崩紫サロメさんのレビュー
参考にされた数
1460
このユーザーのレビュー
-
30代は仕事に狂いなさい!
中島孝志 / ゴマブックス
タイトルにつられるもまた良し
2
実は20代にだって40代にだって当てはまる内容。
同著者の朝4時起き本にしても言えることだが、
成功している人がしていること、成功を目指す人がすべきことは
そんなに特別なことではない。
やはり面白いの…はタイトル。
「仕事に狂いなさい!」というタイトルなら買う人はずっと少なくなるだろう。
だが、「30代は」とつけることによって
その年代の人はつい気になって読んでしまうだろう。
読んでみたら当たり前、でも思わず読んでみたくなるようなタイトルをつける・・・
それも物書きとしての「成功」の秘訣なのだろう。 続きを読む投稿日:2014.09.02
-
『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する
亀山郁夫 / 光文社新書
緻密な分析とぶっ飛んだ空想
2
あくまで、この本は「空想」であって、「妄想」ではないとのこと。
最初の方に「妄想」と「空想」を分ける9つの条件が挙げられている。
ドストエフスキーの独特の創作法から逸脱しないこと、作者が残したメモや、…同時代人の証言と極力矛盾しないこと、などなどである。
本書の80%以上はそうした厳密な分析であり、タイトルのイメージよりもずっと堅い内容だ。
本編の理解を深めるのに役立つことは間違いない。
そして、最後の30ページほどが「空想」の物語になる。
いくつかのパターンが提示されているが、一つ目だけでもかなり度肝を抜かれた。
「イリューシャの死と葬儀からまもなくアリョーシャは親戚の住むモスクワに戻り、
中退した中等学校で一年を過ごした後、モスクワの大学でロシアの教会史を学んでいる。」
・・・ここまでは良いのです。
「やがて三年が経ったとき、中学校を終えたリーザが突然モスクワに訪ねてくる。
彼女は妊娠三ヶ月の身重の身体だった。」
おいおいおいおい中学生・・・!
でもあの子ならあり得るかも(苦笑)。
などなど、いろいろぶっ飛んでいるのです(笑)
緻密な考証とぶっ飛んだ空想というのが魅力の本書。
亀山訳カラマーゾフのお供にどうぞ。 続きを読む投稿日:2014.09.02
-
沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか
ケイン岩谷ゆかり, 井口耕二, 外村仁 / 日経BP
「沈みゆく」ことより「帝国」になっていたことが衝撃!あと、サムスン絡みも面白い
2
このタイトルを見て、軽い衝撃を覚えた。
かつて、Appleといえば、「虐げられたもの」で「抵抗するもの」で、
「悪の帝国=マイクロソフト」に対する「挑戦者」だったはずである。
少なくとも20世紀末はそ…うだった。
自分のMacが最後のMacになるのではないか・・・そんなことを思った頃もあった。
それが。
そういえば。
いつのまにやら。
世界の中心たる「帝国」になっていた。
栄枯盛衰は世の習。
沈まぬ帝国はない。
本書の面白いところは、「沈みゆく」部分だけではなく、
「Appleが悪の帝国になってしまっていたということ」に対する戸惑いがじわりじわりと伝わってくるところだ。
いや、面白いというよりも悲しいことなのだが。
それから、普通に面白かったのが、サムスンとの訴訟でのやりとり。
デザインの剽窃を訴えるAppleに対し、サムスン側は乳飲み子を抱えながら夜通し仕事をしたデザイナーの姿を語る。
あれ?そういう情緒的な問題!?
結局のところ、サムスンは敗訴したわけだが、こうした情緒に訴えるところは、
韓国の大統領選挙などでも見られるような。
別にアメリカン・スタンダードに合わせなければならないという法はないのだが、
企業がグローバル化すると意外なところで「あれ!?」というようなことが出てくるものだと思った。
続きを読む投稿日:2014.09.04
-
夢の雫、黄金の鳥籠(1)
篠原千絵 / プチコミック
後宮よりも戦場が気になる(笑)
2
スレイマン大帝時代のオスマン帝国って本当面白いと思う。
寵愛する男vs寵愛する女 とかいう壮絶な戦い(!)があったり、
ヨーロッパではハプスブルクやら何やらすごい面々がライバルとして登場するし。
誰か…このあたりを漫画で描かないかなあ?と思っていたところ、天赤の篠原先生が!!!おおおお~~~~!!!
し・か・も、大帝の寵愛する男(イブラヒム)と寵愛する女(ヒュッレム)が恋愛関係という、
思いつきそうで思いつかなかった設定!
これがどうなったら史実の展開につながるのか?楽しみ♪
が・・・何か最近恋愛の比重が重すぎないか?
ベオグラード攻略のあたりは大河!って感じでかっこよかったのになあ・・・。
外交やら戦略やらで大活躍するスレイマン様の姿をもっとみたいのに・・・。
掲載誌の方向からして仕方ないのか?
