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スカイフィッシュさんのレビュー
いいね!された数778
  • 神への長い道

    神への長い道

    小松左京

    角川文庫

    小松左京が「自分の作品で一番好き」というだけある

    解説によれば「神への長い道」は小松左京自身が自分のSFで一番好きと語っていたそう。確かに「神」という概念をこのような発想で書いた作品は、他に記憶になく新鮮。神とは何か?宇宙とは何か?というSFファンが大好きな設問への1つの新鮮な答えがあります。小松左京が考える「人類」の進化と未来には共感できる点もそうでない点もありましたが、それを含めて彼の人類という種や地球そのものへの愛を感じる作品だと思います。

    7
    投稿日: 2016.01.05
  • 黄金宮1 勃起仏編

    黄金宮1 勃起仏編

    夢枕獏

    講談社文庫

    夢枕獏さんが「胸をときめかせたあらゆる要素を含んだ物語」

    あとがきで夢枕獏さん自身が「ぼくが胸をときめかせたあらゆる要素を含んだ物語」を試しみたとコメントしているくらい、私も胸をときめかされる好きな要素が満載の本書。密教の裏歴史「裏密」、世間の目から閉ざされてきた秘仏「勃起仏」、アフリカの奥地に実在する「秘教」、「気功」を操る武術、そして「密林の奥の黄金宮」。ソロモン王の洞窟にインスパイアされたという本書は、非常に贅沢な伝奇物語ですね。

    4
    投稿日: 2015.12.29
  • 獣の奏者 全5冊合本版

    獣の奏者 全5冊合本版

    上橋菜穂子

    講談社文庫

    これは新ジャンル!空想生物の生態ミステリー

    「王獣」と呼ばれる白く巨大な鷲のような動物。「闘蛇」と呼ばれる巨大な蛇のような生物。はるか昔、両者が戦い世界が滅んだ歴史があった。今は時の霧のかなたにかすんでもう分からない滅びの謎。その謎を親子が世代を跨いで紐解いていく過程。これは新ジャンル!と思いました。生物の生態の謎を解き明かしていくのがこんなに面白いとは!敢えて生態を隠してきた謎の民のような伝奇的な仕掛けもあり、「ファンタジー」「生態ミステリー」「伝奇」の要素が贅沢に織り込まれた名作です・

    5
    投稿日: 2015.12.28
  • BLUE GIANT(7)

    BLUE GIANT(7)

    石塚真一

    ビッグコミック

    痛烈な一撃を食らう巻

    この巻はピアニスト雪祈が主役。自信家でちょっとスカシた上から目線の彼に、痛烈な一撃!そのシーンが読み終わった後も繰り返して思い出され、心臓に悪い巻です。 人事ながらショック。

    4
    投稿日: 2015.12.28
  • 戻り川心中

    戻り川心中

    連城三紀彦

    光文社文庫

    大正~昭和初期の風俗描写のリアルさ。そこで出会うミステリーの見事なこと

    大正~昭和初期の日本が日本らしいのどかさと猥雑さを持っていたであろう、その時代の暮らしや街並みが見事に文字で再現されています。ちょっと時代は違いますが、目の前にAlways三丁目の夕日の風景が広がる、もしくは横浜ラーメン博物館のジオラマの中にいるような素晴らしい描写です。そしてその中で起こるミステリー。その謎解きがまた見事。どんでん返しの連続ながら、それでいて全てが収まるところに収まっている腑に落ち感。風景が目にうかぶような文学表現とミステリーとしての完成度の高さが両立した素晴らしい作品です。

    3
    投稿日: 2015.12.14
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    村上春樹

    文春文庫

    どこに絞ってレビューを書くか、迷う程の面白い作品

    一気読みさせてくれるのは、16年前の人生最大の謎ときの旅が面白いから。前向きな気持ちになるのは、登場人物がちゃんと生きようとしていることが伝わるから。切ない気持になるのは、二度と会えない友達を思い出すから。やりきれない気持ちになるのはもう元に戻れないことがあるのを知っているから。わずか数百ページで自分の人生のいろいろな思い出や気持ちを、次々と引き出してくれる、それをこれだけ読みやすく面白く書いてくれている、すごい作品です。

