熊猫さんのレビュー
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無人島に生きる十六人
須川邦彦 / 青空文庫
こんな遭難あっていいの?
3
作者が商船学校の先生から聞いたという体験談を書いた小説。
いや、もうこんなに爽やかな遭難小説は初めて読んだ。
遭難した16人がみな前向きで、争いもなく…いやむしろ結束して挙句遭難中なのに勉学すらも疎…かにしないという、なにその古き良き日本人の美徳。
まるで修身小説(そんなジャンルがあるのかは知らないけど)のようだった。
いや、むしろおとぎ話。
読み易くて、分かりやすいので、小学生や中学生にもオススメかと。 続きを読む投稿日:2013.12.23
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夜のフロスト
R・D・ウィングフィールド, 芹澤恵 / 創元推理文庫
やっぱりフロスト!
2
フロスト警部3作目。
今回は流感でいつにも増して人手不足のデントン署で、下品で適当で騒がしくて無責任なフロスト警部が独自のひらめきを頼りに捜査に当たる。
目の上のたんこぶであるアレン警部が流感で登場し…ない分、さらにフロストを忌み嫌うマッレット署長とのバトルが激しい。
いくつもの事件が入り組んで大混乱の本作も十分に笑わせてもらえる。
被害者がほとんど女性で、しかも子供と老人というあたりがちょっと切ないけど。
やっぱりフロストはいいなぁ。 続きを読む投稿日:2013.12.23
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クリスマスのフロスト
R・D・ウィングフィールド, 芹澤恵 / 創元推理文庫
適当親父の魅力満載
2
デントン警察の名物警部フロスト。
けちで下品でツキがなくて役立たずな直感を持ち、更に事務仕事、特に数字が苦手で人の期待を裏切ることにかけては天下一品。
そんな男が織り成す警察小説。
最新刊を読んだら最…初から読み返したくなって何度目かの再読。やっぱり面白い。
立続けに起こる事件に悪態をつきながらも一応解決に向けて奔走するフロスト。仕事中毒かと思わせるその姿は、まさに”間抜けな勤勉者”そのもの。
己の精度の低い直感に従い、無駄足を果てしなく踏みがら、時には運に恵まれて、でも大半は空振りで、上に疎まれ、下に呆れられながら、適当に捜査に邁進する。
その姿はイギリスの無責任男。
作を進めるにしたがって適当度が上がっていくのだけれど、第1作でも既に十分適当だ。
派手で捻った謎はないけれど、ページを捲る手が止まらない。
何度読んでも面白い。そして本作はラストが秀逸。 続きを読む投稿日:2013.12.23
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特捜部Q―キジ殺し―
ユッシ・エーズラ・オールスン, 吉田薫, 福原美穂子 / ハヤカワ・ミステリ文庫
重いけれど…」
1
未解決の重大事件を扱う特捜部Qの今回のターゲットは20年前に殴り殺された10代の兄妹の事件。
すでに自首してきた犯人が服役しているが、そこに納得できないものを感じたカールは上層部の妨害をものともせず捜…査を続けるが…。
2作目も非常に面白かった。
暴力的な事件とそれにまつわる悲惨なエピソードをQのメンバーのやり取りが巧く緩和してくれている。
テーマは重いのに、ページを捲るのが嫌にならない。
作者の力量なんだろうなあと思う。
前作もそうだったけれど、今作にも非常に魅力的な女性が登場している。
暴力に身を委ねた果てにわが身に降りかかった厄災を、なお暴力で購おうとするキミーはやるせなくも惹きつけられてしまう。
そして彼女の復讐が果たされることをいつしか願っている自分に気づく。
一片の救いがあるのも前作と同じではあるけれど、内容が内容だけにそれがまた胸に突き刺さる。
いいなあ。
ああ、早く3作目が読みたい。 続きを読む投稿日:2013.12.23
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二流小説家
デイヴィッド・ゴードン, 青木千鶴 / ハヤカワ・ミステリ文庫
何かを作る人間の矜持
2
いくつものペンネームを駆使してミステリ、SF、ヴァンパイア小説を手がける二流作家・ハリー。
連続猟奇殺人犯のためにポルノを書くのと引き換えに告白本の執筆を依頼されるのだが…。
二重三重に捻られたプロ…ット。魅力的な登場人物。
殺人犯の過去の事件を浚うのかと思えば、新たな事件が発生し予想もつかない展開になっていく。
事件に振り回されつつ、小説家としての自分を内省するハリーに、時折挿入される彼の作品の一節。
これがまたよく出来ていて、続きが読みたい!なんて思ってしまう。
生きていくために心ならないものも書かなくてはならない二流小説家に、自分を重ねてみたりもした。
ちょうどそんな心境だっただけに、最後のハリーの決意に妙に胸を打たれた。
そんな個人的事情はさておいても、事件自体は悲惨ではあるのだけどとても面白い作品で、邦題の付け方もいいなと思った。 続きを読む投稿日:2013.12.23
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特捜部Q―檻の中の女―
ユッシ・エーズラ・オールスン, 吉田奈保子 / ハヤカワ・ミステリ文庫
未解決事件を追うコンビにハラハラ
1
殺人事件の捜査中に同僚を撃った犯人をみすみす取り逃がしてしまい自暴自棄になっていたカール警部補をもてあました上司は、未解決の重大事件を扱う特捜部Qを新設しその統率を彼に命じる。
部下は謎のシリア人・ア…サド一人。
二人が着手したのは女性議員の失踪事件。
やられた。
面白かった。
誘拐された女性議員の描写と現在の捜査過程が交互に進み、カールとアサドはその救出に間に合うのか、議員の孤独な戦いはどうなるのか、緊迫感十分だった。
自責の念に絶えず駆られているカールと対を成すようなアサドの明るさ。
この二人のバランスが非常に心地よく、はらはらするだけでない作品になっている。
犯人の目星は途中でついてしまうものの、これはそこを読むミステリではないので、じっくりとその先も楽しめる。
むしろそこから先の展開もいい。
実は意外と地味な捜査が続く警察小説でもあったりするんだけど、そういう印象を抱かせないほど巧いつくりになっている。
個人的にはデンマークの名前ってスウェーデンやアイルランドものほど覚えにくくなくて、登場人物紹介を一度も見返すことなくさくさく読めた。
ポケミスで450ページがあっという間だったよ。 続きを読む投稿日:2013.12.23