あきばさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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その日のまえに
重松清 / 文春文庫
読み終わった後、少しの間立ち上がれなくなりました。
30
がんや、心不全など、大切な人を失う人々の話の短編集です。(短篇集といういい方が正しくないかもしれませんが)
多くが、運命を呪いながらもその余命を受け止め、その中で時間の残酷さや記憶が薄れてしまう寂しさ…を感じながら力強く歩み出す物語です。
大切な家族が死んでしまうとき、自分が死んでしまうとき、余命が宣告されたとき、自分はここに書いてある人達の様な対応が出来るだろうか。ずっとそんなことを考え続けてしまいます。
そして、そうなった時に最後に残るのは、「感謝」でありたいなとも思います。
絶対に家族を大切にします。そして自分も。
これからおそらく何度も読み返してしまうくらい、大好きな本です。 続きを読む投稿日:2014.07.12
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流星ワゴン
重松清 / 講談社文庫
こういうことを積み重ねていくことが、人生なのかなと感じられた本でした。
12
読み終わった後に、自分は本当に嫁や子供と向きあえているか、考えてしまう本でした。
主人公には、何がなんだかわからないまま、人生が崩壊し、絶望しているところから物語は始まります。
自分と同い年の父…親と過去を追体験するという不思議な体験を通して、主人公の考え方やモノの見え方が変わっていく。そんな話です。
ここで感じたものは、理不尽なことが起こるのは当たり前で、それを咀嚼し、受け入れることの繰り返しが、年を重ねるということかなと。
他人と同じ気持になることや、理解することは、出来ないことも多い。でも、そこの背景や理由を知り、その人と同じ考えではないにしても、それを認めることは出来る。そしてその過程では、理解できないことは基本「理不尽」に感じてしまう。
奥さんの状況があまりにも理不尽だなと感じたり、最後の終わり方がそうなのか?と思う部分もありましたが、それも含めて、それくらい理不尽なことが起こると思っていた方が良いのかなと自分なりに解釈しました。 続きを読む投稿日:2015.01.04
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失敗の本質
戸部良一, 寺本義也, 鎌田伸一, 杉之尾孝生, 村井友秀, 野中郁次郎 / ダイヤモンド社
究極の合理性が求められるはずの、軍で起こった組織のもろさ
10
第二次世界大戦時で起こった、大きな戦場を分析し、日本軍がなぜ負けたのかを組織論の観点から考察している本です。
ポイントは、そもそも軍隊は、究極の合理性を追求した組織であるはず、ということ。
企業も…もちろん、生死をかけて争っている部分もありますが、物理的な生命的な危機の近さという点では、軍隊のほうが圧倒的に近いことは、誰しもが否定しないのではないかと思います。
そういった組織であれば、当たり前に、非合理的な選択ではなく、自分の命を守るためにも合理的な選択をするはず。私もそう思っていました。
実際に日本軍がどんな失敗を犯したかに関しては、本書を読んで頂ければと思いますが、
・ミッションが曖昧であり、組織としての相乗効果が発揮できなかった。
・意思決定者と現場の距離の遠さ。
・生死がかかっている判断にもかかわらず、特定の人間の体裁を重視。
・過去の成功体験への依存。
・上記に関連して、学習する仕組みが存在していないかった。軽視されていた。
など、今の組織でも起こりうることが多いのではないかと思います。
それが軍隊で起こっていた、というのは正直驚きでした。
特に、個人的には、体裁を重視した意思決定が存在していたことに、心底驚くと同時に、それが理由でなくなった多くの先人達の気持ちを思うとやるせない気持ちになりました。一方、判断した側にも、一定の理由があるので、責める気持ちがあるわけではありませんが。
軍ですら、陥る上記の組織の罠に、一般の組織はより落ちやすいのだと思います。だからこそ、自らを戒めながら、きちんと省みることが大切ですね。 続きを読む投稿日:2017.03.21
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知っておきたい仏像の見方
瓜生中 / 角川ソフィア文庫
仏教の種類と意味がわかりやすくまとめられています。
8
仏像がそもそもなぜ作られたのか。
そして、どういった種類があり、また形に込められた意味など、非常にわかりやすくまとめられていました。
画像付きでまとめられているので、あまり詳しくはないけど興味がある…、そんな方は一見の価値があると思います。
この本を読んでから、仏像を見ると、また違ったものに見えるはずです。 続きを読む投稿日:2015.08.31
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タックスヘイヴン Tax Haven
橘玲 / 幻冬舎文庫
最初から引きずり込まれました!
8
著者の本ははじめてでしたが、最初から引きずり込まれて一気読みしてしまいました。
内容は、ある人物の死亡から、物語は始まります。
そして、そこから、無くなった10億円、見え隠れする大物政治家、裏社会の…ドン、プライベートバンク、と様々な思惑が入り乱れながら、話が進行していきます。
久々にはじめから引きずり込まれ、最後の結末には驚きました。
そんなに難しい専門用語もないので、普通に小説として面白く、オススメです! 続きを読む投稿日:2016.10.22
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自分の時間を取り戻そう
ちきりん / ダイヤモンド社
生産性を何と定義しますか?
7
まさに、この生産性を何と定義するのか、これが非常に難しいものの、本質的な議論だと思います。
ちきりんさんのこの本は、4つのキャラクターを例に、それぞれが直面する生産性の問題で、何が問題になっていて、…どう乗り越えるのがよいのかを例示してくれています。
それは、一人ひとりにとって、生産性として目指すべきところや、解が変わるということを示してくれていると思います。
まさにこの観点がないと、どの水準が適正なのか、何がどうなれば達成なのかが、決められないので、ここを考えられていないことが、生産性という話になったときに、いつもありきたりな答えになる要因なのかなと、思いながら読んでました。
一人ひとりがこの視点を持ち、生産性を改善することを意識しながら生活する世の中があったら、それは素晴らしい世の中だと思う。そんな気づきを得られた本でした。 続きを読む投稿日:2017.03.23