
千年ジュリエット
初野晴
角川文庫
文化祭も謎と笑いで。シリーズ第四弾。
「エデンの谷」「失踪ヘビーロッカー」「決闘戯曲」「千年ジュリエット」の4編。今巻は主に、ハルチカ属する清水南高校の文化祭を中心に描かれる連作短編。 前巻で盛り上がった吹奏楽部門があまり描かれていないのはちょっと残念だが、生徒会長・日野原君、「退出ゲーム」で活躍した演劇部・名越君など、清水南校オールスターズとも言うべき面々が登場するのは、シリーズファンとして嬉しいところ。 ハルチカならではのドタバタ+謎要素も変わらず健在の、シリーズ第四弾。 個人的感想として、ストーリーとしては「失踪ヘビーロッカー」、笑い的には「決闘戯曲」に各一票。
5投稿日: 2013.12.14
空が灰色だから 1
阿部共実
週刊少年チャンピオン
時々グサッとくる。
かわいい絵柄で、思春期の少年少女のちょっと笑える生態にクスッ、としていると、時々後ろから心臓に軽くナイフを突き立てられる、そんなマンガ(どんなマンガだ)。 笑える話、ほんわかする話、いい話、そして怖い話(精神的に)、イタイ話(精神的に)など、バリエーション豊かなオムニバス。
1投稿日: 2013.12.14
Q.E.D.―証明終了―(46)
加藤元浩
月刊少年マガジン
幅広い世界で推理が楽しめる。
落語家が活躍する寄席の楽屋から、500万円が盗まれた!…「失恋」 1941年のハノイで、妻を殺された日本人官僚は、なぜ裁判で犯人の死刑に反対したのか?その顛末を追った原稿はなぜお蔵入りしたのか?…「巡礼」 の二作を収録。 ちょっと粋な落語の世界、戦前の海外で起こった事件の謎と、まったく毛色の違った二作品だが、どちらも味わい深い、さすがの「Q.E.D.」のクォリティ。幅広い世界が楽しめる。
0投稿日: 2013.12.13
プラネテス(1)
幸村誠
モーニング
そして人類は宇宙へ進む。
宇宙開発が進み、月面に都市ができる時代。真空の海を舞台に生きる人間たちの物語。 デブリ(宇宙のゴミ)・月面都市・宇宙ステーション・テロ・ロケット開発などリアルなSF描写に、宇宙に対する憧憬をかき立てられる。熱血な主人公・ハチマキはじめ、姉御肌のフィー、冷静なユーリなど、回収船クルーの面々も魅力的。 第三話で、フィーが喫煙をするために四苦八苦、その結果…のエピソードには笑いを誘われつつも、宇宙じゃタバコも簡単には吸えない、というリアリティのある表現にハッとする。「ああ、ほんとに宇宙で暮らしたらこんな感じなんだろうなぁ」と思うことしきり。 ユニークなキャラクター達を追って物語に引き込まれる内に、不思議と宇宙の静謐さ・奥深さが心に染みわたる、良SFコミック。
7投稿日: 2013.12.11
機動戦士ガンダムUC バンデシネ(1)
福井晴敏,大森倖三,安彦良和,カトキハジメ,矢立肇・富野由悠季
ヤングエース
コミカライズ版として納得の出来。
人気作品のコミカライズ版として見る方もついハードルを上げてしまうのだが、キャラクター描写・戦闘シーンともクオリティが高く、納得の出来。微妙な差異の付け方や、独自の工夫が功を奏していて、小説・アニメを見た後でも楽しめる。 特に本作オリジナル展開であるユニコーンVS「シルヴァ・バレト(ドーベン・ウルフ系MS)」は、クシャトリヤVSジェガンに負けず劣らずの迫力。ユニコーンのパワーを充分に見せつけてくれる。 今後の展開に期待の持てる第一巻。
3投稿日: 2013.12.08
ルパンの消息
横山秀夫
光文社文庫
横山秀夫氏の処女作
「三億円事件」が絡んでいる割には、ちょっとスケールが小さかったような…。 核となる内容も悪ガキ三人組の冒険譚で、ミステリーとしてはちょっと肩透かし。 後の横山作品を彷彿とさせる、刑事達の事件との闘いはなかなか読み応えがあったが、事件にはちょっとスッキリしないものが残る。変に三億円事件を絡ませない方が良かったのではないだろうか。
1投稿日: 2013.11.27
サクリファイス
近藤史恵
新潮社
読後にタイトルの真の意味を知る。
自転車・ロードレースのことを知らなくても、恐れることはない。専門的な内容とストーリーが自然に融合していて、すんなりと世界に入っていける。そして読み進めていくうちに、主人公であるロードレーサー・白石と一体化し、手に汗握ること必至。 白石がやがてたどりつく「真実」は、ロードレースという特殊な舞台を活かしていて、インパクトがあった。彼の心の変化、成長していく様子も心地よい読感がある。 読後にもう一度タイトルを見返すと、最初に受けた印象とはガラッと変わるのがおもしろい。スポーツ小説としてもサスペンスとしても、非常にレベルが高い満足の一冊。
6投稿日: 2013.11.26
魚舟・獣舟
上田早夕里
光文社文庫
短編で揃えてくれれば…
5つの短編と1つの中編からなる作品集。どの作品も無情で寂しげな空気が漂う。 表題作「魚舟・獣舟」は、短いながらも独特な世界観を確立させていて、もっとこの世界の別な話を読んでみたい、と思わせる内容だった。 その他の短編もそれぞれ異なる趣ながら、独自の雰囲気を醸し出している佳作ぞろい。 その中で中編「小鳥の墓」は、設定や内容もちょっと中途半端で、異質な感じ。 短編5編と同じレベルのものが、あと数編入った短編集の方が良かったのでは。
1投稿日: 2013.11.24
ふわふわの泉
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
ライトでふわふわなSF
おもしろかった! SF的なディテールはハードながら、描かれるテイストはライトでソフト。淡白な描写なのに、なぜか魅力のある主人公・泉や昶(あきら)達に惹かれて「ふわふわ」と読みすすめるうちに、彼女たちの行く末が気になってしょうがなくなる。 中盤以降はややビックリ展開だが、本作の雰囲気だったらこれもアリか。 気軽に読めて、心地良い読後感にひたれる秀作SF。
8投稿日: 2013.11.20
三千枚の金貨(上)
宮本輝
光文社文庫
ちょっと残念。
上下巻を読んでの感想。 「三千枚の金貨」というワクワクさせるタイトルや書籍説明とは、内容がちょっとずれているような…。 主人公の家族の話、シルクロードでの体験、金貨を埋めた人物の来歴など、個々のエピソードは宮本輝氏の豊かな筆致で魅力的なのだが、いかんせんそれらがバラバラで、一つの小説としてのまとまりに欠ける。登場人物も劇中での出現頻度が定まらず、誰にも感情移入しにくかった。ちょっとバブリーな時代の会社員、という感じも鼻につく(笑)。全体を通して構成 の粗さを感じた。 氏の他の作品がおもしろかったのでこちらにも手を出したが、イマイチ満足できず。残念。
0投稿日: 2013.11.15
