
仔羊の巣 ひきこもり探偵シリーズ2
坂木司
創元推理文庫
ひきこもり探偵シリーズ第2弾
ひきこもり気味の探偵 鳥井とその友人 坂木、それに二人の友人が人間味あふれる物語を作っていきます。 第1弾のように鳥井と坂木がお互いをどれだけ大事に思っているか・・・という表現が多ければ読むのを読めようかと思ってましたが、さすがに第2弾ともなるとそのあたりは控え目でした。 探偵とはいっても、職業としての探偵ではないので、友人関係、親子関係など、誰のまわりにでもありそうなちょっと厄介な問題を解決していきながら、人と人との関わりあい、親子愛、友情等々、現代の人に足りないといわれている部分をうまく描写しています。 問題を解決するたびに友人が増え、ひきこもりの鳥井が坂木をはじめ、新旧の友人たちによって徐々に外に視野が広がっていく様子もうまく表現されています。第3弾でどのように成長していくのか楽しみです。
3投稿日: 2014.06.18青空の卵 ひきこもり探偵シリーズ1
坂木司
創元推理文庫
人と人との繋がりを感じる物語
《ひきこもり探偵》シリーズ第一弾。 ひきこもりの親友・鳥井真一を外に連れ出すため、坂木司は身の回りで起こった不思議な出来事の解決を鳥井に頼み、それを見事に解決していくというストーリーです。 ミステリーとして読むとあまり面白くないかもしれません。 人と人とのつながりに重きをおいた物語として読むと楽しめと思います。 坂木と探偵・鳥井との依存具合を読み手がどう感じるかで、この小説の賛否がきまるように思います。柔らかくて温かく感じる人もいれば、奇妙に感じる方もいるかと思います。 ちょっと??と感じるところも正直ありましたが、何か解決するたびに少しずつ二人の世界が広がっていくところは好感が持てますし、登場人物がとても人間味あふれる人たちなのがいいですね。 3部作とのことなので、坂木と探偵・鳥井がこれからどう成長していくのか楽しみです。
6投稿日: 2014.06.11チルドレン
伊坂幸太郎
講談社文庫
爽快!連作短編集
5編からなる短編集です。が、全部つながってます。時系列もバラバラですが、違和感なくあっさり読めてしまいます。 主人公である陣内みたいなのが近くにいたら・・・こんな子供はイヤだけど、こんな大人は魅力的かも。 魅力的なのは主人公だけでなく、すべての登場人物が個性豊かで魅力的です。まさに伊坂幸太郎ワールドです。独特の文体ですが、堅苦しくもなく、軽すぎるでもなく、とても軽快で読みやすく、楽しい物語でした。
6投稿日: 2014.06.05本日は大安なり
辻村深月
角川文庫
目のつけどころが◎
大安吉日、結婚式当日の人気結婚式場でのおはなし。 プランナー、双子姉妹、プランナーを困らせるクレーマー、新婦に重大な事実を伝えられずに披露宴当日を迎えた新郎・・・皆複雑な事情を抱えていて、それぞれが同時進行で進んでいきます。よくもまぁ、面倒臭い人を集めたなぁと感心するほど、一癖も二癖もある人達です(笑) ウェディングプランナーという仕事をものすごく丁寧に取材されているなぁと感心させられましたし、様々な出来事の伏線の張り方が相変わらず上手いし、とても楽しく読むことができました。お薦めです!! 過去の辻村作品とも微妙にリンクしているので、他の作品を思いだしながら楽しめます。そろそろ辻村作品のリンクのまとめがないとフォローしきれなくなってきた・・・
6投稿日: 2014.05.22誰もいない夜に咲く
桜木紫乃
角川文庫
読み応えのある短編集
非常に読み応えのある七編の短編集です。 どれも重いお話ですが、最後に開放されるという内容でした。 決して明るく楽しいおはなしではありませんが、ジメジメした内容でもなく、最後にちょっと光が差すようなそんな物語なので、読了感は悪くありません。 好感がもてるのはすべての登場人物が絶望しているわけではなく、大成功したわけでもなく、ちょっとした小さな出来事なんだけど、そういうことが大切なんだなぁと感じさせてくれる繊細な描写と構成が気持ちよい作品でした。 直木賞を受賞され、はじめて知った作家さんさんの初読みでしたが、非常に楽しめました。他の作品も読んでみたくなりました。
