
震度0
横山秀夫
朝日新聞出版
ミステリー部分はおもしろいのですが
いつものように、警察内部の人間関係のどろどろはおもしろいです。 客観的に見ればおんなじようなオヤジばっかりなのに、きちんとキャラクターが描き分けられているのはさすが。 ただ、阪神・淡路大震災に「そのとき地震が起きた」以上の意味が感じられなくて、本当にその設定は必要だったのだろうかと思いました。 離れたところに住んでいる人には人ごとに過ぎないということが確認されるばかりで、読んでいてやるせない。
1投稿日: 2016.05.21
手跡指南 神山慎吾
佐藤雅美
講談社文庫
みんなやる気ない
お家騒動と復讐劇が絡んでいるわりに、主人公をはじめみんながあんまりやる気ないのがちょっと素敵。 あらすじにある「公金横領」の一件は、「居眠り紋蔵」のシリーズをある程度読んだ人ならどことなく見覚えのある話なんですが、この本ではさらにその裏があります。その辺の謎解きがわりとあっさり終わってしまったのがちょっと残念でしょうか。 後味は悪くありません。
0投稿日: 2016.05.19
へこたれない人 物書同心居眠り紋蔵(十二)
佐藤雅美
講談社文庫
ちょっと前の話
これは少し前の巻なんですが、なぜか電子化が遅れていました。内容とかよりも、そのことでストーリーの順序が狂ってしまったのが微妙な気持ち。でも「そういうこともあったな」と思い出すところもあったので、また最初からシリーズを読み直してみようと思います。
0投稿日: 2016.04.22
古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活
アルベルト・アンジェラ,関口英子
河出文庫
あくまでも市民の生活
古代ローマの「市民」の生活が主体なので裕福な人の生活の話が多いですが、食事やアパート、トイレや共同浴場の話は興味深いです。 「現代の私たちには信じられないことだが」というフレーズが頻発するのがちょっとくどい。著者はイタリア人なので、「現代の私たち」はあくまでもイタリア人標準です。たとえば魚の内臓から作るソースなどは日本含めアジアでは現代でもそれほどぞっとするものではないのでは。 内容のわりに図などは少ないのですが、イラストがあるのでタブレットの方が読みやすいと思われます。私はタブレットで読みました。
0投稿日: 2016.04.19
スペイン旅行記 ――カレル・チャペック旅行記コレクション
カレル・チャペック,飯島周
ちくま文庫
今はもうないスペインでしょうか
スペインに行ったことがないんですが、どんな観光地の写真を見るよりも生き生きとした情景が頭に入ってきました。 1930年に書かれたものだそうですが、今もトレドやバルセロナはそのままの姿なのでしょうか。行ってみたい気がします。 著者によるさし絵が入っていて、単純な絵なのですが、小さいので専用機では見にくいです。タブレットで読むのがお勧め。
0投稿日: 2016.04.01
サンパウロからアマゾンへ 本田靖春全作品集
本田靖春
講談社
昭和に書かれた本というのはやっぱりこんな感じか
昭和50年頃書かれたもののようなので、どうしようもなく古いです。その古さは単なる事物の古さ、まだ昭和初期が近い時代だったことから来る古さよりも、読者はあきらかに男性であり、女性は誰かの妻であり、飲み屋の女性であり、という脇役としてしか著者の意識に存在しないという古さ。自分が女性だからそう思うのかもしれませんが。 ただ、事物の古さは興味深いです。「勝組」という言葉に何の注もついていないということは、当時の人には聞いて(読んで)すぐわかったということですよね。日本の敗戦を信じなかった移民の人たちということなのですが。 この本では、戦前、戦中に移民としてやってきた人々が年配ではあるもののまだ現役です。 その後サンパウロはどんな感じになったのか、今のサンパウロはどうなっているのか、見てみたい気がします。
0投稿日: 2016.03.29
風の陣【立志篇】
高橋克彦
PHP文芸文庫
「火怨」の前日譚
「火怨」の少し前の話なのですが、「火怨」を先に読むことをおすすめします。 主人公が「火怨」の、上の書籍説明にも書かれている物部天鈴なんですが、この人は架空のキャラなので、こちらはやっぱり「火怨」のスピンオフのような感じがします。 「火怨」に出てきたいろんな人たちの若い頃が見られて楽しいです。
0投稿日: 2016.03.24
アイヌの歴史 海と宝のノマド
瀬川拓郎
講談社選書メチエ
アイヌもふつうの人たちだった
これまでに読んだ小説に出てくるアイヌは、その主人公たちから見ると言葉もあまり通じず、狩猟や釣りなどをして暮らしている、なんだかよくわからない先住民のような感じなのですが、この本を読むと、その頃の日本人などとは違う形ではあっても経済システムもきちんとあり、各地で交易などをおこなっていた普通の人々だというあたりまえのことがよくわかります。 図版がわりとあるので、専用機でなくタブレットなどで読むのがおすすめ。
0投稿日: 2016.03.24
なりたて中学生 初級編
ひこ・田中
講談社
どういう読者層を想定されているのかわからない
家が引っ越したために友達と別れて隣の中学に通うことになった主人公。 「隣の小学校の子と敵同士」というのがまず古い感じがするんですが、ひょっとすると男の子にはそういうのもあるのかもしれません。 中学校の制服を作りに行ったり、初めてそれを着たりする場面はなんとなく懐かしく、少し引きこまれました。 しかし全体にほとんど何も起きないのに冗長な文が続き(特に、入学式や卒業式のスピーチが全文書かれていたりとか)、これを主人公と同年代の子が楽しく読むとは思えず、かといって大人が読んでも物足りない感じで、いったいどういう層をターゲットとして書かれているのか疑問に思いました。
0投稿日: 2016.03.24
戸籍のない日本人
秋山千佳
双葉新書
問題を認識するとっかかりとして
無戸籍という言葉じたい、なじみがなかったのですが、この本を読んでなぜそういう問題が発生するのか(ここに書かれた事例がすべてではないにせよ)、それによってどのような障害などが発生するのかがよくわかりました。 新書なのですぐに読めます。 この問題を取り巻く状況は刻々と変わっていくと思いますが、今の時点でざっくりと理解するには良い本ではないかと思います。
0投稿日: 2016.03.21
