発事故はなぜくりかえすのか
高木仁三郎
岩波新書
「化学の専門家の視点から」という切り口が新鮮
化学の専門家の立場で語られる放射能の扱いの難しさ,という切り口が新鮮でした. 化学の実験で誤って被爆したこともあるという実体験を通した「危険性への強い意識」が感じられました. 残念なことに原発の技術者,研究者の主流派である物理の専門家はそういう実体験がないために 危険性の認識が弱いようです. 言われてみれば,「原子炉は危険だから」と全部遠隔操作になっている状況では, 危険性への意識を育む実体験が積めるとは思えません. この危機意識の低さこそ大小様々の原発事故の根底にあるのではないでしょうか.
1投稿日: 2014.04.13
戦略課長
竹内謙礼,青木寿幸
PHP文庫
この本のテーマは「戦略なき投資は失敗する」
読みやすい小説でありながら,なかなか奥が深く,いろいろ考えさせられる1冊. 事業の投資,株式投資,不動産投資について,具体的な例を通して 利益を上げるために必要な知識(会計,株,税など)をそこかしこに散りばめつつ, 「戦略」を立てることの重要性を実感させてくれます. どちらかと言うと経営寄りの内容だとは思いますが,「戦略」のエッセンスは ・実施に先立って計画を立てること, ・状況に応じて計画を修正していくこと, なので(こう書いてしまうとなんだかアタリマエのことに見えますが,普段なかなか 意識しないことでもあるかなとも思います),どんな仕事でも当てはまると思います. この本を読むことが,明日から「仕事に取り組む姿勢」を変えるきっかけになるかもしれません.
3投稿日: 2014.04.06
