
アイの物語
山本弘
角川文庫
ロボットは人間を殺せるのか?SF永遠のテーマに対する納得解の一つ
ロボットは人間を殺せるのか?SF永遠のテーマに対する、非常に納得感のある解を読ませていただきました。名作です。人類によるロボットやAI開発の歴史を未来から振り返るカタチで物語化していますが、すごく納得感があります。「介護ロボット」需要からヒト型ロボットが始まった。ヒトとの会話の積み重ねでAI(人工知能)がブレークスルーして意識が芽生えた。って確かにそうかもと思いました。アシモフ等の偉大な先人の功績を押さえていて巖かなく読める上に、作者独自の人とロボットの共生のイメージが共感できる作品でした。
4投稿日: 2015.11.30
竹取物語
星新一
角川文庫
改めて凄いSFだ!竹取物語は
竹取物語、通しで読んだのは初めてだが。正直読む前はちょっとなめていた。が、星新一が凄いのか、それとも原作者(不詳だが)が凄いのか、この本で読む竹取物語は、SFとしても凄いじゃないか。1000年前にこれ考えたって、どれだけの想像力?もしかしたら本当に宇宙人やUFOが平安時代に来てたんじゃないか、そうでなければこんなの書けないのでは?と思わせるほどのSF作品です。私はジブリのかぐや姫の物語よりこの本の方が好きです。
5投稿日: 2015.11.30
月夜の島渡り
恒川光太郎
角川ホラー文庫
沖縄の不思議な物語集
私の好きな作家さんの、沖縄怪談短編集。沖縄ならではの、亜熱帯の湿気の多い空気、離島の人気のない海岸やジャングル。未だどこかにあるかもしれない死人の魂とリンクする風習、くりかえされる生まれ変わりの伝説。この作品は、これらを今の自分に関係ない伝説としてではなく、今の沖縄の生活や自然の中を舞台に書いてくれています、もし自分が沖縄にいったら同じ体験をしてしまうかもしれない、そう思わせてくれるのが新鮮。恐怖ではありません。どちらかと言えば切ない気持です。もしかしたら遠野物語を現代の人を主人公にして沖縄を舞台に書いたらこんな感じかもしれません。最終話「私はフーイー」の最後のシーンが、すごく心に響く作品でした。
8投稿日: 2015.11.30
グラスホッパー
伊坂幸太郎
角川文庫
最後の最後で全て
殺し屋というのは、確かに個性的に違いない。この作品に出てくる3人の最凶の殺し屋は、それぞれ私には全く理解できない思考形態、行動指針。とうてい理解できない彼らのセリフや行動に読んでるこっちの頭が痛くなりそう。それぞれが超一流の3人の殺し屋それぞれの殺しの特徴にフォーカスが当たり、読者にそれぞれが最凶であるとの思いをいだかせてくれる。では3人が殺しあうと誰が強いのか?それはなぜか?最後の最後で全ての謎が紐解かれて腹落ちする。
5投稿日: 2015.11.30
キネマの神様
原田マハ
文春文庫
あの映画の感動を文字で表現すると、こういうこと。
あの名作映画の魅力をどう文字で表現するか、その映画論評バトルが題材の小説。もし未だこの映画を見たことがなければ、読む前に3つだけは見ておいた方がよい。「ニューシネマパラダイス」「フィールドオブドリームス」「父親たちの星条旗・硫黄島からの手紙」。登場するのはこれらの映画だけでないけど、この3本ですごく納得感のある、心あたたまる映画談議が交わされます。映画のあのシーンが脳内に蘇り、一人で見てた時よりももっと心をゆさぶってもう一度味わえる。この本はそんな作品です。しかし原田マハさん、二人の全く生い立ちの異なる映画人になりきって、1つの作品を別の視点から論じて破綻しないどころか、それぞれに納得感を持たせるのはさすがです。ご本人がよほどこれらの作品が好きなのかと思いました。大学のころ行った名画座に行って、二本立てに浸りたくなりますよ。
5投稿日: 2015.11.02
