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ryunicoさんのレビュー
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  • インディゴの夜

    インディゴの夜

    加藤実秋

    集英社文庫

    軽いタッチで読める連作ミステリー

    渋谷にあるちょっと毛色の変わったホストクラブ『club indigo』。 店のコンセプトは「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブ」。 主人公・高原晶は、このホストクラブのオーナーとフリーライターという二つの顔も持っています。 『club indigo』に飛び込んでくる事件を、晶やホストたちが渋谷を奔走して解決する連作短編集です。 はっきり言って、謎解きという面だけ採り上げればこれよりも面白い作品は色々あると思います。 でも主人公・晶を初め、クラブのホストたちや馴染みのおかまママ、そしてライバル店のホストなど、登場人物のキャラクターが立っていて、活きがいい。 なので、このシリーズはキャラが気に入った人はずるずるはまってしまうでしょう。

    0
    投稿日: 2014.04.05
  • ペーパーウエイト アイ 1

    さかもと麻乃, 田沢孔治

    ペーパーウエイト アイ 1

    さかもと麻乃,田沢孔治

    MFコミックス フラッパーシリーズ

    1巻と2巻がまるで別の物語

    人形に対して生理的恐怖を抱く人にとって、この物語は紛うことなきホラーです。 ただ、そういった恐ろしさは1巻だけ。 1巻の襲いくる自作人形にドキドキしながら2巻へ進んだら、物語が急角度で旋回して全然違う方向へ走り去っていきました。 (例えるなら『エクソシスト』のつもりで見始めたのに、終盤『2001年宇宙の旅』になってた……くらいの方向転換。) 全2巻という尺の都合なのか、起承転結の「転」が予想以上の効果を発揮したため、物語においていかれた感が否めないタイトルでした。

    0
    投稿日: 2014.03.30
  • 探偵・日暮旅人の探し物

    探偵・日暮旅人の探し物

    山口幸三郎

    メディアワークス文庫

    (ミステリー+現代ファンタジー+ほの甘い恋愛もの)÷3=……

    『日暮旅人』シリーズの第1弾です。 探偵事務所を営む日暮旅人とその娘の灯衣、そして灯衣が通う保育園の保育士・山川陽子がメインキャラクターになります。 一風どころか二風も三風も変わった旅人に、いくつかの事件を通じて陽子が近づいていくわけですが、最初純粋にミステリー連作短編集だと思って手に取ったため、「どれもちょっと事件が弱いかな……」と若干消化不良感を抱きました。 ただ、最後まで読んでみたら思わぬ伏線が回収され、けっこう驚きました。 これを純粋な探偵ものとして読むと、肩すかしを食らうかもしれません。 なぜなら、日暮旅人というキャラクターがかなり現実離れした設定だからです。 しかしこのキャラクター設定を飲み込むことができれば、先に続く物語ががぜん気になりだします。 ほのぼの日常系かと思うと、たまに仄暗い短編も混じってきたりと、シリーズ構成もくるくるとカードが回るように色を変えます。 「なぜ旅人がこんなことになってしまったのか」が気になったら、もう作者の術中にはまったも同然。 そんなシリーズです。

    8
    投稿日: 2014.03.30
  • 黄金の川岸~坂の上の魔法使い3~【電子限定版】

    明治カナ子

    黄金の川岸~坂の上の魔法使い3~【電子限定版】

    明治カナ子

    HertZ&CRAFT

    そして大団円

    『坂の上の魔法使い』シリーズ完結編です。 魔法使いリーと、リーの使役であったリリドの対決が3巻の一つの見せ場に違いありませんが、 本当の山場はリーと亡き王カヌロスの和解および永遠の離別でしょう。 このシーンは何度読んでもじんわりと心に響きます。 ここできちんと物語がまとまるので、後半に語られるラベル成長後の物語がより爽やかに映るのだと思います。 長すぎず短すぎず、端正に語られる良質ファンタジーです。 それにしても、シュールな造形にも関わらず、ページが進むごとに可愛らしさの増すラベルの使役に目が釘付けです。 遂に電子書籍版には(紙媒体には収録されていない)使役主人公の短編が収録されるに至りましたよ。

    0
    投稿日: 2014.03.30
  • バベルハイムの商人 2巻

    バベルハイムの商人 2巻

    古海鐘一

    月刊コミックブレイド

    重要ライバルキャラ登場

    1巻で運命金貨がつなぐ悪魔や妖精の交易世界を説明された「バベルハイム」の世界ですが、 2巻ではユージンのライバルであるメフィストフェレスが登場。 両者の対立とキーアイテムである「ガラスの柩の男」の紹介がメインとなります。 この作者さんは描き込むと半端ないので、2巻の背景の白さは若干気になるところ。 演出としての白なのか、タイムアップゆえの白なのか……。