4投稿日: 2014.05.09怪物
福田和代
集英社文庫
堕ちていく恐怖
文体は女性作家らしくやわらかい感じで読みやすいのですが、内容は怖いです。 ごみ処理施設の研究所員の話がありますが、とても細かい描写だったので気になって調べたら、工学部出身の作者さんだったんですね。描写は細かいですが素人には??ということはなく、物語の中でとても重要な事柄を簡潔にわかりやすく表現されいます。 人間はこうも簡単に悪魔に魂を売れるものなんでしょうか?善 vs 悪 それぞれの怪物が闘い悪が勝つというなんとも後味の悪い終わり方ですが、テンポよく読むことができました。 内容が内容だけに評価が真っ二つにわれそうな作品だと思います。
1投稿日: 2014.04.15思い出のとき修理します2 明日を動かす歯車
谷瑞恵
集英社文庫
あたたかい物語
タイトル通り「思い出のとき修理します」の続編です。 時計師の秀司さんと明里さんのほんわかとした雰囲気と、そこに怪しい(?)お友達の太一くんが何とも言えずいいタイミングでからんできます。時間がゆっくり流れていくので、とても穏やかな気持ちになれる作品です。 すれ違った想い、大切な人とのやり直したい過去などなど・・・少しの思い違いから掛け違えた時間を修復してくれる素敵な時計屋さんがあったらいいなぁ。
4投稿日: 2014.04.06探偵はバーにいる
東直己
早川書房
痛快ハードボイルド
同タイトルで映画化されましたが本作が原本ではありません。ややこしいですが、これはシリーズ第1弾で、映画化されたのは第2弾。 時代設定がかなり古いので、そのあたりを理解してさえいればテンポよく、気持ちよく読めます。 大学の後輩が彼女探しを依頼するところから始まるお話はいつのまに殺人事件に発展して・・・というのが大筋です。 それにしてもお酒飲み過ぎでしょ(笑)
2投稿日: 2014.03.29震度0
横山秀夫
朝日新聞出版
はずれなし!
阪神淡路大震災が発生。時を同じくして刑務課長が失踪!しかもその刑務課長が本部長の秘密を握っていて、刑事部、刑務部、交通部、生活安全部…もろもろの幹部たちが情報戦を繰り広げ・・・警察内部は震度0なのに大揺れというおはなしです。 警察内部のドロドロとした人間関係をこれでもかというくらいに描いた作品です。 登場人物が多く、それぞれの立場、関係を把握するのに時間がかかりますが、そこが理解できればテンポよく進んでいくので、一気に読了「できました。 大震災時の描写は必要かな?とずっと疑問に感じていましたが、読み終わって納得です。こんな大災害の時でも自分が被災していなければ、人間は自分の利益やエゴを優先させるんだなぁと。「最低だ!」と憤りを感じましたが、これが自分だったらと置き換えて考えると、やはり同じなんだなと感じました。物語の舞台は警察ですが、どこにでも起こりそうな派閥争い、人間関係を描いたものです。でもやっぱり正しい人はいて、最後は正しい人が正しい方向に導いてくれます。 ちょっと疲れますがとても面白い作品でした。 横山秀夫作品にはずれはないですね。
3投稿日: 2014.03.22模倣の殺意
中町信
創元推理文庫
この帯は・・・
他の方も仰ってますが私も帯を見て購入した一人です。 よくわかんなかったなぁ。なんで突然こんな話になるの?て感じで。それがトリックだろって言われればそれまでですが、 無理がありすぎるような気がします。 途中、「本を閉じてトリックを見破ってみろ」みたいなことがかかれたページが出てくるのですが、これはやめて欲しい。 せっかく楽しくなってきたところで、こんなこと言われると読むのをやめたくなる。。。
0投稿日: 2014.03.08