あきばさんのレビュー
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愛なんて嘘(新潮文庫)
白石一文 / 新潮文庫
愛を否定するもの、ではなく、愛の強さともろさを感じる本
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全体を通じて、パートナーではなく、違う相手に行く、という話が多い。最後の解説のところが一番しっくり来た。嘘という意味が何かについては、言葉通りの嘘、ではなく、フィクションとしての意味というのがしっくり…来た。虚構かどうかはおいておいて、誰しもそういう部分はあることも考えさせられた。自分を守るため、よい関係を続けるために、一定のフィクションを誰もが抱えながら、パートナーとの関係を続けていることや、どんな愛でも、そういうもろさを抱えていることを改めて感じさせられる話だった。 続きを読む
投稿日:2022.01.10
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送り火
重松清 / 文春文庫
年を重ねたことによる少しの寂しさと、愛を感じる短編集
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重松さんの世界に浸りたいと思って読んだ本。
序盤のフジミ荘の話から、非常に不思議な話が続き、解釈が必要な話が多かった。漂流記については、解釈の仕方がいろいろあり、最後まで分からずに終わってしまった。…
ただ、中盤以降のシドビシャスから離れて、から、送り火、家路、については、よかった。年を重ねてきたことで、よくも悪くも変わったことを痛感させられながら、変わっていない人を見て、複雑な気持ちになった。でも変わっていく、それでもいいと思わせてくれる。送り火については、昔の両親は、家族が幸せでいることが、自分の幸せ、という価値観だったという言葉に、はっとさせられ、家路に至っては、なぜ家に帰りたいんだろう、という当たり前のことを考えさせるストーリーとなっており、読後感が非常に良かった。普通の人生かもしれないけど、そんな日々を重ねていくことの大切さを改めてかんじさせる本。 続きを読む投稿日:2022.01.10
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青い鳥
重松清 / 新潮社
「正しいこと」と「大切なこと」は違う
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吃音の村内先生が、中学校の生徒(一部元生徒)に対して、それぞれの悩みを受け止め、答えを与えるわけではなく、きっかけを与えていく物語。
大切なことしか話さない、という吃音の先生の言葉は、非常に重いし、…そうありたいとおもうものの、一番大切なことは大切なことしか話さないことよりも、その人の葛藤を「理解」してあげていること。そして、その葛藤を理解するときに、言葉が重要ではなく、言葉は最小限でいい、ということがこの本からの悩み。
ただ、実世界では、村内先生くらい最初から分かっていればいいが、理解するためにまずはコミュニケーションの頻度や、量が非常に重要。そうなると、本音を話してもらう関係性を築くために、コミュニケーションの機会をたくさん取らざるを得ない。多くの人はこの過程を経て、頼れる人を見つけられるが、なかなかそのアプローチだけでは、心をひらけない人がいる。それがこの小説に出てくる中学生たち。村内先生は、そもそも平等な世の中ではないし、全員に優しい社会ではないことを明確に言っていて、一方でそうじゃないほうがいいよね~ということも言っている。その答えは、唯一解ではなく、それぞれがそれぞれのらしさを活かして、見つけるしかないということを提示しているように感じた。
正しいことと、たいせつなことは違う。
これは人生の中でも大切な言葉になりそう。 続きを読む投稿日:2021.10.24
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仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?
飯野謙次 / 文響社
ミスを減らして、仕事の生産性を上げるテクニックを知りたい方へ
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特段ミスが多いことに悩んでいるわけではないんですが、
やっぱりどの職場にもいると思うのですが、妙に仕事が速い人、います。
こういう方々は、何がすごいのかが知りたくて、手に取ってみました。
…
■あらすじ
「ミスしない」は、仕事の効率化&できる人になる、最短ルート!
ミスは、「しないほうがいい」というような軽いものではありません。
「ミスをしない」ということは、それだけで信頼感が高まり、あなた自身の「強み」になるのです。
失敗やミスを回避し、仕事を効率化するコツを本書で体得し、仕事の質とスピードを同時にあげてください。
ハイスピード&ハイクオリティの仕事はやがて、人生最高の楽しみになるはずです!
(内容紹介より)
大まかな内容としては、
・仕事の質と量をどうあげるか
・ミスが生まれない仕組みをどうつくるか。
・メール術や仕事術など、生産性を上げるためのノウハウ
・生産性を上げるための逆転の発想
・コミュニケーションのテクニック
といった流れで進んでいきます。
■ポイント
何かスタンスや、根本の話というよりは、テクニックに寄った部分はあると思います。
言ってしまえば当たり前なこともたくさん。
言われなくてもやってるわ、ということや、
それができれば苦労しないわ、ということもちらほら。
でも、こういうわかっててもできないことをやることが大事なんでしょうね。多分。
中には、参考になるテクニックも何個かありました。
例えば・・・
・ダブルチェックは逆から見る。確かに!
