nakさんのレビュー
参考にされた数
1594
このユーザーのレビュー
-
完訳 ギリシア・ローマ神話 上
トマス・ブルフィンチ, 大久保博 / 角川文庫
ギリシア・ローマ神話を識る。
12
私のギリシア神話の知識といえば神の祝福という名の元にの淫蕩の限りを尽くすゼウスとそれに嫉妬するヘラ(ヘーラー)による理不尽な仕打ち等、やけに人間臭く迷惑な神様たちだなあというひどく偏った知識と、いくつ…かのギリシア神話の有名な逸話を断片的に知っているという程度です。本書はギリシア神話を深く掘り下げるというよりは広く浅くという感じの本なので、私には丁度良い本でした。
第一章の「はじめに」ではやたらに神々の名前が出てきてますが、とにかく音を伸ばす時に使う"ー(長音符)"が多用されていて、しばらくすれば慣れてきますが、最初はスッと頭に入ってきません。一頁に"ー"を一体何個使っているんだと数えたくなる衝動に駈られました。
もともと系譜図を文章で読むと頭がこんがらがり、また、神々の呼び方も様々で訳が分からなくなるため、ネットでギリシア神話の系譜図や神名対照表を検索して、それを見ながら読みました。
二章以降の個々の具体的な逸話に入ると断然面白くなってきます。
先に広く浅くと書きましたが、一つの説だけでなく複数の説が書かれていたり、後の書物や詩人たちの詩から引用して、どれほど深く根付き、影響を与えているかを補足していたりと、大事な部分はしっかりと抑えているように感じました。
カラーではありませんが、挿絵代わりにギリシア・ローマ神話を題材にした絵画や彫刻などが入っています。表紙絵は何故かコミカルな絵になっていますが、中身は非常に真面目な内容です。ギリシア・ローマ神話の知識を深める上で良いとっかかりになると思います。 続きを読む投稿日:2014.11.04
-
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘II」
香月美夜, 椎名優 / TOブックス
いよいよ本格的な紙作りの開始です。
12
ルッツの就職活動もかねて、紙作り(和紙)に取り組み始めます。本に関連する知識とおかんアートには異常に詳しいマインです。紙の作り方も知識はある!と言いたいところですが、紙を作るための道具がない。道具を作…るための道具がない。その道具を買うために先立つものがない!ないないづくしから始まりです。それでも本のために頑張ります。とりあえず道具を作るための釘を手に入れるため、オットーさんに頼りますが...。マインの世界が広がって、大きく動き始めます。
そして巻末のに書下ろしが2本。コリンナ視点のオットーとの出会いと、エーファ視点の家族の話です。どちらのお話もプロポーズにちなんだお話でまとめてます。特にエーファのギュンター話が面白かったです。予想以上に面白い奴でした。
あと、イラストについて一言。ネットで読んでいる作品が書籍化すると、もともと全て想像で補って、がっちりと固まってしまっている頭の中のイメージと、書籍販売となってついてくるイラストのイメージと全く合わず、絶望感にさいなまれることが多い中、この作品のイラストは自分の想像以上で良かったです。
今巻の表紙イラストも1巻と同じくらいお気に入り。ちょっとおしゃまなマインの表情が可愛いです。 続きを読む投稿日:2015.03.28
-
新釈 走れメロス 他四篇
森見登美彦 / 角川文庫
森見登美彦の新釈。
12
・山月記(中島敦)
・藪の中(芥川龍之介)
・走れメロス(太宰治)
・桜の森の満開の下(坂口安吾)
・百物語(森鴎外)
以上、五編を下書きに、森見登美彦お得意の現代京都の大学生を登場人物に置き換えて…物語を再構築しています。
完全に悪ふざけでノリノリの「走れメロス」を含め、元になった作品との対比を楽しめました。個人的には「桜の森の満開の下」は「新釈」として美しく仕上がっていて、お気に入りです。
...それにしても「走れメロス」は酷かったw
