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さくらもちさんのレビュー
いいね!された数16
  • バタフライ・エフェクト

    バタフライ・エフェクト

    カーリン・アルヴテーゲン,ヘレンハルメ美穂

    小学館

    最後にじんわりとタイトルの意味がわかる

    タイトルがSFっぽいのですが、SFではありません。 主人公が3人いて、2人は母と娘、しかし3人目がその2人とどういうかかわりがあるのかは、最後の方までわかりません。それがある意味ミステリー。 「喪失」「恥辱」と同じ作者さんの作品を読んできてこれが3冊目ですが、常に「母と娘」の問題に関する強い意識があるようで、これもその例に漏れません。スウェーデンの人の人間関係ってもっとさばさばしてオープンなのかと勝手に思っていましたが、そうではないらしいのが興味深い。 ラストは、どの主人公を中心に考えるかによって印象が変わってきます。「あそこで彼女がこうしていれば……」と、読んだあともいろいろ考えてしまいました。

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    投稿日: 2016.07.05
  • 恥辱

    恥辱

    カーリン・アルヴテーゲン,柳沢由実子

    小学館

    ミステリーという感じではないような

    ミステリーのカテゴリーに入っているんですが、いわゆるミステリーではない気がします。しかし読みごたえはあります。 主人公がふたりいて、両方が両親、または母親を原因とするトラウマを抱えています。これがどちらも思い込みの激しいタイプで、正直、途中でけっこう怖くなりました。こういう女性の心理のドロドロが苦手な人にはダメかも。 最後は論理的にすっきりとはいかないもののほんのりと希望があって、まあ良かったかもと思えました。

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    投稿日: 2016.07.02
  • 喪失

    喪失

    カーリン・アルヴテーゲン,柳沢由実子

    小学館

    ミステリーとしてはややぬるめ

    ホームレスである主人公の女性が猟奇殺人の容疑者にされてしまい、自分で真犯人を突き止めるしかないと考える話。 猟奇殺人自体の描写は新聞記事に書かれている程度で具体的ではなく、全体にあっさりめで、長さもあまりないのでわりと気軽に読めました。 ミステリーの密度としてはそんなに濃くありません。どことなく、博物館で暮らしたりするような児童小説を思わせる雰囲気もあります。 訳文がたまにやや読みにくくて意味をつかみにくいかも。

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    投稿日: 2016.07.02
  • その女アレックス

    その女アレックス

    ピエール・ルメートル,橘明美

    文春文庫

    肉食系ミステリー

    訳文は読みやすいです。けっこうグロいので読者を選びそう。 全体にもう「これでもか!」って感じで、確かに勢いはあっておもしろいんだけど、途中でふと「なぜ自分はこんな胸の悪くなるような小説を好んで読んでいるのか」と我に返ってしまいました。 最近のアメリカのミステリやドラマには「フェアでなくては」感みたいなのがあると思うんですが、この小説の場合、「おもしろければいいだろう」とガンガン進むので、アメリカ系に慣れていると違和感を覚える人もあるんじゃないかと思います。 個人的にラストは釈然としませんでした。

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    投稿日: 2016.07.02
  • 拙者は食えん!―サムライ洋食事始―

    拙者は食えん!―サムライ洋食事始―

    熊田忠雄

    新潮社

    やっぱり慣れ

    幕末期、さまざまな事情で欧米に渡航した日本人の食べ物体験。 今からは想像もつかないほど当時の日本食と洋食はかけ離れていたはずで、拒否反応の強い人もたしかにいたようですが、意外と適応力のある人が多いなという印象です。 もちろん和食の食材を手に入れるのさえ大変だったでしょうから、背に腹はかえられない。空腹になったらあるものを食べるしかなく、「なんとなく慣れてしまうものだ」というような文章を残している人の言葉が納得できます。 海外の都市にしょうゆが売られていたなどの意外な話も興味深い。

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    投稿日: 2016.06.28
  • 喜の行列 悲の行列 上

    喜の行列 悲の行列 上

    藤田宜永

    講談社文庫

    コメディ系ミステリー?

    福袋の行列がだんだん本格的な犯罪につながっていく感じがおもしろい。 外国のクラシックな犯罪コメディ映画みたいな感じで、安心して読めます。

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    投稿日: 2016.06.23
  • スロウハイツの神様(上)

    スロウハイツの神様(上)

    辻村深月

    講談社文庫

    辻村深月ワールドのファン向け

    どことなく、一昔、二昔ぐらい前の少女漫画を思わせる設定です。それを違和感なくこれだけの分量で書き上げる筆力は本当にすごい。書いてて楽しかったんだろうなと思えてほほえましいです。 ただ、この濃密な人間関係はちょっと息苦しいな、と思ってしまうとハマりにくい。 あと、キャラクターがみんなとにかくクリエイティブ至上主義で、さらに基本的にこのアパートにクリエイティブ業界の上位の人がやや集中しているという設定なので、みんなの世界がすごく狭い。 おせっかいだけど、「世の中はクリエイティブじゃない仕事をしている人に支えられているんだよ」って言ってやりたくなる。

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    投稿日: 2016.06.17
  • 紅玉は終わりにして始まり

    紅玉は終わりにして始まり

    ケルスティン・ギア,遠山明子

    東京創元社

    海外の女の子向けラノベ

    3巻の下、つまり最後まで読んでの感想です。 最近英語圏ではやりのティーンズ向けスーパーナチュラルロマンスってこういう感じなんでしょうか。これはドイツの作品ですが。 たしかにタイムトラベルものではあるんですが、パラドックスに関してとかはすごく雑なので、そういうのが気になる人には向きません。 ストーリーそのものは勢いがあるので、細かいことを気にしなければ一気に読めます。3巻の下でちゃんと話が完結しているのは好印象。

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    投稿日: 2016.06.17
  • 新装版 白い航跡(上)

    新装版 白い航跡(上)

    吉村昭

    講談社文庫

    幕末期の医師

    開国をきっかけにどれほど医学に進歩があったか、本当に驚かされます。それは単に欧米の医学が進んでいたというだけでなく、欧米でもまた、医学が大きく進歩する時代だったということなのでしょう。 その時代を生きた医師の話。予備知識が全然なかったので、上巻は田舎の大工の子ががんばって勉強して留学までできるとはすごいなーと漫然と読んでいましたが、下巻で脚気の話が出てきてから俄然おもしろくなりました。

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    投稿日: 2016.06.05
  • ルパンの消息

    ルパンの消息

    横山秀夫

    光文社文庫

    昭和の空気にどっぷりです

    処女作らしく、文章の雰囲気がのちの作品とは少し違うのですが、リアルに描写される警察の中のキャラクターは他の作品と通じるものがあります。ただ、ここでの人間関係はかなりさわやかです。 15年前の事件の再捜査、しかもその15年前が昭和50年なので関係者が語る事件の様子がものすごく昭和で懐かしい。 ただ、事件の真相は、ちょっと無茶だったかなという感じがします。

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    投稿日: 2016.05.22