    15
    投稿日: 2015.12.07
  • 完璧な涙

    完璧な涙

    神林長平

    ハヤカワ文庫JA

    あらゆる過去・未来へと追跡してくる殺戮マシーン

    絶対にあきらめず、過去へ・未来へと幾多の時空を超えて主人公を追跡し、殺戮完了を成し遂げる戦車。そんじょそこらの武器では傷さえ与えられない。こんなマシーンに個人的にロックオンされてしまったら、どう逃げ切るの?主人公が次々と転送されて逃避する地球の幾多の時空間。その都市や生活の多様な描写が素晴らしく、作家さんの想像力の豊かさを感じさせてくれます。そんな多様な世界を貫き、常に主人公をロックオンし続ける殺戮戦車。感情のない主人公が転送と戦闘を繰り返して最後にどうなるのか?いろんな楽しみのある作品でした。

    5
    投稿日: 2015.12.07
  • アンゴルモア 元寇合戦記(1)

    アンゴルモア 元寇合戦記(1)

    たかぎ七彦

    ヤングエース

    元の侵攻・蹂躙に対する対馬武士の強烈な反抗!

    元寇って、福岡近辺で土塁を築いて戦い、そのうちに神風が吹いて助かった。というのが歴史教科書で1~2行書かれていた私の知っている歴史。その前哨として壱岐や対馬が侵攻・蹂躙されていたとは。確かに教科書の元軍の侵攻地図にも、壱岐・対馬を経て福岡近辺に到達していたような図柄を見たような気はする。でも、その実態がここまで圧倒的な力と数の暴力だったとは、このマンガを読んで初めて教科書の文字が真実味を帯びて伝わった。とことん蹂躙される島民。侵攻されるというのは、昔はこういうことだろうが、その惨さと恐怖はリアル。対馬の守護、在来武士、島外の武士が、反抗していくその過程と血と肉の画。教科書の2行の行間を初めて実感できた気がしました。オススメ作品です。

    7
    投稿日: 2015.12.01
  • 夢幻の如く 第1巻

    夢幻の如く 第1巻

    本宮ひろ志

    サード・ライン

    信長は生きていた!次の野望はユーラーシア大陸征服

    信長が生きていた!日本統一にはもう飽きて、次はユーラーシア征服に乗り出す。このテーマだけで興味をそそられました。たまたま半額?キャンペーンをやっていたのでまとめて購入。世界の王のだれよりも男として、将として信長が上となっている設定はちょっとやり過ぎ感はあるものの、そこは信長。もしかしたら?と思わせてくれる可能性を許容する歴史上の人物って彼くらいなのでしょう。日本人が世界征服に挑む!という他にはあまりみたことないテーマに正面から挑んだ痛快なエンタテインメントでした。

    1
    投稿日: 2015.12.01
  • 果しなき流れの果に

    果しなき流れの果に

    小松左京

    角川文庫

    宇宙と時空間の全てを認識したいなら、これを読め!

    小松左京が「宇宙と時間の構造」と「ヒトの認識の革新」に真正面から取り組んだ名作。さすが、過去に日本SFのNO.1作品に複数回選書されただけある読み応えです。SFファンなら、この宇宙はどうなっているのか、宇宙の外には何があるのか、時間とは何なのか、ヒトはどこまで宇宙の真理を認識できるのか、といったテーマに興味はつきないと思いますが、これらの読者の興味にストレートに応えてくれるこの作品は貴重です。まさに、これが欲しかった!というど真ん中にズシンとくるSFです。数十億年に及ぶ時空間モノとしてはアシモフの「永遠の終わり」がありますが、この作品は宇宙の構造を解き明かすという点でスケールでは相当上を行ってると思いました。

    7
    投稿日: 2015.12.01