
東京膜
渡辺ペコ
YOUNG YOU
恋とか愛の類じゃないものに心動かされて、泣いた。
「おとうさんおかあさん/あなたたちのこどものもとがこんなにすくすく大きく育って/あんな風や あんな風や こんな風になること/想像できた?」 兄と妹と弟。それぞれに成人してとっくに家を出て、身の丈にあった形で幸せを模索していて、青く見えた隣の芝生はウチと同じようにしか青くなかった、のをとても前向きに描いてます。しかもそこにはちゃんと希望もあって、泣いた。 自分は人の幸せだけ羨んで、その人の不幸には目を瞑ってたんだなー!みたいな痛さもあって、とてもとても良い。
1投稿日: 2016.12.29
深夜0時にこんばんは
冬川 智子
太田出版
普通なら漫画しないささやかな不幸を、アナログの温度ある声がちょっと救うかもしれない物語たち。
「私は 夢も叶えられなくて/そんなに幸せじゃないけど/今はこれでいいのかもしれないと思った」 生活に疲れた主婦が、大学時代の彼氏が夢を叶えたことを知ってセンチメンタルになったところ、意外と気がついていた旦那様がフォローを入れた、その直後の主婦のモノローグ。四捨五入すると幸せと呼んでいいけれど、ちゃんと幸せかと問われれば100%じゃない感じが、とてもリアルで好みです。人生そんなものだよね(いい意味で)。
1投稿日: 2016.12.29
5つ数えれば君の夢
今日マチ子
Championタップ!
人生のどこかのタイミングでは、意地を張るのって必要なんじゃない?
「夢が叶ってしまったら、私は永遠におどりつづけなくてはいけない。」 上京して人気アイドルにまで上り詰めた「ヒトミ」が、故郷の幼馴染を案内する一場面。「ずっとは続けられないアイドルのために、靴ずれしてまでその靴履くの?」と問われてのヒトミのモノローグなんですが、ここすごく好き。 夢は叶えて終わりじゃなく、そこから続くものです。なまじ頂点を見てしまえばなおさら、喜びとともに辛さも味わう。それでも「意地でもこの靴は脱がないんだぞ(...未来の不安は知っているけれど)」の選択に心打たれる。
1投稿日: 2016.12.29
惑星9の休日
町田洋
祥伝社コミックス
日常の延長線上にある永遠、みたいなやつ。
「うまく説明できないんだけど その時 この瞬間は永遠なんだ、と思った」 ちょっとした日常に起こったドタバタハプニングの後、「疲れたー。あ、明日休みじゃん?この後ご飯食べてく?」と被害者仲間に誘われてのモノローグ。この瞬間を永遠と判断するには脈絡なさ過ぎるのに、本当だ永遠だ、て同調できたんです。 オザケンの『さよならなんて云えないよ』の歌詞で「左へカーブを曲がると 光る海が見えてくる 僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも」が好きなんですけども、それと同じ匂いを感じる。日常の延長線上にある永遠、みたいなやつ。
1投稿日: 2016.12.29
はてなデパート
谷和野
月刊flowers
「人が欲しいもの手に入れる瞬間に立ち会えるんですよ しかも渡す役ができる」
どの物語もちょっと不思議であたたかくて、優しい気持ちで読み進められます。悪いひどい人もいないから心にストレスフリーで、 でも偽善という言葉までは浮かばない素敵バランス。 「人が欲しいもの手に入れる瞬間に立ち会える」多分コミック通してのテーマ的なものなんだと思うのですけれど、後半その意味が深掘りされて、思わずホロリ。涙活。
1投稿日: 2016.12.29
チュニクチュニカ
水谷フーカ
楽園
「造船技術が進歩したこの時代 人々の関心は海の向こうにあった」
言葉の通じない少年少女の交流、に「ふーん」と読み始めたのは今は昔。コミックで書き下ろし追加されたラスト3頁の「ある人」の焦燥と決意にドバッと泣いたんですがどういうこと。その10頁前くらいまでは「イイハナシダナァ」と斜に構えてたのに。 絵空事のように綺麗な物語で、でもマージ可愛いし癒されるからそれで十分。なのに最後の頁のせいで、物語全体から心のデトックスさせられた気分になります。
3投稿日: 2016.12.29
かごめかごめ
池辺葵
Championタップ!
置き去りにしてきた喪失感とひきかえに、わたしがたどりついた場所。
静謐で美しい修道女の暮らしの中に、ふと落とされた黒いしみ。平然と知らぬふりをしながら、神に祈りを捧げ、日々は淡々と過ぎていく。池辺先生の作品は、登場人物たちが言葉少なに、心の中でだけ淀みが貯まっていく描写が巧みで、この作品は特に表面上の静けさとのコントラストが綺麗。眺めるように楽しめます。
1投稿日: 2016.12.29
人魚王子
尾崎かおり
ウィングス
そらのあおとうみのあおが、かさぶたを剥がすような痛みの短編集。
多分、よし読むぞって気持ちで読んだら物足りなかったと思う。思春期の痛々しさとか不安定さを、ナイフで切り裂くほどには痛くなく描いている。でも、にじみ出る柔らかさとか透明感とかそういうものと溶け合って、なんだかちょっと心地いい。学校の自主制作フィルムを大人が覗いている背徳感がある。
2投稿日: 2016.12.29
東京ラストチカ 1巻
みよしふるまち
月刊コミックアヴァルス
王道には王道たる理由があり、
丁寧に書かれた予定調和。この予定調和を、10代後半の自分なら「ありふれた身分違いの恋」と鼻で笑ったんじゃないかしら。とても綺麗で儚くて、雨が降れば地に落ちる桜のよう。先は予測できて、だから絵画のようにぼんやりと、その美しさに酔えるのです。
2投稿日: 2016.12.29
34歳無職さん 1
いけだたかし
MFコミックス フラッパーシリーズ
セピア色の絵画のように、ありふれてでも物悲しくもあり。
特にハプニングは起こらなくて、だから平凡な日常がちまちまと描かれているんですけれど、それがふとした瞬間ぞわっとくるのなぜ。カラフルじゃないけどモノクロでもなくて、セピアっぽい。モノクロームが静かに規則正しく音を刻んでいる感じです。ただし不穏な空気はちらちらあるので途中で読むのをストップするのがよろし。。
3投稿日: 2016.12.29