森鴎外の「百物語」は読んだことなかったので、青空文庫で読んでみました。「百物語」と言えば怖い話が終わったら蝋燭を一本ずつ消していき、最後の一本を消したら・・・。という物語だと思っていましたが、全然違うんですね。それにしてもこんなグダグダとしたつまらない話(失礼)でよく書いたなあと感心してしまいました。
元になった作品を読んだことがない人でも単独で十分楽しめますし、本作を読んだ後からでも、元になった作品を読む良いきっかけになるのではないでしょうか?だいぶハードルは下がると思います。 続きを読む投稿日:2015.08.27
-
プレミアムヘッドホンガイドマガジン (2014Edition)
音元出版 / 音元出版
イヤホン、ヘッドホンを購入する前に一度目を通す価値あり
11
たくさんの種類のイヤホン、ヘッドホンが紹介されています。
ただ多いだけでなく、それぞれのメーカーのこだわり等も実際の製作者との対談を通して紹介されている記事もあったりして、一つ一つ丁寧に解説されてお…り、好印象です。
音については実際に試聴してみるしかありませんが、この雑誌の巻末には小さいですが実に500種類のイヤホン、ヘッドホンの音質傾向と、どのジャンル向きかを星印で評価した一覧で載っていますので、どれを試聴してみたいか、ある程度この雑誌で絞ることはできそうです。
続きを読む投稿日:2013.12.27
-
きまぐれロボット
星新一 / 角川文庫
まだまだ星新一初心者の私
11
星新一作品を読むのはこれが二冊目です。一冊目に読んだ「地球から来た男」は大体一話8000文字程度で比較的しっかりとしたお話が多かったのに対して、今巻は2000文字くらいで一話5分とかからない小噺といっ…た感じのお話が35編収録されています。本書に収録されているお話は強欲、傲慢といった人の性や価値観の違いを諭すような訓話的なお話が多いように感じました。
それにしても星新一の文章は面白い。例えば...
「こんなものでは、しょうがないな。捨てるにもしゃくだが、古道具屋に持っていっても、そうは高くは買ってくれないだろう。ひとつ、なかを調べてみるとするか」
...カギ括弧で囲った登場人物のセリフです。なんて説明的で丁寧なセリフなんでしょう。この一文だけ見たら小説家として赤点ものですが、地の文も含めて終始こんな感じです。それが勤勉で根気強い悪人、友好的で知識を与えたがる宇宙人、余計な気を利かせる天才博士等といったどこかとぼけた登場人物と相まって、何故か笑いがじわじわこみあげてくるから不思議です。流石に話の数が多いだけにある程度パターン化しているところもありますが、もはや様式美と言うべきですね。
まとまった時間で一気読みするより、すき間時間で一話、二話と読むのに向いてます。 続きを読む投稿日:2014.10.12
-
アルスラーン戦記(3)
荒川弘, 田中芳樹 / 別冊少年マガジン
ファランギースの登場!そこの絶世の美女!(笑)
10
アルスラーン戦記に限らず田中芳樹作の作品の面白さの一つにキャラクター同士の掛け合いにあると思いますが、なかでもファランギースとキーヴのやりとりは特に大好きです。超クールなファランギースのキーヴに対する…つれなさが笑いを誘います。
そして今巻の表紙絵のナルサスです。あらゆる可能性を考慮し、そのすべてにおいて自分たちに有利に誘導する策略を巡らすナルサスの凄さの片鱗が見え始めます。
今巻で最初期のメンバーであるダリューン、ナルサス、エラム、キーヴ、ファランギースが揃い踏みです。改めて見ると一騎当千、天才策略家、弓の達人×2といずれも超絶技巧の持ち主たち。これから続々と合流するメンバーたちも彼らに劣らぬ達人達で、アルスラーン陣営が優秀過ぎてちょっとチートです。
それにしても焚書のシーンでの「財貨を奪うというならまだしも文化を焼き尽くすとはな」のナルサスのひと言には物語と分かっていても心が軋みますね。
続きを読む投稿日:2015.02.14