というか、後宮よりも戦場やおっさんの外交シーンが気になる女子は私だけなのか?(笑)
作者もテーマも大好きなだけに何だかはがゆい。 続きを読む投稿日:2014.09.04
-
失恋ショコラティエ(1)
水城せとな / 月刊flowers
甘くて苦くて、計算高い話!
2
惚れた女に振り向いてもらうためにチョコレートを作る男・・・
どんなヘタレよ!と思っていたのだが、案外したたかな話。
「相手の方から興味を持つように仕向ける」「でも安売りはしない」
こうした駆け引きが恋…愛面・ショコラティエとしての両面で展開する。
案外、ビジネスモノとしても面白く読めたりするのではないか。 続きを読む投稿日:2014.09.05
-
美男へのレッスン(上)
橋本治 / 中公文庫
このわけわからなさは確信犯!?でも「美男」への思いはホンモノ!
2
これは、橋本治が美男について論じた本である。
いや、読んでみたら美男について書き散らしたという印象の強い本であった。
元々は、雑誌に連載していたもので、それを3倍くらいに加筆して、1994年に単行…本となった。そして、2011年、文庫化している。
文庫版のあとがきによると、何かものすごく言いたいことがあって、書きたいことがあって、書いたみたいだけど、それが何かよくわからないようである。それ故、とても「へんな本」であるらしい。
著者がそういうのだから間違いない。
とにかく、脱線が多い。著者は「美男」について並々ならぬ思い入れがあるらしい。それゆえ、思い浮かんだ美男について、とにかく心ゆくまで語る。で、本論はどうなったんだ?ということもしばしばあった。
が、文句なしに面白いし、個々の例はわかりやすい。たとえ、例に挙がっている美男(映画俳優など)を知らなくても、橋本氏の語りを聞いていると、その男がどのような美と魅力を持つのかが、
ありありと伝わってくる。ただわかりにくいのは、最終的に著者が何を言いたいのかである。
普通に考えると、これは致命的な欠点であるはずだが、そんなことどうでもいいくらいに、熱い(時に暑い)し、ユーモアに溢れている。
しかも、いつのまにか後書きに相当するような部分に突入していて、それが3章くらい続いているようだ(笑)
が、まあ、折角読んだので、骨格になっている論をいくつか挙げてみようと思う。
・美男と美女は全く異なる。
・それは、現在の社会のあり方が「男社会」であるからである。
・近代という時代、美男のあり方が大きく変わった。
・近代、「顔のない美男」というものが出現した。
・・・というように、結構社会学的な見方が前提となっている。
で、その橋本美男論の核心とも言うべき「顔のない美男」論によると・・・
「近代」とは人々が平等を目指した時代である。民主化、と言ってもよい。近代を作った男達は、男である限り、人間に差などないはずだと思った。平等という理想を達成した以上、皆が理想というべき「美男」である。しかし現実に容貌には差がある。「自分の顔」というのはあってはいけない差異で、それゆえ男達は自分の顔を隠し、否定し、自分が「男である」というだけで「美男である」と思い込む。そのような男を「顔のない美男」と呼び、最も厳しい非難の対象としている。
この本の中で最も読みやすく面白いのが「Lesson8 明快ブオトコ講座」であろう。
ブオトコとはなにか、を考えることによって、美男とは何かをしる手がかりとなりのだが・・・
「ブオトコとは「顔のない美男」を自覚しない男のことである」
と言明している。
そう、よくわからん本だが、ちゃんと最後の方に太字で書いてるよこの人。
「そして、一番重要なことは、「自分の顔を持つ」―これだけである。」
橋本治は整った容貌を持たず、ハゲで、ハゲ隠しのために金髪にしてしまう変な中年であるが、「自分の顔」というものがどうしても捨てられない。だから、「顔のない美男」にはなり得ない。だから、美男でなくても平気なのだそうだ。
・・・(笑)
何か、むちゃくちゃな脱線やら飛躍やらがあったし、橋本氏自身もかなり変な人であることが判明してくるが(この変さはやはり読んでみるのが一番である)、結構まともなところに行き着いている。
もしかしたら、まともそうに見えたり賢そうに見えたりするのを避けて、敢えてこんな支離滅裂な形を取っているのかもしれない。
だって、金髪にした理由の一つが
『窯変源氏物語』を書いたことにより「エラい人なのかもしれない」という誤解を被りそうになり、それがイヤで「ただの金髪のバカ」になろうとした
というのだから!
うん、この人からそれもありそうだ。
というわけで、頭脳明晰で容姿の美しくない男が、バカを装いながら美男について論じている・・・といろんなところでバランスの悪い本だ。
そのバランスの悪さも計算のうちかもしれないし、いい味を出している。
だがしかし、この人の美男に対する熱い思い入れは本物だ。それは、どんな風に読んでも感じ取ることができる。
それを感じ取ったところで何の役に立つのかは、全くわからないが(笑) 続きを読む投稿日:2014.09.06