
ウォッチメイカー 下
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
児玉清さんの解説に注目
やけにトントン拍子に犯人を追い詰めていくなぁと思っていたら、やはりそんなんで終わるわけがないですよね。なんたってディーヴァーですから。途中で事件解決となってても充分面白いし、どんでん返しもちゃんと盛り込まれていて、おそらく多くの作家はここで終わりなんだろうな。ディーヴァーの場合、そこからが真骨頂。後半の犯人との知恵比べはシリーズ最高の戦いだろう。児玉清さんの解説も面白くて、お陰で英文の翻訳の妙というものが垣間見れた。
0投稿日: 2016.05.08
博士の愛した数式
小川洋子
新潮社
こんな先生に出会いたかった
ほのぼのとした読後感がいい。この博士のキャラが面白い。なんたって、記憶が80分しか持たないんだから。これだけで掟上今日子を上回っている。こよなく素数を愛し、阪神の江夏豊が好きで、子どものことが大好きで、どんな言葉も瞬時に逆さまに言い換えられる特技があって・・・などなど。博士と一緒にいたら難しい数学も楽しくなれそう。家政婦さんのように目にする数字を片っ端から素因数分解したくなる気持ち、すっごいわかる。
1投稿日: 2016.05.08
傭兵代理店
渡辺裕之
祥伝社文庫
警察小説と戦争アクションをミックスした贅沢な作品
新シリーズの方を先に読んでわりとハマってしまい、旧シリーズの一作目から追っかけで読み始めた。新シリーズを読む中で、どんないきさつがあったんだろうと疑問に感じていたことがどんどん氷解していくので、スッキリした読後感。順序が逆でも全く問題なし。今回は警察小説のようなサスペンスと傭兵部隊の戦争アクションをミックスした感じで、贅沢なストーリーに仕上がっている。シリーズ1作目ということもあり、プロットがよく練り込まれているし、作者の意気込みが感じられる渾身の一冊と言えよう。
1投稿日: 2016.05.08
都立中高一貫校10校の真実 白鴎/両国/小石川/桜修館/武蔵/立川国際/富士/大泉/南多摩/三鷹/区立九段
河合敦
幻冬舎新書
受験生の親、塾教師は必読の書です
真実というほどの驚きネタはないけれど、世間で思われてるほどいいことづくめじゃないよっていう警告にはなると思う。メリットとデメリットの両方を理解した上で学校選択することが大切だが、外からではなかなかデメリットが見えない。その点、白鴎中高で一貫になる前後9年間の指導経験を持つ著者は、問題点も正直に述べているので、実情がとても分かりやすい。本題とは関係ない「あとがきにかえて」のエピソードが一番胸を打たれた。教育の本質がそこにある気がする。塾教師必読の書である。
1投稿日: 2016.05.08
悲将ロンメル(電子復刻版)
岡本好古
徳間文庫
迫力の戦車バトルが見もの
ナチス・ドイツの元帥らしからぬ紳士的な人格者。ドイツの将軍だったのが残念なぐらいだ。前半の北アフリカ戦線を舞台とした機甲師団の戦車バトルは見もの。迫力のある戦闘シーンで映像が目に浮かぶようだ。後半はトムクルーズ主演の映画『ワルキューレ』で描かれたシュタウフェンベルク大佐によるヒトラー暗殺未遂事件も挿入され、サスペンスタッチの緊迫感がロンメル将軍だけを描く単調さを防ぎ、作品の中に絶妙な変調を施している。とりわけラストのロンメル元帥はかっこいい。
0投稿日: 2016.05.08
あと少し、もう少し(新潮文庫)
瀬尾まいこ
新潮文庫
読後の爽快感がたまりません
中学・高校入試問題によく出る文章。1区から6区までそれぞれの走者が1人称となる連作短編が駅伝のようにつながっていく。この構成もいい。読みながら自分の中学時代の駅伝大会を思い出してしまった。自分の時とレース展開が似ていたこともあり、ハンパなく引き込まれた。特に自分と同じ3区を走るジロー。2区から襷を受け取る時と4区に渡す時の状況が昔とあまりにもそっくりだったんで、余計にジローに感情移入。やっぱり駅伝っていいなぁ。不良の大田はスクールウォーズの大木みたい。さわやかな気持ちにさせてくれる青春小説だ。
1投稿日: 2016.05.07
武田勝頼(一) 陽の巻
新田次郎
講談社文庫
勝頼は名将だった!真田昌幸も大活躍!
第一巻は信玄の死から長篠城包囲戦までが描かれる。とかく偉大すぎる父信玄と比較され、評価が低くなりがちであるが、長篠の合戦に至るまでは、若いなりにけっこう頑張ってるじゃん。信長は木曽山中で勝頼に一度は負けてたんだね。あの信長が勝頼に対して相当ビビってるところを見ると、けっこう凄い武将なんじゃないか? 家康なんか負けっぱなしだし。力で勝てないからって、家康さんそりゃねーだろっていう、えげつないやり口が目に余る。そんな勝頼を支えていたのが真田昌幸。ここでも大活躍だ。
0投稿日: 2016.05.07
武田勝頼(二) 水の巻
新田次郎
講談社文庫
圧巻の設楽ヶ原の合戦
第2巻は長篠の合戦から上杉家の御館の乱まで。長篠の合戦のメインはなんと言っても設楽ヶ原の戦い。壮絶な合戦描写は圧巻。さすが新田次郎。それにしても穴山信君ムカつくー!こいつがすべて悪いんじゃないか!勝頼がかわいそう。作者は通説となっている独断専行の勝頼像を完全否定。とても説得力がある。そして、ここでも真田昌幸はすげー。ほとんどの進言は却下されてしまったけど。彼の言う通りに進んでいれば、武田家はもっと栄えていたに違いない。
0投稿日: 2016.05.07
武田勝頼(三) 空の巻
新田次郎
講談社文庫
勝頼の最期が哀しい
設楽ヶ原の敗戦以降、戦いの舞台はVS徳川、VS北条へ。武田家滅亡へひた走る。教科書的には長篠の合戦で信長が武田家にとどめを刺した印象があるが、実際にはその後7年も粘っている。むしろ穴山梅雪をはじめとするご親類衆が武田家を内部瓦解させたとしか言い様がない。家臣団の裏切りにつぐ裏切り。そんな中にあって信玄の五男で高遠城主の仁科盛信が武田武士の意地を見せる。勝頼の最期は何とも物哀しいが、生涯を通じて実に清々しい勇将であったと思う。新田次郎の勝頼への尊嵩の思いが伝わる作品であった。
0投稿日: 2016.05.07
小説 ちはやふる 中学生編(1)
時海結以,末次由紀
KCデラックス
千早が本当にいたらやっぱりドン引き
マンガは読んだことないんだけど、娘に付き合って映画を観に行ったら結構面白かったんで、小説版全四巻を大人買い。第一巻は太一と千早の中学時代が描かれる。太一のあの性格はエリートの家庭環境が大いに影響してるってことがよくわかる。千早の中学時代は、やっぱりドン引きだな。自己主張強すぎ。でも、二人とも少しずつ成長していく様が微笑ましい。肉まん君もちょっとだけ登場するのも嬉しいね。
0投稿日: 2016.05.07
