ペンギンずさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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海街diary 1 蝉時雨のやむ頃(1)
吉田 秋生 / 月刊flowers
四姉妹の人間模様に心ひかれる物語
1
幸・佳乃・千佳の三姉妹が、父の死をきっかけに異母妹である「すず」に出会い、そしてーという、鎌倉を舞台に描かれる人間ドラマ。
姉妹といっても仕事も性格も異なる彼女たちが、時に笑い、時に泣き、そして「家…族」として、また一人の女性として生きていく。そんな人間模様がとても丁寧に描かれているな、という印象。三姉妹もすずも家庭環境はやや複雑ですが、そんな彼女たちが出会って心を通わせていく様が、心に静かに響きます。
そして読むたびに感じる、香田家の雰囲気。「四女」となったすずと三姉妹との会話・言葉遣いから、少しずつ変わっていく4人の距離感が伝わってきて、なんだかほっこり。派手な物語ではありませんが、登場人物たちの心情が読むものの心に染み入ってくる、そんな魅力を持ったマンガです。おすすめ。 続きを読む投稿日:2015.06.05
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波よ聞いてくれ(1)
沙村広明 / アフタヌーン
軽妙な会話が魅力的
6
札幌のスープカレー店の女性店員・鼓田ミナレが、飲み屋での失恋トークをきっかけにラジオの世界にぐいぐい引きこまれていく…、というストーリー。「無限の住人」でお馴染み・沙村広明氏がラジオの世界を描く現代劇…。
とにかくテンポの良い軽妙な会話が楽しい!主人公・ミナレをはじめ、カレー店のスタッフ、ラジオ関係者、その他登場人物のあっかるいトークにぐいぐい引き込まれます。リアル調な絵でガンガン突っ込まれるボケに、つい笑いを誘われてしまう。そして気になるミナレの未来。ちょっと胡散臭いディレクター・麻籐とミナレのコンビは、札幌のラジオ界で天下を取れるか?続巻が待ち遠しい一冊です。 続きを読む投稿日:2015.06.05
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機動戦士ガンダム サンダーボルト(4)
太田垣康男, 矢立肇, 富野由悠季 / ビッグスペリオール
期待高まる新展開。
1
4巻でついに地球での戦いに突入。まさか話が宇宙世紀0080年まで続くとは思いませんでした。そして謎の勢力の登場。これまでは一年戦争のサイド・ストーリー的だったのが完全オリジナルな展開になり、全く先が読…めず。新登場キャラクター達の造詣も、安彦氏とは当然違うタッチですが初代ガンダムを彷彿とさせていて良いです。宇宙での戦いと地球での戦いの橋渡しをする本巻。イオとダリルの対決からますます目が離せません。しかしダリルの搭乗機が「アッガイ」とは。シブイ。 続きを読む
投稿日:2015.02.24
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ダンジョン飯 1巻
九井諒子 / HARTA COMIX
ファンタジーの世界を日常に落とし込んだ冒険コメディ。
22
貧乏冒険者達がダンジョンを食料現地調達、つまりモンスターを食べて進む、九井諒子氏による初の長編連載の単行本第一巻。「○○飯」「□□のグルメ」のような流行りのグルメマンガを、RPG風ファンタジーの世界で…してみたら…?というビックリ設定。その発想が既におもしろいのですが、随所に散りばめられた「RPGあるある」ネタがゲーム経験者の心の琴線を刺激します。バジリスク(体が鶏・尾は蛇)は鶏肉なのか?火の出る罠で調理はできるのか?マンドラゴラを悲鳴を聞かずに抜く方法は?などなど、夢のあるゲームの世界をひたすら日常に落とし込んだシュールさに思わず頬が緩んでしまう。丁寧な描写・豊かな発想・登場人物達のかけ合いが楽しいオススメのマンガです。唯一の難点はここで紹介されたグルメ情報を現実世界で活かせない点だろうか(笑) 続きを読む
投稿日:2015.01.29
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聲の形(7)
大今良時 / 週刊少年マガジン
読み続けて良かった。
5
読み始めた頃から「この物語はどのように完結するのだろう?」とずっと気になっていた「聲の形」。ついに7巻で完結しました。読み終えた感想は…「読み続けて良かった」です。
最終巻ということもあり内容には触…れませんが、本巻の内容およびラストについては、読んだ人の数だけ感想があると思います。良かった、悪かった、希望を持てた、納得がいかない…。
しかしその感想の多様さが本書の持つ「力」であると思います。「聲の形」はセンシティブな題材に正面から取り組み、逃げることなく描ききり、読者に問いかけます。いじめ、障害、友達、葛藤、若者の成長。そして読者は考えます。「聲の形」とは何だったのか?「聲の形」が伝えてくれたものは何だったのか?自分だったらどうするだろう?自分だったら何ができただろう?
それぞれの感想。そして物語を振り返り、自分に置き換えて考えてしまう。そんな不思議なパワーを持った作品でした。また1巻からじっくり再読してみたいと思います。 続きを読む投稿日:2014.12.19
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こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち
渡辺一史 / 文春文庫
おもしろいタイトルだが非常に中身の濃いノンフィクション。
7
筋ジストロフィーにより寝たきり、動くのは指先が少しという重度身体障害者である鹿野靖明氏と、彼を支えるボランティア達、そして介護・福祉に関わる今日の問題点を伝える著者・渡辺一史氏による渾身のノンフィクシ…ョン。
おもしろい。
何がおもしろいかというと、鹿野氏の強烈なキャラクター。自らが「生きる」ためにボランティアたちを集め、教育し、時には「帰れ!」と怒鳴る。そこに一般の人間が抱く、「介護をしてもらう」という障害者像はない。普通は入院してケアを受けるべきところを自宅で暮らし、人工呼吸器をつけた状態での発声を可能にした鹿野氏のパワーに圧倒される。
そしてボランティア達。本書は鹿野氏だけにとどまらず、彼の生活をサポートしてきた通称「鹿ボラ」の活動・心情に大きく内容を割いている。鹿野氏と彼らは「介助ノート」と呼ばれる交換日記的なノートによって意見を交換し、それを元に著者が個々のボランティアにインタビュー。そのことによって名も無きボランティアではなく、一人の人間としての彼らの人生が浮かび上がり、非常に興味深い。
24時間の介助を必要とするということ。そのために全てをさらけ出すということ。障害者が自立するということ。ボランティアをするということ。何故鹿野邸に集うかということ。そして生きるということ。こう書くととても重たいテーマだが、誤解を恐れずに書くと鹿野氏のキャラクターによってとても楽しく読める。気楽に読み始めてOK、そして一気読み必至。「生きる」ことの意味を考えさせられる素晴らしいノンフィクション。 続きを読む投稿日:2014.11.22