    0
    投稿日: 2014.03.29
  • 無二の王~坂の上の魔法使い2~

    明治カナ子

    無二の王~坂の上の魔法使い2~

    明治カナ子

    HertZ&CRAFT

    魔法使いの真実

    リーとラベルという子弟の日常から、話は一気に過去へ飛び、ラベルの父たる亡きセロハン王の幼少期とリーのエピソードになります。 ここにきて「ああ、そういえばBLレーベルだったな」と思う流れになりますが、あくまでプラトニックなもので直接的描写はありません。 むしろ、魔法使いがセロハン王家にとってどのような存在だったのか、最後の王が描かれる巻です。 ますます広がる世界観と、その中心でもがく人々の悲哀が印象的な2巻です。

    0
    投稿日: 2014.03.29
  • 25時のバカンス 市川春子作品集II

    25時のバカンス 市川春子作品集II

    市川春子

    アフタヌーン

    エロチックでグロテスク、それが魅力

    底力が半端ない作家さんだと思いますが、その分作風の好き嫌いがはっきり分かれるタイプだとも思います。 全部で3つの話が収録されていますが、日常に混じる異種が光るSFですね。 物語としてはほっこりいい話に見えて、絵面がどぎつい「月の葬式」。 そしてオチの数ページを三往復くらい見返してしまった「パンドラにて」。 物語展開が好みであろうとなかろうと、問答無用にズガッと心へ切り込んでくる短編集でした。

    2
    投稿日: 2014.03.25
  • 蜜の島(1)

    蜜の島(1)

    小池ノクト

    モーニング・ツー

    民俗学+孤島クローズドサークル……といった感触

    太平洋戦争終戦直後を舞台とした、クローズドサークルものミステリーです。 地図にもない孤島・石津島を舞台に、復員兵・南雲と内務省の役人・瀬里沢が事件に巻き込まれていく展開です。 定期便もない(=外部との定期的連絡手段なし)で事件が起こるあたりは典型的クローズドサークルミステリーですが、この物語の真の求心力はむしろ「石津島の常識≠本土の常識」な点。 一見にこやかで人懐っこい島民たちが、実は日本語は通じながらも意思疎通の難しい相手だと気づいた時の絶望感が半端ないです。 横溝ミステリー好きなどにもお勧めできるタイトルでは。

    6
    投稿日: 2014.03.25
  • メテオ・メトセラ(11)

    メテオ・メトセラ(11)

    尾崎かおり

    ウィングス

    もっとメジャーになっていい作品

    正直、試しに1巻だけ読んだ時は、「わりとベタだな」という感想でした。 ただネームからしっかり伏線がひかれている感ムンムンだったので、続いて2&3巻を買ったら、すっかりドツボにはまりました。 懐かしさすら感じさせる少女マンガテンポで軽快に進む一方、基本シナリオは重いです。 また、レインとマチカの敵役として登場するキャラも、みんな過去に深い絶望を経験しているため、純粋な悪役ポジションに立つキャラはほとんどいません。 そして(私自身はもっと突き抜けてもOKなものの、多分掲載誌や漫画ジャンル的には)この上ない大団円を迎えたタイトルでした。 絵柄もこなれてるし、アクションシーンの描写も上手い。 作者もこのタイトルももっとメジャーになってしかるべきだと思うのですが……。 泣きながらも猪突猛進に前に進む女の子と、ヘタレかと見まごう程包容力のある男の物語です。 それらのワードにピンとくる方はサンプルを読んでみてください。

    1
    投稿日: 2014.02.15
  • 年下の男の子

    年下の男の子

    五十嵐貴久

    実業之日本社文庫

    さらっと読める恋愛小説

    37歳の女性課長補佐と、23歳の取引先の契約社員による年の差ラブストーリーです。 この女性課長補佐の一人称で物語は進みますが、恋愛に関してかなりテンション低い上に、相手が一回り以上年下とあって全体的に及び腰です。 あまりに及び腰な描写がたびたび出てきてちょっとイラっとしましたが、 ほどよく仕事の場面も出てきて、全体のバランスがいいです。 さらっと読めるハッピーエンドの恋愛ものを探している方にお勧めします。

    1
    投稿日: 2014.02.15