
暗号解読(上)(新潮文庫)
サイモン・シン,青木薫
新潮文庫
量子暗号の使用は近い?
初歩的な暗号から、現在インタ-ネットで使用されている暗号化処理の歴史や詳細について説明されています。最後は、今後実現するかもしれない量子暗号の理論的な説明ですが、若干解りづらいところもあります。暗号を作る人、そしてその暗号を解読する人のエピソ-ドは、読み物としても、非常に面白いものです。一風変わった天才たちの話もありますが、暗号の作成も、その解読も機密の壁に隠されていて、コンピュ-タの歴史などは、科学史を書き換えられる可能性があるエピソードも紹介されています。
0投稿日: 2017.03.12
モサド・ファイル イスラエル最強スパイ列伝
マイケル バー=ゾウハー,ニシム ミシャル,上野 元美
単行本
キ-ワ-ドは核兵器?
イスラエルを守るというモサドの活動を、いくつかのケ-スで紹介してあります。諜報活動というより、イランの核兵器開発の関係者を排除する、黒い九月の幹部を排除するといった、特殊作戦のほうが多いようです。それを意識してか、最後のほうで、ヨルダンやエチオピアからのユダヤ人の移送の話に触れています。直接は、本の内容とは関係ありませんが、核兵器を開発しようとするアラブ側の政権を、イスラエルとアメリカが対処するといった視点で考えると、中東情勢が解りやすいような気がします。
0投稿日: 2017.02.27
宇宙が始まる前には何があったのか?
ローレンス・クラウス,青木 薫
文春文庫
すべては無から
ビッグバン以後の宇宙の姿を、量子物理学の概念をとりいれて説明することによって、ビッグバンの起こる前の状態を、非常に解りやすく解説してあります。個人的には、完全には理解できない部分もありますが、一度通読して、流れを理解するには、最適の本かと思います。加速膨張している宇宙の未来について語り、色々な観察が可能である現在が、宇宙の履歴や未来を語ることができる特殊な時期であるという記述が、印象的でした。
1投稿日: 2017.02.06
〈麻薬〉のすべて
船山信次
講談社現代新書
麻と大麻は同じもの
阿片から始まって、東アフリカで使用されているカ-トなどの植物由来の嗜好品、シンナ-などの、人間が使用している薬物の歴史、薬理作用などを記述している博物学的書籍です。対応する法律の複雑さ、薬としての有用性を持つ面などについても言及されています。
0投稿日: 2017.02.01
人質の経済学
ロレッタ・ナポリオーニ,村井章子,池上彰
文藝春秋
出口はどこに?
9.11をきっかけにアメリカで成立した愛国者法によって、ドル決済ができなくなったコロンビアのコカイン・カルテルが、ユ-ロ決済を始めたことが、巡り巡ってイギリスのEU離脱に結び付く。このパズルの回答が詳しく説明されています。日本も、駒の一つに組み込まれています。改めて、アラブの春、中東問題などについて考えさせられます。
2投稿日: 2017.01.26
テクノロジーは貧困を救わない
外山健太郎,松本裕
みすず書房
問題は内面的成長
インタ-ネットに繋がるようになったから、総ての人が平等な立場になったわけではない、アラブの春では、ソシャルネットワ-クが重要な役割を果たしたが、それが原因で起こったわけではない、などの分析や、著者の、ミクロソフト社、インド、ガ-ナなどの経験から、使う人の内面的な問題、助言を得られるかなどといった外的条件など、デジタル技術を有効なものとするための条件が記載されています。学校で裏サイトが作られ、イジメの温床になっている現実を耳にすると、非常に納得がゆく内容に感じられました。
0投稿日: 2017.01.22
東京ゴミ袋
瀬戸山玄
ちくま文庫
20年程前のルポだけど
ゴミの分析から、社会の分析をするという切り口は、非常に面白いと思いました。ただ、20年程前のルポですので、現在とは若干状況が変化しているのではないかと思います。例えば、あまり分別の雰囲気はなさそうですし、暴力団事務所のゴミから破門状がでてくるといったことは、シュレッダ-が家庭に普及し、社会の状況も変わった現在では、あまりないのではないかと想像します。しかし、色々なゴミを集め、分析し、撮影し、文章としたエネルギ-には脱帽します。集めたゴミは、その後、どうやって始末したのでしょうか。
0投稿日: 2016.12.28
現代の地政学
佐藤優
晶文社
キリスト教宗派のスタンスには差異がある
地政学の初歩について講演した内容の文書化したものです。地政学についての説明についてはもちろんですが、神学を学んだことがある著者だけあって、カソリック、プロテスタント、ロシア正教のスタンスの差についての説明については、非常に理解しやすいものでした。
0投稿日: 2016.12.11
超ヤバい経済学
スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
東洋経済新報社
人は利益があるから行動する
ポンビキと不動産屋は、どちらが依頼者に利益をもたらしているかとうい話から始まり、地球温暖化にたいする地球工学てき解決方法などの分析がされています。基本的には、人は利益をもたらす場合に、インセンテイヴを感じるというものです。ポンビキの依頼者にたいする膨大な調査、デ-タの収集が行われていることには、驚きを隠せません。
0投稿日: 2016.11.16
「学力」の経済学
中室牧子
ディスカヴァー・トゥエンティワン
教育に対する経済学的アプロ-チ
教育に関する色々な問題について、経済学的アプロ-チによるデータ分析によって結論を説明してあります。例えば、ご褒美をあげること、褒めることなどが効果があるかどうかなど。残念なことは、アメリカでの研究結果の引用が多く、日本でのこの分野での研究の遅れを感じさせる内容でした。結果も、年齢などの色々な条件によって変化するようで、単純にはいかないようです。
1投稿日: 2016.11.06
