
上島さんの思い出晩ごはん
miobott,マキヒロチ
TO文庫
ただいま、おかえり、いただきます。
どこにでもいる会社員の民子さんが、疲れて家に帰ってきて、温めただけの素うどんにスーパーで買った値引き天ぷらを乗っけて食べたりする「ただいま、おかえり、いただきます」の話。 いつの間にか民子さんの前に現れて、ある日突然民子さんの前から姿を消した上島さんの思い出をご飯に重ねたりもするけれども、ちゃんと食べて、少しずつ元気になっていく。胃が温まると心も温まって、下を見ているだけだった顔を上げて前を向くこともできる、ということを、優しくちょっぴり涙めいたしょっぱさでおしえてくれるグルメ短編集です。 たみさんのおにぎり食べたい。
4投稿日: 2016.12.29
ベル・エポック 1
逢坂みえこ
YOUNG YOU
1991年連載開始の作品です。もう一度いいます、1991年。なのに全く古さがない。
能雑誌の編集者・鈴木綺麗を取り巻く人々の群像劇 。 当時のキャッチフレーズは「雑誌の仕事をとおして、すべての働く女性に共通する悩み、喜びを描いた大人気ワーキング・ロマン」。 作中に出てくる公衆電話もポケベルも、古さはなくてむしろ一周回っておしゃれレトロ。そして描かれる主人公の悩みも、不変で普遍でなんかもう、人間って成長しないね、バカだね、て思う。でもそれが愛おしさでもあり。タイトルのベル・エポック(フランス語で「良き時代」)も余韻があっていい。
1投稿日: 2016.12.29
くらしのいずみ
谷川史子
ヤングキングアワーズ
谷川史子先生の繊細で柔らかな筆で紡がれるしみじみ家族ストーリー。
人生いろいろ、夫婦もいろいろ。 恋というより愛の、ほんわか夫婦ものです。 自分の心の起伏次第で、ほろりとくるシーンが違ったりしてちょっと面白い。ストーリーで魅せるというよりはシチュエーションでじわっとくるタイプ。あまりに綺麗すぎて、こうありたい、よりも、ガラスケースに大切にしまって鑑賞専用な夫婦愛ですが、同じ空の下こんな夫婦もいるんだろうなぁ。いたらいいなぁ。「仮面夫婦」のエピソードがとんでもなく好き。
1投稿日: 2016.12.29
おふろどうぞ
渡辺ペコ
太田出版
乾燥した心にじゅわっと染み込んで、抜け出せなくなる温かさ。
渡辺ペコ先生、瞬間風速的には「東京膜」が大好きなんですが、おふろどうぞの方が、角度の違う楽しさをゆるりと読めて読み返し率高い。 涙交じりの塩しょっぱさもあるけれど、お湯のあたたかさでほどけちゃうので重たくありません。家族風呂や不倫風呂、連れ込み風呂まで様々にあるけれど、ラストのサボり風呂が最高に頷けます。真面目なサラリーマンが、仕事サボってお風呂入っちゃう話なんですが...ムッチャわかるわその気持ち。それが過ちとよばれる行いであっても、お湯の温かさでほどけて、つい許しちゃいたくなる。
1投稿日: 2016.12.29
サヨナラフラグ
マキヒロチ
FEEL YOUNG
ハッピーエンドじゃないかもしれないけれど、自分的ベストエンドへの分岐を選んでいく
時々無様で滑稽で、最高にいじらしく愛おしいオンナたちの、人生のワンシーン。「いつかティファニーで朝食を」のマキチヒロ先生作品の初作品集です。 描かれているのは、「サヨナラ」のフラグが立つか立たないかの瀬戸際。とにかく痛い。身につまされる痛々しさ。 でも、いろんなフラグを立てたり折ったりスルーしたり、ハッピーエンドじゃないかもしれないけれど、自分的ベストエンドへの分岐を選んでいく主人公の選択が、それぞれ爽やかで明るい。読んだ後、エネルギー充電された気分になります。いい。
1投稿日: 2016.12.29
今日の恋のダイヤ
草川為
AneLaLa
今すれ違って2度と会わないあなたが、私の恋のキューピッド。
見知らぬ4人が、空港を行き交う一瞬に影響を与え合い、前に進んでゆく連作短編。 鬱々とした気分で俯きがちに歩いていて、でも何かをきっかけに見上げたら綺麗な青空が広がっていた、みたいなキラキラとしたラブコメディ。誰もがみんなありふれた不幸に見舞われる日があって、でも同じくらいちょっとしたきっかけで幸せの扉は開くんだよ、ていう応援歌のような爽やかさ。 バトンで物語が繋がっていく、オムニバスらしさもとても好き。
2投稿日: 2016.12.29
港町猫町(1)
奈々巻 かなこ
月刊flowers
魔女も猫も寂しがり屋で、とかく不器用な生き物。
坂道だらけの一風変わった港町。ときおり猫たちは少年の姿で現れて、寂しさを抱えた「魔女」と呼ばれる女の子たちと緩やかに心通わせていく。悩みを抱え港町にやってきた女の子と、自由と孤独を愛しながらも寂しさを知る猫が主人公の連作短編。 滑らな毛なみと温もりが寄り添って、揺り籠のような優しい日々に癒されていく女の子たちが愛しい。これを傷の嘗め合いと見るか、一時の羽休めと見るかは難しいけれど、でも、足を止める時間は大切です。頭で考えずに感情で寄り添える作品。
1投稿日: 2016.12.29
手紙物語
鳥野しの
FEEL COMICS
なんだこの福袋のようにお得感のある短編集は。
帯の「無人島に持っていきたい短編集」のコピーがまず素敵だよね。手紙が書きたくなる、よりは、手紙の先の誰かを思ってふんわり心温まるエピソードがどれもいい。 特に、亡き人気作家が最愛の"H"に送った手紙を巡る謎解きもの「シュレディンガーの手紙」は、最後のコマが余韻があって誰も不幸をかぶっていなくて、そこまでの二転三転の展開含め相当好きすぎる。 「それにワタシは 本当のことは自分一人が知っていれば満足なのです 」
1投稿日: 2016.12.29
どぶがわ
池辺葵
エレガンスイブ
メトロノームの音のように、規則正しく軽妙で、でも緩やかに変わっていく日常。
一つ好きなシーンがあって。 無音のシーンなんですけれど、ある壁の薄いアパートで、一人の男性がレコードかけるんですよ。それでオーケストラの指揮者みたいに棒を振る。その音が同じアパートの学生さんの耳に届いてレンチンご飯の寂しさを慰めて、おばあさんの夢の中でのダンスにつながっていく。 全部台詞じゃなくて仕草でそれが語られてくんですが、ここ、すごく好きだなぁと。お互いに相手のことを意識してるわけじゃないのになぜか優しさのおすそ分けみたいになっていて、心温まるというか癒されるというか。
1投稿日: 2016.12.29
ずっと独身でいるつもり?
おかざき真里
FEEL YOUNG
東京タラレバ娘よりも、ずっと、リアル。
焦りぎみに結婚や恋愛に手を突っ込んで、色々あって女3人。ご飯食べながら「幸せってなんだろーね」に解を出すラストシーンが、綺麗で優しくて勇気もらえる。「結婚てなんだろーね」じゃない「幸せってなんだろーね」なんですよ。 東京タラレバ娘(作者:東村アキコ)の描く痛々しいアラサー女子(あえて女子)よりも、こっちの方がリアルで温度感があって、優しい正義。だからこそ読み終わった後「幸せになりたいな」て思えるんです。
2投稿日: 2016.12.29