いつもの順番で、いつものように見ることで、イージーミスを防ぐ方法ですね。
これは確かに、と思いました。
ただ、もう少し科学的根拠とか裏付けはほしかったかな~。
・メールの返信術
これはよくある、すぐ返す、件数は少なくしておく、っていうやつですね。
ちょっと油断するとすぐたまるんですよね。デスクトップも。。。
・シングルタスク
これだけ何度も言われているのに、シングルタスクにし切れていないときがあるな~。
というより、PCをシングルタスクにするだけじゃなくて、
働く環境とか、スマホを見れない環境にする、とか強制的にしないと正直難しいですよね。。。
・コミュニケーション術として、自分も相手も不完全な前提。
これはほんとにその通りだと思いました。
そもそも完全である前提だから色々なミスが発生する。
これはテクニックというよりは意識の問題で、すぐにできることですね。
■こんな人に
これを読んで劇的に何かが変わるということはあんまりないような気がしますが、
日々の仕事の進め方を見直すという点で、参考になるテクニックはあると思います。
ちょっと最近、生産性上げれてないな~とか、自分の仕事ミス多いかも、遅いかも、
なんて感じている方は、手に取ってみれば、参考になるテクニックは何個か見つかると思います。 続きを読む投稿日:2020.03.15
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リクルートの すごい構“創”力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド
杉田浩章 / 日本経済新聞出版
リクルートの強さの秘密。「リクルートのすごい構創力」
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いや~、やっぱりリクルートって会社はすごいです。
元リク、リクルートOBという経営者や、フリーランスの方には、
本当によくお会いします。
これを読むと、だからリクルートの人は、独立したり経営…者になっても活躍できるのか、
という部分だったり、この環境にいれば、それは成長できそう、と納得できる点ばかり。
ではいきましょう。
■リクルートのすごい構創力 のあらすじ
BCGの日本代表の方が書いたということもあって、すごく論理だてて、
体系的に書かれています。
加えて、それぞれを証明するエピソードとして、実際にリクルートで起こったことが、
随所に載っています。
リクルートのモデルを、事業の成長フェーズに合わせて、
0→1
1→10 パート1
1→10 パート2
10を超えて
という流れで説明されます。
そしてその前後で、一般的な企業との違いや、リクルートの経営陣がやっていることが、
記されています。
ポイントは、「リボンモデル」「価値KPI」「価値マネ」「型化とナレッジ共有」など
9つのステップに分けて書いてあるので、すごくわかりやすいです。
そもそも、顧客のニーズではなく、「不」からビジネスを構想しているので、
目先ではなく、本質的に世の中に求められるサービスが生まれやすいことに起因し、
それを、うまく試し、兆しをつかみ、成長させるためのノウハウが詰まっています。
特に経営陣や、マネジメントラインが、何を見て、何に注意してメンバーと
コミュニケーションをとっているかは、すごくリクルートらしいポイントだと思います。
■刺さりポイント
・リボンモデル。このモデルの優れたところは、そもそもの事業の目的を、単に自社の売上や利益を追求するためのものにとどめないところにある。
自社の売上、利益を追求しない結果が、自社の売上・利益につながるという、
何とも禅問答みたいな結果なのですが、それを社員一人一人はもちろん、
マネジメントラインや、経営層が認めていることが大きいのではないかと思います。
普通、現場が自社の利益につながらなそうなことをしていたら、
「いや、お前変なことすんなって。」と思うところを、一定許容できるところがすごい。
・ニーズは言葉通り、お客様が求めているもの。一方の「不」には、それだけでなくリクルートが考える、あるべき社会の姿が反映されている。
この「不」の考え方に、リクルートらしさが詰まっている。
・多くの企業では、この企業の何が本質的な顧客への提供価値なのかですら、意識合わせができていない。どうしても、売上にばかり目が行き、「顧客への提供価値についての意識合わせすること」は後回しにしてしまう。
前述の「不」の考え方や、自社の利益を超えた目的設定ができるところが、リクルートの強みだとすると、
常にその目線に戻す、または、伝えていく経営層や、マネジメント層の役割が極めて大きい。
ここもリクルートの強さの秘密。
■これからやること
この本から学んだことは以下です。
仕事の目的をどのレベルで置けるか
身の回りにある「不」。仕事のまわりにある「不」に目を向ける。
それを自分の生業として、育てていく。
別にどの会社にいても、本質は一緒。リクルートのやり方がすべて正解というわけではないでしょうし、
リクルート自体もこれからまた進化していくのだと思いますが、
ある種マネすることで、アウトプットの質や量が上がる部分があるはずです。
すごく勉強になる本でした!
