
主役はダーク 宇宙の究極の謎に迫る
須藤靖
毎日新聞出版
非常に親切な編集
ミクロの素粒子の話から、マクロな超ひも理論まで、軽妙な文章で説明されていて、読み物としても面白く、難解な話題が理解できます。筆者自身が、軽妙な話題しか理解されないのではないかと危惧していらっしゃって、最後に、簡潔、明快な解説が記述されており、この部分を読むだけでも、十分な感じがします。非常に親切な編集がされていると感じました。
1投稿日: 2016.04.26ラス・カサス インディアス史 (一)
長南実,石原保徳
岩波文庫
ラテンアメリカの成立に対する生々しい記述
歴史で学ぶコロンバスのアメリカ大陸発見以後のラテンアメリカに対する、生々しい歴史が記述されています。宗教家である筆者の、インデイオスに対する活動などの記載から、歴史では学べない色々なことが理解できます。コロンバス親子が、実際には排除されていたことなども、初めて知ることでした。
0投稿日: 2016.04.19ウイルスは生きている
中屋敷均
講談社現代新書
ヴィ-ルスに対する正しい認識
インフルエンザ、ノロ、HIV、エボラなどと、ヴィ-ルスに対しては、恐ろしい害を及ぼすものというイメ-ジが強いと思われますが、寄生バチが寄生する幼虫に対して行う免疫の攪乱におけるヴィ-ルスの役割、またそれに対抗する場面でのヴィ-ルスの役割、哺乳類での胎盤の形成におけるヴィ-ルスの役割などから、進化におけるヴィールスの役割について説明されています。また、パンドラヴィ-ルスの例などから、ヴィ-ルスは生物であるという説明には、大いに納得がゆきます。ヴィ-ルスに対して、新しい認識が得られます。
1投稿日: 2016.04.19五〇億年の孤独 宇宙に生命を探す天文学者たち
リー ビリングズ,松井 信彦
早川書房
具体的な結果はあまりでていないようだけれど
太陽系以外の惑星(系外惑星)の検索、知的生命体の検索は、一時大きな話題を呼び、色々な試みがなされましたが、9.11以後の対テロ作戦、リ-マンショックなどによる予算の削減、NASA自体の迷走などにより、大きな転機を迎えているようです。地球型の惑星候補は多く発見されましたが、実際の環境、生命存在の兆候の観測などの実績はでていないようです。オバマ大統領も、火星探索というより具体的な結果が得られるような方向に転換したようです。そんな変化のなかでの、研究者の考え方、今後の方向性など、インタビュ-を中心にした本書の内容には、考えさせられるものが多くあります。天文学者の中でも、反対者が多いこの研究の将来について、大いに気になりました。
0投稿日: 2016.04.163.11 震災は日本を変えたのか
リチャード・J・サミュエルズ,プレシ南日子,廣内かおり,藤井良江
英治出版
多くの人の心に変化を起こした?
3.11の震災後の日本での、ボランテイア、自衛隊、市町村や県レヴェルの自治体、政府、政治家、東京電力などの電力会社などの行動、主張を分析し、いかなる変化が起こったかを分析しています。迅速な対応が行われた、ボランテイア、自衛隊、市町村や県レヴェルの自治体や、市民の原発に対する評価などには変化を認めたが、政治や社会を大きく変える程のものではなく、それも震災まえからあった変化が大きくなったものであるとの結論のようです。自衛隊の隊員と、ピ-スボ-トに所属する人たちが、協同作業を行ったという記載には、興味を覚えました。
1投稿日: 2016.03.24ブラック鉄道史
小川裕夫
文友舎
テッチャンではないけれど
原子力機関車の研究の話、初詣は昔からあった習慣ではなく、鉄道会社と寺社の利害が一致して始められたなどどいった話です。個人的には、L特急に思い入れがあるのですが、いっさい触れられていなかったのは、残念でした。
0投稿日: 2016.03.06生命のからくり
中屋敷均
講談社現代新書
DNAの複製方法に秘められている大きな意味
「情報の保存」と「情報の変革」が、生物が、生命を維持し、進化するために必要な方法と考えると、DNAが複製される方法に、確実にコピ-を作成し保存する部分と、その対側で、変異を起こす確率が高い方法でコピ-を行い、変革を担保する部分があるとの説明は、非常に納得ができるものでした。アブラムシ、セミなどと、細菌の細胞内共生の話も、非常に面白く、生命とはなにかと、改めて考える機会となりました。
0投稿日: 2016.02.26大格差社会アメリカの資本主義
吉松崇
日経プレミアシリーズ
リバタリアニズムとリベラリズム
リバタリアニズム(自由至上主義)という、アメリカ人の考え方を理解しないと、この本の内容が完全に理解できないのですか、正直言って、完全には理解できませんでした。トマ・ピケテイへの反論と理解してよいと思います。リ-マンショックの内部事情の記載もあります。
0投稿日: 2016.02.04生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像
中沢弘基
講談社現代新書
太古の海は生命の母ではない
20世紀後半から知識が集積した、地球惑星学などの情報を取り入れ、生命は、隕石の後期重爆撃によって海に生成された生命物質が、粘土などの鉱物とともに海底に蓄積し、重合により複雑な有機物質に変化し、プレ-トテクトニクスの始動によって移動、熱水などの刺激から小胞を形成することによって保護され、この小胞が、代謝や複製の能力を獲得することによって、海底で形成され、海にも移動していったという理論は、非常に興味深いものがあります。一部、実験結果による証明も記載されていますが、全体像を説明するためには、まだ解明されるべきことが多いと思われます。なぜ生命が誕生したのかという根本的疑問を、地球の熱放射によるエントロピ-減少の一環としての説明は、明快です。
1投稿日: 2016.01.31僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史
古川 享
NextPublishing
PCの創世記
アスキ-という会社をとおして、マイクロソフト、IBM、PCの販売を始めた日本の各電気メ-カ-の関係が理解できます。その後のメ-カ-の変遷を思うと、感慨深いものがあります。色々なエピソ-ドの中で、韓国が、38度線に近い山の反対側のふもとの青瓦台に、首都機能を集中させているのは、北からの飛行機は、一度山を越えてUタ-ンしてからではないと爆弾を落とすことができないという記載に、興味を覚えました。
2投稿日: 2016.01.24