
味いちもんめ~にっぽん食紀行~(1)
倉田よしみ,あべ善太,福田幸江
ビッグスペリオール
面白いんだけど
どうして独立編を完結させないうちに「にっぽん食紀行」を出すんだろう。 物語は繋がっているんだから途中の話が分からないと意味が無いだろうに。 面白さ自体は☆5。でも小学館の(?)配信が悪いので☆3つです。
0投稿日: 2014.03.23
空飛ぶタイヤ(上)
池井戸潤
講談社文庫
現実は小説のようにはいかない
「半沢直樹」シリーズの池井戸潤が書いた長編小説。 三菱ふそうのリコール隠し事件を題材とした話で、主人公は事故を起こしたトラック運送会社の社長。この社長のキャラクターが実に良い味で物語に深みを与えている。 主人公、赤松が経営する赤松運送のトレーラーから走行中突然タイヤが外れ、そのタイヤが歩行中の女性に激突、女性は即死した。事故は赤松運送の整備不良と決めつけられるが、整備を担当した社員の仕事ぶりを確認して、これは整備不良では無いと赤松は確信、トレーラー製造元のホープ自動車は赤松運送の整備不良と断定するが、、、 不審を持った赤松の元にホープ自動車自体のリコール隠しが原因という情報がもたらされ、赤松はホープ自動車、取引銀行のホープ銀行、赤松がPTA会長を務める小学校のPTAなどと戦いつつ、真相を探っていく、と言う話。 物語では池井戸潤お得意の大逆転によりカタルシスのある物語となっている。読み応えもあり大変面白い。 ただ、この物語の題材となった現実の運送会社は赤松運送よりもっと零細な会社で、「人殺し」などの中傷ビラが貼られ、無言電話などの嫌がらせが続いて廃業に追い込まれている。 また、被害者の弁護士は原告に無断で損害賠償金額を引き上げた訴訟を起こし、500万の損害賠償金額を一切原告側に渡さず、横浜弁護士会から懲戒処分を受けている。 現実は小説より醜い。
38投稿日: 2014.03.18
県庁おもてなし課
有川浩
角川文庫
むしろビジネス書として読んで欲しい
ストーリーの流れそのものはいつもの有川調。好き嫌いはあるけど普通に面白いと思って良い。この本のポイントは「観光とはなんのためにあるのか」「なぜ『お役所主導』の観光はほとんど失敗するのか」を明確に示したところにあると思う。また、飲食産業、宿泊業に携わっている人には是非読んで欲しい。水回りの大切さを本当に分かっていますか?
2投稿日: 2013.12.13
パンゲアの娘 KUNIE(1)
ゆうきまさみ
少年サンデー
打ち切り作品だけど
ゆうきまさみがメジャーデビューしてから唯一打ち切りになった作品です。 確かに終わりまでの時点ではそれまでの少年サンデー掲載作品(「究極超人あ~る」「機動警察パトレイバー」「じゃじゃ馬☆グルーミンアップ」)に比べると落ちる感じがしますが、これから面白くなりそうと言うところで打ち切られた感じがあります。 こう言う作品を打ち切りにするからこそ、現在週刊少年サンデーは廃刊寸前まで低迷しているのだと思います。
1投稿日: 2013.11.22
きりきり亭主人 1
きくち正太
別冊漫画ゴラク
蘊蓄と下ネタは仕様です
「おせん」のきくち正太の作品ですが、「おせん」よりさらにエロ寄りの作品です。 本作は「きりきり亭のぶら雲先生」の続編で、まだ電子化はされていないですが前シリーズも面白いです。 このシリーズでは個人的にはスピンアウトの「壺中堂二代目主人物語 天上の眼」が一番面白いと思いますが、これも残念ながら電子化されていません。早く出ないかな?
0投稿日: 2013.11.22
江戸前の旬 1
九十九森,さとう輝
漫画ゴラク
昭和の香りが気にならなければお薦め
舞台は平成で連載開始も平成なのですが、昭和の香りがぷんぷんとする、そういう漫画です。 例えるならよく熟成されたぬか床で作ったぬか漬けとか、余計な混じりもののないきりっと酸っぱい梅干しとかそういう感じ。 コンビニでよく総集編を売ってますので見かけた人も多いと思います。
1投稿日: 2013.11.15
大江戸仙境録
石川英輔
講談社文庫
江戸後期を生き生きと描いた傑作
突然転時能力を身につけた科学評論家が江戸と東京で二重生活をするというタイムスリップもの。 江戸時代に関して極めて綿密な考証を行っており、時代と人を生き生きと描いている。 本書は2作目なので第1作の「大江戸神仙伝」から読み始めて欲しいが、本書から読み始めても十分面白い。 特に終盤クライマックスの虫垂炎手術の描写はマンガ「JIN-仁-」もしのぐ出来。このシリーズ中では最も面白いので本書にレビューした。
1投稿日: 2013.10.18
ガリア戦記
カエサル,近山金次
岩波文庫
紀行文の名作だが
古代ローマ史に興味がある人は必読の本。可能であれば原文で読みたい(原文は半分読んで挫折しましたw)。 内容は極めて面白いのだが、いかんせん翻訳はいまいち。生きた文章として読ませるための本ではなく、ローマ史研究の学術書として本書が書かれているためだろうが、無用に注釈が多く、読み疲れる。第7巻のウエルキンゲトリクス主導の全ガリア反乱が本書の山場なのでここは是非読んで欲しい。
0投稿日: 2013.10.18
海の底
有川浩
角川文庫
ディテールの甘さは目立つが快作
巨大甲殻類に横須賀が襲われると言う設定で潜水艦内に隔離された子供たちと自衛艦の葛藤、初期対処を委ねられた警察の苦慮を描いた話。 デビュー2年目の若手の小説とは思えないぐらい、ストーリー展開力も筆力も高いので一気に引き込まれます。現在作者が日本有数の人気作家になったのもうなずける作品です。 ただ、この作者の作品すべてにおいてそうですが、作者が興味の無い部分にはディテールが甘いです。30代の警視正が県警本部長の発言を一笑に付したシーンは唖然としました。作者お得意の自衛隊ものなら2佐が将補にため口を聞くようなもので現実にはあり得ません。
1投稿日: 2013.10.18
世界史の中の日本 本当は何がすごいのか
田中英道
扶桑社BOOKS
検証性に乏しすぎる
「日本の歴史 本当は何がすごいのか」に比べれば単なる歴史の羅列ではなく歴史事象に対する著者の解釈を明確に打ち出しており、幾分ましです。 ですが、解釈がかなり一方的で検証性に乏しいというのが問題です。例えば元寇に関して「二度の勝利は元軍の組織力を日本の組織力が上回っていたから勝利した」という論調で書かれていますが、それを示唆する文献などは一切論じられていません。著者の専門である美術史に関しても別の本ですが引用文献なく「写楽=北斎」と断定しているなど(これは現時点では別の説の方が有力です)、基本的な検証態度という姿勢に欠けていますので「眉につばを付けて読むべき」本です。
2投稿日: 2013.10.18
