
古墳の古代史 ──東アジアのなかの日本
森下章司
ちくま新書
前方後円墳は、一つの社会体制の表現である
東アジアの古墳時代前後の状況分析から、日本の前方後円墳を生み出した社会体制の誕生を、中国(漢の盛衰)、朝鮮半島と関連付けて解説しています。漢が安定している時代は、中国の様式を取り入れているが、衰退してゆく時代は、各地が独自の様式を発展させ、大規模化してゆくという分析は、非常に興味を覚えます。また、明治以降、墳墓が大規模化しているという記述には、さらに興味を覚えました。
0投稿日: 2017.10.09汗はすごい ──体温、ストレス、生体のバランス戦略
菅屋潤壹
ちくま新書
額の汗は、無効な汗
汗の生理的な意味、分泌のメカニズム、ストレスとの関係など、汗についてのすべてが記載されています。実生活で体験することが、非常に理解できます。さらに、熱中症のメカニズム、対処方法などは、今後の生活を送るうえでの、貴重な参考になります。
0投稿日: 2017.09.28恐竜探偵 足跡を追う 糞、嘔吐物、巣穴、卵の化石から
アンソニー・J・マーティン,野中香方子
文春e-Books
鳥を見て恐竜を思う
恐竜の化石ではなく、足跡などの生痕化石の研究から、恐竜の生態を明らかにする研究の話です。研究そのものは、かなりの想像力を必要とするものであることは、理解できます。しかし、そのヒントは、恐竜の子孫である現在の鳥類の残す生活痕を観察、研究することであることには、驚かされます。
0投稿日: 2017.09.06【2冊合本版】歴史が面白くなる 東大のディープな日本史【古代・中世編】&【近世・近代編】
相澤理
KADOKAWA
少なくとも二度読むこと
東京大学の日本史入試問題を切り口にして、奈良・平安時代から現代までの日本史が記述されています。事実の羅列ではなく、色々な政策や現象の因果関係を中心に解説されており、面白く読めます。”少なくとも二度読むこと”は、著者の希望でもあります。読み終えて、国というものは、いつの時代でも財政的危機を抱えているものだとういう感想を持ちました。
0投稿日: 2017.08.17進化論の最前線(インターナショナル新書)
池田清彦
集英社インターナショナル
誰も見たことがない進化
ダ-ウィンの進化についての考え方が、”突然変異と自然選択によって徐々に起こる”というものです。しかし、生物学は、エピゲノムという遺伝子のコントロ-ルの変化によって、遺伝子の変異を伴わない形質の変化が継承されることや、原核細胞が細胞内共生によって真核細胞に変化したことなどを示しています。このような、変異をともない、突然起こる進化についての記述がされています。しかし、進化という考え方や言葉は、よく使用されるのにかかわらず、進化の現場を誰も見たことがないのが現実で、歯がゆさを感じずにはおられませんでした。
0投稿日: 2017.08.06わかる仏教史
宮元啓一
角川ソフィア文庫
南方仏教にたいする違和感の原因が理解できました
インド哲学の流れのなかで、ブッダが仏教の体系を作り上げる。時代の流れの中で、色々な考え方が発生し、宗派が誕生してくる。それらの考え方が、時代の流れと関係なく、中国に伝播する。日本から中国に渡った僧たちは、その宗派の中で、ヒンドゥー教の影響を受けた大乗仏教を日本に伝え開祖となる。同じ仏教であっても、初期の仏教の影響を残す上座仏教と、大乗仏教の間には大きな差異があります。南方仏教に接した時の違和感が、この流れを知ることで理解できた感じがします。
0投稿日: 2017.07.12今が地政学でわかる!リアルな新世界地図
三橋貴明
メディアソフト
それにしても、文字が小さかった
ロシアとEUの関係、中国とEUの関係、トランプ大統領の支持基盤など、地政学に基づく分析は、非常に解りやすく、面白いものでした。しかし、タブレットで対応しましたが、文字が小さく苦労しました。読む前に、対応を考えておく必要があります。
0投稿日: 2017.07.12ヤマケイ新書 クマ問題を考える 野生動物生息域拡大期のリテラシー
田口 洋美
山と溪谷社
自然が戻ってきたという単純な問題ではない
自然保護の流れの中で、ツキノワグマ、イノシシ、カモシカなどの個体数は回復しており、それ自体は喜ばしいことであるが、一方、日本における農業人口の激減を背景とする耕作放棄地の増加、狩猟人口の減少などにより、野生動物の生活圏と、人間の居住圏の間の緩衝地帯が消失してしまったことが、人間と野生動物のトラブルの原因と分析しています。また、人間の居住圏に侵入したクマなどは、排除されてしまうために、人間の居住圏に侵入することのデメリットを野生動物に伝えることができていないことも原因の一つと分析しています。江戸時代の開墾がさかんに行われた時代から、現在までの歴史的背景に基づいた分析は、自然保護の観点からは問題もあると思われますが、非常に説得力のあるものでした。
0投稿日: 2017.07.12分解するイギリス ──民主主義モデルの漂流
近藤康史
ちくま新書
今後もモデルであり続ける
イギリスのEU離脱という選択が、最近の社会事情の変化などにより、不安定化したイギリスの民主主義の結果であるという分析です。小選挙区制、二大政党、議院内閣制により安定した民主主義政治を行ってきたイギリスの政治が、各制度の機能不全により不安定化し、国民投票が、予想に反した結果となったと、最近の社会動向から結論付けています。そして、民主主義のモデルとしてではなく、イギリスにける問題の分析から、学ぶ必要があることも、強調しています。
0投稿日: 2017.07.05脳の神話が崩れるとき (角川ebook nf)
マリオ・ボーリガード,黒澤修司
角川ebook nf
脳が死滅しても高次精神機能は残る?
ニュ-ロフィ-ドバック、催眠術の治療への利用、瞑想などといった活動と、MRIなどを利用した脳の画像情報を対比し、脳の構造も変化するといった結論には、非常に興味をそそられます。しかし、超常現象、幽体離脱、神秘体験などの記載となるとやや戸惑いを感じます。精神機能が、脳の働きのみで説明できないということが結論などですが、この部分は完全には理解できませんでした。
0投稿日: 2017.06.26