
天才数学者はこう解いた、こう生きた 方程式四千年の歴史
木村俊一
講談社学術文庫
理系の人も文系の人も楽しめる方程式の歴史
この歳になって(49)ようやく数学が面白いと感じられるようになった。(今さら遅いのだが) ド文系の私にはほとんどチンプンカンプンの内容だったけど、天才数学者たちの苦労や波瀾の人生が垣間見れて、面白く読めた。 昔の人って頭良かったんだなぁとつくづく思う。 授業がすこぶる下手で、生徒が一人も講義を聞きに来ないニュートン、小学校も卒業してないのに独学で学び、20歳で数学教師になったタルターリャ、20歳で5次方程式の解の公式は存在しないということを証明したアーベル、高校では留年、大学受験には2度も失敗したガロアなど、天才数学者だからと言って必ずしも順風満帆の人生ではないというところが興味深い。 それにしても、天才数学者の書いた論文を二度も紛失してしまうパリ・アカデミーってどんだけ杜撰な組織なんだ?
0投稿日: 2016.07.05
星がひとつほしいとの祈り
原田マハ
実業之日本社文庫
頑張る女性を癒してくれる短編集
すべて女性を主人公とした短編集。 『斉唱』は2015年の東京都と千葉県の公立高校入試問題にも出題された文章。合唱部の話かと思いきや全然違った。 どの作品にも共通しているのは、様々な境遇の中で頑張って生きる女性たち。 何かをきっかけに踏ん切りをつけたり、背中を押されたり、そのきっかけが川だったり橋だったり、あるいはトキや白神山地だったりと情景描写とうまく重ねていくところがうまい。 旅先で出てくるいろんな方言も温かみがあっていいな。 最後にはジーンと余韻が残るいい話ばかりだった。
0投稿日: 2016.06.29
剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎
高殿円
文春文庫
2017年NHK大河ドラマの主人公を描く
来年の大河ドラマの主人公ということで予習がてら読んでみた。 女領主が徳川、武田、今川の大大名を相手に大活躍して・・・という話ではなかった。 大半は井伊家のお家騒動で、合戦シーンもほとんどない。 女領主として采配を振るった期間も短く、結局は今川や武田の思惑に翻弄され、お家断絶に追い込まれていく小領主の悲哀を戦国の女性視点で淡々と描いている。 政略結婚や養子縁組の連発で家系図を把握するのが大変だった。 さてさて、来年の大河はどんなドラマに仕上がるのやら 。
0投稿日: 2016.06.25
あなたが愛した記憶
誉田哲也
集英社文庫
本格ミステリーではありません
最初は姫川シリーズのような猟奇的連続殺人事件の本格ミステリーかと思いきや、途中からちょっとSF的な内容に変化していく。 『妖の華』といい、『黒い羽』といい、たまに誉田さんこういう系統を書きますね。 でも、こういうのも好きです。 中盤は主人公の境遇にいたたまれなくなりますが、性別や年齢にとらわれずに人と向き合う大切さを気づかせてくれる作品です。
0投稿日: 2016.06.19
三浦綾子 電子全集 塩狩峠
三浦綾子
三浦綾子 電子全集
「先生が選んだ10代に薦めたい泣ける本」 第2位の作品
なんとも美しく、悲しい話だった。明治42年2月28日、北海道塩狩峠で起きた列車事故で、長野政雄氏が身を挺して列車の暴走を食い止め乗客を救った。この事実を元に書かれた小説。この自己犠牲心は幼少期からの人格形成やキリスト教との関わりが大きく影響している。そして幼馴染のふじ子との愛が切なすぎる。こんな運命を背負わされても、ふじ子は信仰を捨てないんだろうなぁ。ラスト20ページは涙なしでは読めません!
0投稿日: 2016.06.19
石の猿 上
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
表紙の猿は孫悟空だって!
タイトルと不気味な猿の絵で、微妙に読書意欲を削がれるんだけど、読めばやっぱり面白い。 いきなり舞台は海から始まるが、相変わらず息をもつかせぬ怒濤の展開。あのかわいくない猿は孫悟空だったのか。 前作に登場したルーシー・カーという女性警官のその後が垣間見れてちょっと嬉しい。
0投稿日: 2016.06.14
石の猿 下
ジェフリー・ディーヴァー,池田真紀子
文春文庫
風水で勝負!
キタッー!大ドンデン返し!まるで水戸黄門の印籠のような期待感を持って読んでしまう。 いつものように連発というほどではなかったけれど、ちゃんとどデカいドンデン返しは残されてました。 リンカーンの科学捜査とは対照的に、風水学の視点から犯人に迫るリー刑事も魅力的。 中国人ならではの捜査方法や観察眼も面白い。 それを書けるディーヴァーがすごいのか。 随所で中国社会に潜む深い哀しみが垣間見れる作品でした。
0投稿日: 2016.06.14
ファイアマンの遺言
秦建日子
角川文庫
いい話だけに・・・
殉職した消防士を取り巻く、家族、職場の同僚、近所の人々、放火犯、車のセールスマン・・・。 様々な人たちの思いや心の変化が描かれた中編小説。 ストーリーはとてもいいのだが、やはりちょっと短い。 もっと深く描いて長編にした方がいい作品になったと思うなぁ。 表題にもなっている消防士の遺言書、どんだけ感動ものかと期待をしていたのだが・・・。
0投稿日: 2016.06.14
結婚相手は抽選で
垣谷美雨
双葉文庫
ナイスアイディアです!
抽選見合い結婚法という設定が面白い。 実際、これぐらい強烈なことをやらないと少子化問題は解決しないかも。 この本にヒントを得て、安倍内閣が法制化に踏み切るかも。 独身者は御注意!俺はもう関係ないけど。 金持ちのお嬢様で超美人、それでいて母親依存症の奈々さんの超ドSな会話がたまらない。 そう思ってしまう俺は超ドMなのか? 見栄や外見にとらわれず、本当に好きな人を見つけることの大切さを教えてくれる作品だった。 ま、俺には今さら遅いんだけど。
0投稿日: 2016.06.14
殺人鬼 ――覚醒篇
綾辻行人
角川文庫
ジェイソン顔負けのスプラッター
おえぇっ!この殺人鬼に比べたら『13日の金曜日』のジェイソンなんてかわいいもんだ。 ただのスプラッター小説というだけでなく、トリッキーな描き方も組み込んで読者を惑わすあたり、さすがだなと思う。 言われてみれば確かに所々???と思う部分があったが、たいていは普通に読み流してしまうような所。 そんなの気づかねーよ! でも、作者の「あとがき」が結構心にしみて、こういうジャンルの小説を書く裏で、綾辻さんの平和に対する思いが感じられてスプラッターも有りかなと思ってしまった。
1投稿日: 2016.06.14
