ondankbarehondさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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愛と暴力の戦後とその後
赤坂真理 / 講談社現代新書
すべてが腑に落ちる
1
現在の世の中を見渡して、なんだろう、この絶望と閉塞感は、どうしてだろう、私たち日本人のこの薄っぺらさは、と思っている人は是非読むべき本だと思う。私はとりあえず、「なるほど」と膝を打った。
右翼でも左翼…でもなく、「自分」の立ち位置から歴史を知ろうと思うと、霧の中に紛れ込んだようになる。戦後の日本の奇妙なねじれ、倒錯的な国土の蹂躙の仕方、この空虚さ。
ああ、そういうことかもな、本当に。と感覚的に腑に落ちる部分があって、読んで本当に面白かったし共感した。
それと共に、今まで周りの日本人に、自分も含めて嫌悪感にかられるところがあったのだが、「これは社会的に解決しなければいけない何かなんだ」と思い始めた。そういう意味では読後感も後味悪くない。知的な本である。 続きを読む投稿日:2015.03.19
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シャドウ
道尾秀介 / 東京創元社
あざとい
1
構成や仕掛や道具立てに大変凝っているが、それに振り回されて、リアリティやキャラクター、心理など(精神医学を題材にしているのにもかかわらず)が薄い。子供も大人もご都合主義によって造形されているという印象…を受けた。語り口はうまいが、あざとさが目立って、最後のどんでん返しに至るまでに、犯人などどうでも良くなってしまった。そんなに面白くない。 続きを読む
投稿日:2014.06.05
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折れた竜骨 上
米澤穂信 / 東京創元社
ディズニーシー的世界
1
個人的にRPG臭のある小説にアレルギーがあるので、作品の世界観やディテールの詰め方などに感心しつつも、そこまでははまり込めなかった。ディズニーランドのアトラクションみたいに、本格的でちゃんと創り込んで…あるものの、やっぱり本物ではない感じがする。ただ、こういうジャンルが好きな人にはたまらない小説ではないだろうか。随分努力して書きあげた作品であるとは思った。 続きを読む
投稿日:2014.09.22
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一瞬の光
白石一文 / 角川文庫
病的
1
病的。そして長い。個人的にメンヘラが大嫌いなので、生理的に受け付けない部分が多く、読むと憂鬱になる上になかなか終わらない。ただ、メンヘラ女性に取り込まれていく男性側の理屈・感情が非常にリアルに描かれて…おり、しかもその後ろ側に透けて見える男性側の病的な感じが、ダブルでリアルで、入魂の一作だとは思った。加虐・被虐的な人生を生きて、生きるか死ぬかのギリギリのところで踏みとどまっている人には心に響く小説ではないだろうか。私自身はこの作家の哲学に共鳴する部分がそんなに無いので、多分もう読まないと思う。 続きを読む
投稿日:2014.07.02
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ハーモニー
伊藤計劃 / 早川書房
いまいち
1
『虐殺器官』があまりにも良かったので購入したが、こちらのほうは今一つだった。現在、私たち自身が苦しんでいる問題がすべて解決された世界を批判する主人公たちは、若干金持ちの遊び的な感じで、ぴんと来なかった…。大体女の子ってあまり中二病にかからないのにな、みたいな感じがした。文体も新しすぎて、私にはあまり美しいと思えなかった。
続きを読む投稿日:2014.07.02
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マリアビートル
伊坂幸太郎 / 角川文庫
タランティーノみたいな感じ
1
特に深くはないが、やっぱりスタイリッシュ。登場人物がそれぞれ皆恰好良くて、引用などもキャッチ―で通好み、文章はスピード感があって、退屈せずにあっという間に読める。狭い新幹線の中で、ここまで派手なエンタ…ーテイメントを繰り広げられたのはすごいし物語としての面白さがある。ただ、別に深くはない。 続きを読む
投稿日:2014.07.24