ペンギンずさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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シャイロックの子供たち
池井戸潤 / 文春文庫
クオリティの高い短編。そして全体を通しても満足の読後感。
6
とある銀行で働く人々を描いた連作短編集。歯車として生きる者、それに疑問を抱く者、激務の苦しみが報われる者、対照的に散る者…。「銀行員」というエリート稼業の裏にある過酷な業務の描写は、さすがの池井戸クオ…リティ。息苦しくなるほどのリアリティを持って読者に迫ります。
そんな話が続くのか…と思いきや事件は起こります。ある女子行員に降りかかった現金盗難疑惑。そこに端を発し、やがて事件は思わぬ方向に。独自に調査していた行員が失踪し、やがて真実が明らかに…。
出世レースを戦う人間の息の詰まるような思い、それを支えあう家族、そしてミステリー要素。短編でありながら各話が少しずつ繋がり、そして最後に余韻を残す読後感。短編としても、全体を通しても、非常に読み応えのある満足の一冊でした。 続きを読む投稿日:2014.11.22
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嫌われる勇気
岸見一郎, 古賀史健 / ダイヤモンド社
人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないこと
5
レビューのタイトルは本文より。もしこの言葉にドキッとしたら、この本を読むことをオススメします。
「嫌われる勇気」=「アルフレッド・アドラーの著書」と思われがちですが、これはアドラーの手による書物では…ありません。岸見一郎氏と 古賀史健氏による「哲人と青年の対話を通してアドラーの教えを学ぶ」本です。全編、「世界はシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる」と主張する哲人と、それに懐疑的な青年の対話、という形で描かれます。もちろん青年は読者です。
最初は哲人の言葉に反発するかもしれません。しかし対話を読み進めるうちに、自然とアドラーの教えが腑に落ちるでしょう。なぜ自分は不幸なのか、なぜ劣等感を抱くのか、そしてどうすれば幸福になれるのか。あなたも青年となって、哲人の言葉に耳を傾けてみてください。
あなたが「今の自分に満足しているが、もう少し上を目指したい」という状態ならば、この本を読む必要はありません。しかし「今、悩み、苦しみ、そしてよりよく生きたい」と考えているならば、一度手にとってみてください。きっと新しい発見に出会えるはずです。 続きを読む投稿日:2014.11.12
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新月を左に旋回
衿沢世衣子 / もっと!
「ユウコ」と「このは」のちょっと不思議な物語。
2
中学生の「ユウコ」と、彼女の家族に「このはずく様」と呼ばれる謎の少女「このは」。何気ない日常にちょっと不思議要素をプラスした物語。
いたって普通の主人公のもとに不思議なキャラクターがやってくる、という…パターンは、日本人おなじみの藤子不二雄的構図。それが衿沢世衣子氏のえがく世界となんともマッチしているのは新発見。少しダークな雰囲気が漂うのも、衿沢作品としてはめずらしく、新鮮。もっともっと、この雰囲気にひたっていたいと感じる、良い作品。サイダーにシュワシュワするこのはがカワイイ。 続きを読む投稿日:2014.07.25
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星のポン子と豆腐屋れい子
小原愼司, トニーたけざき / アフタヌーン
あなたの想像の斜め上を行くSF。
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「二十面相の娘」の小原愼司氏原作、「AD.ポリス25時」(なつかしっ!)のトニーたけざき氏作画、という、実力派作家ふたりの合作。まずは試し読みを読んでみましょう。うん、良い作画。町の豆腐屋一家に謎の宇…宙生物「ポン子」がやってくる、という○子不二雄的展開が何ともほのぼのしてていいなぁ。しかしこのポン子、ちょっと怪しげ…?
おっと!私に書けるのはここまでだ!何を書いてもネタバレにつながりそうな、レビュアー泣かせのこの作品。もう読んでください、としか言いようがない。予想外の展開に、きっと口をあんぐりさせることでしょう。私は3回ほどあんぐりしました(笑)。単巻完結の名(迷?)作SF。
※レビューになってなくてすみません。 続きを読む投稿日:2014.07.25
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大平面の小さな罪
岡崎二郎 / HARTA COMIX
「平面管理委員会」、そんなんでいいんかい?
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世の中の全ての「平面」は、「平面管理委員会」によって管理されていた!広告会社勤務のAD・宇田川は、委員会の美女・セーナと一儲けを企むが―?
岡崎二郎氏お得意の、SFミステリー。平面を自在に移動したり…、内容を書き換えたり、といった発想がおもしろい。一話、セーナと宇田川の出会い以降は、彼らが「平面」に絡んだ謎を解決していく。しかし、なんで「委員会」の人間はいともたやすく犯罪をおかすのだろうか(笑)。「委員会」の存在意義も良くわからなかったので、そのあたりのディテールにもう少し説得力が欲しかったところ。
巻末収録の登場人物によるメイキング(あとがき)マンガは、作者の制作背景が読めて興味深い。 続きを読む投稿日:2014.06.28
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珈琲時間
豊田徹也 / アフタヌーン
コーヒーが飲みたくなる短編集。
4
短編・全17話。コーヒーは基本的に小道具。うんちくマンガでは無い。
内容は種々雑多。何気ない日常だったり、シリアスだったり、ユーモア、SFっぽかったり。一つひとつの話は非常に短いが、その中にドラマが…あり、もっともっと、色んな話を読んでみたくなる。
第一話「Whatever I want」から、つかみはオッケー。女性チェリストが、喫茶店で出会ったうさんくさいイタリア人。コーヒーを片手に繰り広げられる二人の会話に、クスリとくる。
それにしてもこの作家さん、絵がうまいなぁ…。描かれる構図が、映画のよう。キャラクターもオシャレな色気があって良い感じ。コーヒーを焙煎する「おば」と「めい」の、何気ない会話を描いた第三話「すぐり」は、話に派手さはないが、ついつい各コマに目を止めてしまう。
というわけで私も今からコーヒーを飲みます。インスタントだけど。 続きを読む投稿日:2014.06.25