マンボウさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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銀の匙 Silver Spoon(1)
荒川弘 / 少年サンデー
精一杯、真剣に生きていこうという気持ちになれます
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私が勤める職場でも、最近の新人世代の中には農業にあこがれている人が出てきており、こういったジャンルの漫画が受け入れられるようになって来たという、時代の変化を肌で感じます。半分は「無いものねだり」とは思…いつつ、私も趣味で自家菜園はやっているので、感覚的に共感するところがあります。
この漫画の魅力は、農業や酪農といった一次産業の厳しさを直視しつつも、可能性や夢を真摯に追い求める主人公の八軒とその姿勢に感化されていく登場人物たちの生き様がしっかりと描いているところでしょうか。置かれた状況がどうであれ、出来る範囲で精一杯、真剣に生きていこうという気持ちにさせられます。
いつ読み始めても最新刊までイッキ読みできますよ。 続きを読む投稿日:2014.01.11
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進撃の巨人(16)
諫山創 / 別冊少年マガジン
終結を感じさせる展開
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いよいよ本格的な謎解きが始まり、核心に迫ってきましたという感じです。少しずつ明らかにされる「真実」や、奇怪な現象から来る「ゾクゾク感」が減った分、人間の内面(精神構造)がえぐられていくく印象を受けまし…た。
進撃の巨人の世界観全体があと少しで自分の掌中に、というところで to be continued(つづく)....
「巨人」(人を超えたものだが、人にも見えるもの)が、人類(個人として人及び人間社会)にとってどういう存在なのかを自分なりに考えてみることが、本作品を楽しむコツなんだと再認識しました。
あと、海外にいても、発売日当日に読める幸せを噛み締めております。 続きを読む投稿日:2015.04.09
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アフリカで誕生した人類が日本人になるまで
溝口優司 / SBクリエイティブ
丁寧な語り口で書かれ好感が持てます
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日本人はどこから来たのか、日本人のルーツはどこかという、日本人であればどうしても興味を持ってしまうであろう話題について、最新の人類学の学術成果を織り込みつつ、一般の人向けに分かりやすく解説した本です。…雑談ネタとしても知っていてよい内容でした。この手の本としては読みやすいほうなのではと思いましたが、人類学の学者としての知見から来るマニアック過ぎると思われる説明もあり、人によっては退屈に思われるところもあるかも知れません。例えば分析手法の詳細など、調査方法そのものに興味がないと、早く結論を教えてと思えてくるでしょう。類似性分析における統計学的な裏付けの話などは、個人的には興味深かったですが。
また、歯や骨の形や体型についての説明が多く出てきますが、図が少ない為、記述された文章からはなかなかイメージ出来ないことが多いです。もうちょっと図や写真があっても良かったかなと思いましたが、用語をネット検索するなどして補完しながら読む方法があると思います。分かっている人には当たり前過ぎるのかもしれませんが、毎日、人骨を見ながら過ごす人はあまりいないと思いますので。
全体として、丁寧な語り口で書かれ、出来るだけ一般の人でも分かってもらえるように説明しようとする姿勢が感じられ、好感が持てます。退屈に感じるような箇所になったら、少し読み飛ばすくらいの軽い気持ちで読み進めれば、必ず読んで良かったと思える箇所に出会えると思います。個人的には「なぜ人間の女性の胸は膨らんでいるのか?」という疑問に対する説明(学説)が興味深かったです(笑)。
続きを読む投稿日:2013.10.23
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イスラムの怒り
内藤正典 / 集英社新書
目に見えない「踏み越えてはいけない一線」とは何か?