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(14)
安彦良和,矢立肇,富野由悠季,大河原邦男
角川コミックス・エース
マ・クベ登場。最初から壺好き
マ・クベ地球降臨の前段が詳細に語られる。最初から壺好きでマ・クベらしさ全開。宇宙で、地球で、ジオンの猛攻が加速的に進む。一方で遂に地球連邦の新モビルスーツ開発「V作戦」をジオンが嗅ぎ付けた!TV版冒頭シーンにつながる指令がシャアに出る。
6投稿日: 2015.11.02
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(13)
安彦良和,矢立肇,富野由悠季,大河原邦男
角川コミックス・エース
渋い!黒い3連星仕様のザク。同時に赤いザクも誕生
TV版イントロで毎回流れるスペースコロニー落としの詳細が詳らかになる、必読の巻。黒い3連星仕様のザクが完成。これは渋すぎる。同時にシャア専用の赤いザクも誕生。つい最近SNS上で、過去に戻れたら赤ちゃん時代のヒットラーを殺すべきかという議論を見たが、今赤ちゃん時代のギレンがいたら殺すべきか?という命題を抱かせる衝撃のストーリー。人類が自らの行いに恐怖するのも当然かと。
7投稿日: 2015.11.02
悪夢喰らい
夢枕獏
角川文庫
夢枕獏の魅力が凝縮された短編集(チョイネタバレ注意)
夢枕獏さんと言えば、伝奇・山岳・SFですが、この短編集はその魅力がギュ~と凝縮された感じです。作家の得意分野が全部楽しめます。一つ一つの作品は短いですが、核心部分を外さないのはこれらの道に熟達している夢枕さんならでは。冬季山岳地帯でおこる不思議な体験はまるでシックスセンス。次元間を移動できるか?生還はそれ次第って、怖すぎる。ジョギング中に連続して起こる突然死。それは霊のせい?楽しんでください。
4投稿日: 2015.10.19
かのこちゃんとマドレーヌ夫人
万城目学
角川文庫
さすがの直木賞候補作。暖かいだけでない、喪失と成長の物語。
私は本当に万城目作品が好きだとわかりました。この本は比較的短く数時間で読み切れますが、その中にこれだけ贅沢で不思議な物語を入れ込んでくるのは万城目さん、すごいです。人の言葉を理解するネコと一緒に暮らす女の子。2人をとりまく家族と犬とそれぞれの友達。登場人物(動物)はこれだけで、かつ強烈な事件が起こるわけではありません。が、2人の日常がすごく不思議な視点で新鮮に描かれています。万城目さんによって不思議ワールドに自然に引き込まれていく感覚が、本当にクセになります。女の子の成長にゆっくりとつきあい、避けられない別れや喪失に読み手として一緒に向き合うことで、普段は意識しない自分の心の隠れた部分が味わえます。暖かくも切ない名作でした。
8投稿日: 2015.10.19
史上最強の内閣
室積光
小学館
対北朝鮮・中韓に対する鮮烈で戦略的なかけひき
題材は政治外交ですが、中身は娯楽小説なので、肩の力を抜いて楽しめます。でも題材は本格的。上梓の2013年当時に直面していた、東アジアの外交状況をパロディー風に的確に反映しているので非常に現実感と危機感を持って読めます。国内も、民主党と自民党の二世議員を中心とした政府への頼りなさを納得感ある表現で描き切って納得感満載です。この作者さんが、今2015年の安保法案を題材に書いたらどんな小説になるのか、非常に興味があります。ちょとだけ作中のセリフを引用しますが、最強の総理のセリフ「この国にはサザエさんがある限り戦争は絶対ない」に、日本国民への信頼が増します。なぜそうなのかは是非手にとって読んでみてください。面白くもいろいろ考えさせられる、まさに今読むべきエンタテインメント小説です。
6投稿日: 2015.09.28
