ペンギンずさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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五色の舟
近藤ようこ, 津原泰水 / 月刊コミックビーム
衝撃的。
3
原作は未読。感想は…、いや、色んな意味で衝撃的だった。
近藤ようこ氏の朴訥なタッチにて描かれる世界は、静かで、淡く、幻想的。が、見世物小屋の一座を舞台に描かれる内容の、何と残酷なことか。戦時中という、…昏く、混沌とした時代ならではの描写は、近藤氏の絵柄で和らげられているとはいえ、なかなかショックを受ける。
そして舟が川を流れるがごとく物語は進み、「くだん」を求める家族をやがて待ち受ける運命。読後には、満足感というか、寂寥感というか…、何も言えない不思議な気持ちが残る。近くを見ているようで、心はどこか遠くにある、そんな主人公達の表情が印象的。一度は読んでおきたい、価値ある作品だと思う。 続きを読む投稿日:2014.06.23
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GREY 上巻
たがみよしひさ / ぶんか社コミックス
懐かしいアクションSFの名作。
3
今はなき「少年キャプテン」に連載されていた単行本全三巻を、上下巻に再録した本作。かつてアニメ化もされました。荒廃した世界で繰り広げられる、ハードな戦闘描写が、全編で乾いた空気を醸し出す。アジアンテイス…トなメカ群も、他の作品とちょっと毛色が違っていて面白い。
本作の魅力はなんといっても、主人公・グレイ。たがみ作品独特のちょっとキザなセリフ回しが似合う、クールでスカしたカッコ良いヤツ。特に後半冒頭のグレイは、成長した風貌とも相まって、何ともシビれる。
下巻、割りとぶっ飛んだ展開になるが、全体としてはコンパクトにまとまった良SF作品。 続きを読む投稿日:2014.06.22
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宝の嫁
近藤ようこ / 月刊コミックビーム
「懐かしさ」が響く、近藤ようこ氏えがく「おとぎ話」
3
優しいタッチで描かれる、おとぎ話計8編。「石の赤子」「かくれ里」「花守り」「苦い泉」「宝の嫁」「君よ知るや南の国」「夢の底の人形」「稀人」を収録。
過去のあやまちに苦しめられる僧侶のたどった結末―「…夢の底の人形」、死罪となった父の罪を背負って、寺の住職にこきつかわれる娘は、ある日ふしぎな旅の一座と出会い―「稀人」、の二編が個人的に好み。作者いわく、元ネタはあったりなかったりするそうだが、優しい話や救われない話、因果応報など、どの話も日本人が幼いころから親しんできた「むかしばなし」風。派手さは無いが、淡白な絵柄と相まって、どの話も心に馴染む。こういう話が前置きなしにスッと受け入れらるのは、やっぱり「まんが日本昔ばなし」で育ってきた、という下地があるからだろうか。 続きを読む投稿日:2014.06.22
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I.C.U. 1巻
タイム涼介 / 月刊コミックビーム
異色の除霊チーム。
2
職を失った物理学者・磯呂井 心(イソロイシン)、霊は見えないが「ホンモノ」の除霊師・或木 仁(アルギニン)、憑依体質に苦しめられる少女・アミノ。三人がチームを組んだ時、物語が幕を開ける―。
タイム涼…介氏の作品に初めて触れたのは、十数年前の「日直番長」。結構好きなギャグマンガだったが、今やこんなストーリーマンガを書いてらっしゃるとは知らなかった。
絵柄とテンポは少し独特だが、三人のちょっとコメディータッチなかけ合いと、リアルな描写の除霊パートが良い感じで絡み合い、慣れるとぐいぐい引き込まれる。特に物語を牽引する「仁」のパワフルなキャラクターが秀逸。「生臭坊主」という言葉がピッタリ(坊主ではないのだけれど、イメージで)。ミステリアスな雰囲気を漂わせる謎の男、「キセノタキオ」の存在も気になる。おもしろ怖い、ホラー好きにオススメのコミック。 続きを読む投稿日:2014.06.20
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ロズウェルなんか知らない
篠田節子 / 講談社文庫
オカルトは地方都市を救うか。
2
過疎にあえぐ町・駒木野。生業とする観光業も今ひとつふるわない。地元の青年クラブ(といっても中年に近いが)メンバーは、そんな町を活性化させるため、オカルトでの町興しに奔走する―。
地方都市の現状や、そ…こで暮らす人々の閉塞感が何ともリアルで、郷愁を誘う。そこから起死回生を図ろうと、自称文筆業の鏑木にのせられつつ、UFOや心霊現象に再生の活路を見出そうとする人々の姿が、悲しくもユーモラス。物語としてはちょっと裾野を広げすぎたせいか、もう一つ盛り上がりが薄い。もっとはっちゃけたコメディ路線にはしっても良かったかも。 続きを読む投稿日:2014.03.25
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薔薇だって書けるよ─売野機子作品集─
売野機子 / 楽園
売野機子作品の入門書として。
0
売野機子氏の作品集第一弾。
正直な感想として、どの作品にも派手さは感じられない。内容的にも格別目新しくはない。でもそんな中に、心にじんわりと入ってくる切なさが、時折まじっているのが何とも侮れない。
…日本人が日常で着物を着ていた時代、嫁入り前の娘と、未来から来たと語る少年との、密やかな心のふれあいをノスタルジックに描いた「遠い日のBOY」、少女・ハルタの切ない恋の思い出、そしてその後を描いた「晴田の犯行」が良かった。
余談だが、個人的に売野氏の描く、少年マンガとも少女マンガともつかないちょっとクラシックな絵柄が好み。 続きを読む投稿日:2014.03.11