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本書は、イスラムとの縁の浅い日本人が、イスラム教徒(ムスリム)から見たときの「踏み越えてはいけない一線」がどこにあるのかを理解することで、不用意に「イスラムの怒り」に触れないようにする為の指南書(を目…指して書いた本)です。
筆者は、2005年9月に起きたデンマークでのマホメット(ムハンマド)風刺画事件が本書執筆の契機となったとのことで、西欧社会とイスラム社会が、どのようにお互いの「踏み越えてはいけない一線」を超え、問題を「文明の衝突」にまで大きくしてしまったのかを分かりやすく解説しています。
また、衝突の原因を、歴史的な背景・経緯にまで遡って考察し、欧米人がムスリムを毛嫌いする一方、ムスリムは必ずしも欧米人を嫌っているわけではない理由を分かりやすく解説します。また、我々日本人のイスラム観についても無知であるが故に、欧米メディア経由の翻訳報道に大きく影響を受けてしまっている現状を浮き彫りにします。
出版は2009年5月ですが、扱っている部分はイスラムの本質に近いところなので、取り上げている事象の同時代性はともかく、内容的な古さを感じさせません。むしろ時間の試練に耐え得る質の高さを感じます。収録されている、オバマ大統領に対するイスラム圏の期待に関するコラム(当時)も、現状と対比しながら読むことが出来、大変興味深いです。
デンマークのムハンマド風刺画事件については、評者もうっすらと記憶が残っておりましたが、当時も今も、遠い世界の関心外の事件に過ぎませんでした。しかし、昨今の「イスラム国」の日本人拘束・殺害を受け、残念ながら日本も無関係ではいられなくなってしまったようです。
ムスリムを理解できない相手として毛嫌いするのではなく、イスラムの教えを基本とするムスリムの内在的な思考回路と行動様式を理解した上で、欧米諸国とは違ったリスク回避策を日本および日本人は今後とっていく必要があるのだろうと思います。
とはいえ、個人的にはいまだに無知なら無知なりに「触らぬ神に祟りなし」でもよいのではという感覚から抜け出せていないですが…
少し横道に逸れますが、読後、「聖☆おにいさん」にブッダとイエスは登場できても、ムハンマドの登場が困難なのはなぜか分かった気がします。
続きを読む投稿日:2015.04.17
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デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
デービッドアトキンソン / 東洋経済新報社
隠れた観光大国ニッポンに贈る提案書
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観光立国になる為の4つの要素とは何か!?
その4つをすべて持つ潜在的な観光大国ニッポン。あまりにも潜在的な力を活かすことが出来ていない現状を少しでも改善することが出来れば、人口が減少する日本においても…更なる経済成長を実現することができるという、日本を愛するイギリス人による渾身の提案書です。
日本で信じられている「観光立国の前提条件」の勘違いについても、ズバっと切り込んでいます。正直、耳が痛い。
評者は、日本は観光で食べていかねばならないような国ではないという認識をずっと持っておりましたが、決して外国人に媚びへつらうような感覚を伴わなくとも、正しく求められている課題に取り組むことさえ出来れば、充分に新産業を日本において飛躍的に発展させることが出来るだという確信を本書を通じで得ることが出来ました。
また、本書を通じて、観光産業に対する自分の認識の甘さと偏りに気がつかされました。
大げさかもしれませんが、新しい日本の将来を切り開くための啓蒙書とも言えます。 続きを読む投稿日:2015.12.28
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わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か
平田オリザ / 講談社現代新書
すばらしい内容に思わず手を合わせました
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最近、特に自分よりも年下の人と、うまく会話が成り立たないことが増え、世代ギャップのせいかなぁとか、自分が能力不足のせいかなぁ等、悶々とすることが多かったのですが、本書を読みながら、長年の疑問が氷解して…いくような感覚を覚えました。
ずっと、コミュニーションは分かり合うためにするものだと思っていました。もっと正確にいうと、充分にコミュニーションをすれば、当然、お互いに「わかりあえる」ものだと思っていました。しかし、著者である平田オリザ氏は言います。そうではないのでは。むしろ、対話とはどんなに話し合っても「わかりあえない」ことを前提として出発するものだ、と。本書を読んで初めて本書のタイトルの意味が分かりました。不思議な本ですよね。タイトルの意味が分かったから、おおよそでも何が書いてあるのか分かったからこそ、本書を手に取ったはずなのに。読了後、あまりにすばらしい内容に、思わず本書に手を合わせてしました。こんなに気が付かせて頂き、ありがとうございます、と。
私にとっての圧巻は、筆者が教育現場での実践を通じて得た経験・知見を基に、今後の公教育が担う姿や役割を語るところです。着眼点も提案内容も社会の変化をしっかりと踏まえており、それでいて自分が今まで考えたことがなったものばかりで、とても新鮮でした。教育改革とは、実はこんなところから着手すべきものなのかもしれないと思いました。
一読は百聞に如かず。強く、つよく推奨致します。 続きを読む投稿日:2013.10.14