あきばのBlog →http://akibadokuritu.blog.jp/ 続きを読む投稿日:2019.02.17
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現代語訳 史記
司馬遷, 大木康 / ちくま新書
人間模様。一人ひとりが歴史を動かす醍醐味。
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最近、いろいろと役員や経営層と話す機会が多く、
その方々の引き出しの多さや、若いときにリベラルアーツを意識的に吸収していた。
という話を聞いて、確かにそういう知識に最近触れてないな~と思いながら、…
簡単そうなやつから読んでみました。
ハウツー本のような自己啓発書や、ビジネス書も、確かに面白いやつはありますが、
感情を動かされたり、人としてのスケールの大きさを感じるものはなかなかありません。
改めてですが、こうした歴史ものや、物語を通じて、
そうした経験をすることで、ある種普遍的な知識となっていくのかもしれませんね。
ではいきましょう。
■現代語訳「史記」のあらすじ
本来の史記はわからないのですが、この本に関しては、
それぞれ章ごとにテーマが決まっており、人物ごとに書き分けられています。
権力にあるもの
権力を目指すもの
権力を支えるもの
権力の周辺にあるもの
権力に刃向かうもの
という章構成で、それぞれ該当する人物のエピソードが何個か記載され、
それを解説する形で進行します。
教科書に載っている「鴻門の会」などももちろん入っています。
そして、最後に司馬遷が生きた時代に、司馬遷がどのように史記を作ることになったのか、
の解説があり、本文は終了します。
■刺さりポイント
史記を読んで感じたことは、歴史を作った人たちの人間模様。本当に色々な人がいる。
様々な能力を持った人がいる、というよりは、人間性の部分。
ある種、本当に人間としてダメな人も出てくるし、聖人のような人も出てくる。
そして、各々が、各々の能力を活かして、それぞれの持ち場で活躍します。
そうした出来事から歴史を見ていると、王族は存在するものの、
一般の人たちが歴史を動かしている印象を受けます。
すごくエネルギーに溢れた物語に、刺激をもらえます。
・一言で言うならば家族のひどい仕打ちに耐え、どれだけひどい目にあわされても孝行を尽くした点だろう。
(舜のエピソードより。)
この舜がこれまたすごい。本当に聖人のような人。どんな仕打ちをうけても、耐え、
徳を積み、結果的に成果を出す。
どんな生き方をしたら、そんな懐深く、人に理解を示しながら、
大きな成果を生み出せるのか、美化されているのでしょうか、こうありたいと思う人でした。
・外交には相手の威に屈しないだけの胆力と知力が必要である。
(蘭相如のエピソードより)
戦国時代の、ヒリヒリした外交のエピソードが書かれていたのが、蘭相如。
僕も営業なのでわかりますが、「この商談にかける」という気持ちが、
この時代の人達にとっては、「命をかけて」やるものであり、
場合によっては「国をかけて」やるもの。
そんな世界の駆け引きは、想像するだけで、息が詰まります。
その世界で求められる胆力までは持てないかもしれませんが、
何かあっても死ぬわけではない。胆力をもって、明日から仕事に向かいます。
・すぐれた人材を獲得することこそが国の力のもとになる。
富国強兵の時代には、そのことはとりわけ重要だったのである。
(信陵君のエピソードより)
この時代も、人材の重要性は変わらないんだな~と思ってたエピソード。
むしろ、この時代のほうが、重要だったのかもしれません。
人を抱えることで、情報も早く正しく入り、かつ機動性も高く、兵力もある。
その生々しさが伝わるエピソード。
■これからやること
この本から感じたことは
自分の強みを活かすこと
この恵まれた時代に、思いっきりやらないことは損
という二つ。
久々に、歴史に触れて、時代の流れや、その中で普遍的なもの、生き方について
考えさせられたいい時間でした。
久々に、リベラルアーツに触れるのは、やっぱりいいですね。
あきばのブログ→http://akibadokuritu.blog.jp/ 続きを読む投稿日:2019.02.17