shigehachimanさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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キケン
有川浩 / 角川文庫
誰にもあるであろう青春の一コマ
4
誰にでもありそうな青春の一コマが、マンガを読むような展開の早さで一気にたたみかけてくる。
一時の気の迷いや友達がとにかく欲しくてとか、半拉致状態で勧誘から抜けられなくてとか、色々事情はあるけれども、
…誰も入りそうにないサークルに入ってしまうも、その活動にのめり込んでしまい、大学生活のほとんどをその小さな世界
で過ごしてしまう青春――――――。
そんな時代に一気に連れて行ってくれる物語で、紙の本で読んでから電子書籍になるまでずっと待ってました。
大人になると懐かしくも少し近寄りがたいいい思い出を、いい具合に読ませてくれます。
ただ、場所に余裕のある方には、「単行本」がおすすめ。各章の扉がマンガになっていたり、最後の方にあるジーンとくる
ページがドーン!と目に入ってくるのは、単行本ならではと思います。電子書籍なら大きめのタブレット推奨かな。
とにかく、Readerでのそのページの表示のガッカリ加減は半端ない残念さです。すぐに、iPadで該当ページを開く羽目
になりました。その点で★マイナス1。
ばかげたことに時間を使いまくった経験のある方なら、共感できると思います。物語は文句なしに、★五つです! 続きを読む投稿日:2016.07.14
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セカンド・ラブ
乾くるみ / 文春文庫
分からない
4
ページ数表示させているため、終わりに近付くほど、心が高揚してきます。そして最後に明かされる秘密・・・が分からずに、最初を読み返してみます。でも、分からない。けれどもう一回読み返すのは面倒…と言う訳で、…ネタバレサイトで内容を理解する始末。
やっと理解しても、中途半端は拭えない。イニシエーション・ラブは、女は怖いねぇと思えるのだが、こちらはなぜそうしなければならなかったのかが全く分からず、作中で「永遠の謎」と書いているとおり、動機や行動選択に必然性や説明が全くなく、すっきりしない。
もうこれ以上この作者の本は、読まないような気がする。 続きを読む投稿日:2015.06.05
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ワン・モア
桜木紫乃 / 角川文庫
小さな幸せのためのちょっとの勇気
3
ホッとあたたくなる一冊です。
まず、柿崎美和が描かれ、その友達の鈴音と八木の存在を知ります。そして、鈴音が病気のために、美和に鈴音の個人病院を任せたいというところから連作は始まります。ほんの少しの不幸…が、少しずつ幸せに変化していき、最後は当人の少しの勇気で幸せになっていく・・・。ホッとできる瞬間です。
暖かな気持ちになりたい方にお勧めです。
さて、この電子書籍には、珍しく『解説』もついています。本の読み方は個人の自由なので、解説なんていらないと思っていました。
けれども、こういう読み方もできるんだと感心したり、自分とは読み方が違うなぁと思ったり、やっぱり解説はあった方がいいですね。
この本のような物語の進め方を「連作」というのも解説で知りました。
続きを読む投稿日:2015.09.24
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知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語
橘玲 / 幻冬舎単行本
経済合理的に生きる
3
著者の生き方である「経済合理的に生きる」ということを、「保険」「年金」「医療」「教育」「不動産」「投資」といった視点から述べている。
この考え方からすると、私は典型的な日本人で、無駄な生命保険と医療保…険に保険金を払い、自宅を購入しそのローンに追われ、
子どもを設けている。これらは、将来豊かな資産形成ができない要因で、自分の将来に禍根を残す可能性があることになる。
なるほど!自分のお金が足りないということは、こういうことだったか!という納得ができてしまう本です。
資産運用の方法にも言及されていますが、投資を躊躇される方はとにかく「収入を増やし、支出を少なくする」を意識することで、
かなり「幸福になる」術を駆使していると言えると述べるあたり、投資をあおるだけといった投資本が多い中、非常に好感が持てます。
そういった様々な経済=お金にまつわることをわかりやすくまた、誰に媚びることなく記述された良書です。
ただ、人間は、経済合理性だけに生きられないからこそ人間らしいと感じる部分もあります。
特に、それを感じるのは不動産投資で、自宅購入か賃貸かは意見が分かれるところと思います。
ここは、経済合理性だけで説明できないところがあると思うし、夢とか経済合理性以外の考え方があって当然だと思います。
この本に対して一番言ってはいけない言葉が頭に浮かびます。「お金だけが幸せの基準ですか?」
(だからこそ、私は、老後ちょっと困ることになるのだろうな・・・。) 続きを読む投稿日:2016.09.25
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イスラム国の野望
高橋和夫 / 幻冬舎新書
中東を難しくしたのは誰か?
3
おそらく、この本の原稿ができあがった時には、日本人が誘拐され、殺されるという事件もおきていなかったのではなかろうか。
ゆえに、あとがきにも「中東に関する本の出版は、めまぐるしい情勢の展開に追い抜かれて…しまう危険と隣り合わせです」と書かれているような状況が生まれてしまう。
中東の歴史を知るほど、現在の状況を生み出している元凶は英仏露にあるという気分させられる。戦後は、東西のパワーバランスのために、米露に翻弄されてきたとも感じる。
これらの欧米露へのいわれなき反発がイスラム国を生み、人々を戦闘に駆り立てているのかもしれない。
けれども、結局「野望」は分からない。現在と未来を語ることは、推論でしかないし、人文科学も社会科学も結局、人間が行ってきた歴史にしかその答えを見いだすことができないからだ。
中東の過激派の「野望」が何かという答えが出るには、もう少し時間が必要だろう。
我々が気をつけねばならないのは、、中東でおきる戦争やイスラム過激派のテロは、宗教戦争ではないし、イスラム教徒=過激派というステレオタイプ的なレッテルを中東に貼ってしまうことである。
中東に生きる人々も我々と同じ人間であり、おそらく平和に幸せに暮らしたいと願っているはずである。 続きを読む投稿日:2015.03.22
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校閲ガール
宮木あや子 / 角川文庫
スゴい!・・・解説が・・・
3
読んでいたら知らない間に読み終えていました。
なんだか軽い本だなぁ程度に思っていたのですが、あっという間に読めてしまうのには、理由があった!
それが、角田光代さんの解説に滔々と語られております。スゴい…じゃないか!宮木あや子!
私は、小説内小説が嫌いで、読み飛ばしていたのですが、これもスゴいテクニックらしいです・・・ハイ・・・読み直していませんが・・・。
私は男なのですが、この本で分かったことは、男性のような言葉を話す女性が大嫌いということです。
「・・・・じゃねーよ。」とか・・・そういうしゃべり方をする理由は書いてあるんだけど、もうこのキャラクターを受け付けない・・・・。
古い人間ですね。ドラマでは、石原さとみが演じていましたが、よくこんなオファー受けたなぁと思っていましたが、小説も一緒でした。
こういう小説は初めてでした。解説がないと、ちょっと嫌な本だなぁという感想だったと思います。
それが、「この著者はスゴいテクニック使ってるんだ!」「文芸のぶの字も分からない自分がレビューを書くなんておこがましい!」って思えるくらい解説がうますぎる!
小説を読んで、ぜひ解説を読んでください。そうすることでこの本がとても面白くなります。
仕事の描写は中途半端で、もう少し仕事に焦点を当ててくれたらいいのに・・・という思いから★マイナス1。
仕事の描写は、三浦しをんさんの「舟を編む」や「 神去なあなあ」シリーズのほうが、仕事への焦点の当て方が巧いと感じました。 続きを読む投稿日:2016.12.25