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  • 黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇

    黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇

    ポオ,中野好夫

    岩波文庫

    ポオの短編集としてオススメです

    非現実的で異常な世界観が展開されるポオの代表作「黒猫」。そして同じように幻想的で異常な世界などが描かれる「ウィリアム・ウィルソン」、「裏切る心臓」、「天邪鬼」。加えて、探偵ものの元祖と言われている「モルグ街の殺人事件」、その続編である「マリ・ロジェニの迷宮事件」とトリックが有名な「盗まれた手紙」を収録しています。  幻想的な部分などのために、初めは取っ付き難い本だと思うかもしれませんが、何度も読んでいるとその面白さに気付いてくると思います。小説内でしか描けない異常な世界が、私はひきつけられました。また探偵ものの3篇は、打って変わってミステリーとして十分読むことが可能です。「盗まれた手紙」は個人的にオススメです。未読でこれのトリックを解ける人はいないと思います。

    0
    投稿日: 2013.11.29
  • ハーモニー

    ハーモニー

    伊藤計劃

    早川書房

    調和がもたらす世界

    主人公であるトァンと、友人であり変わった女の子であるミァハが物語の核となっていきます。最初は主人公トァンの回想から始まり、2章に入ると物語上での現在に変わり、物語が進んでいきます。「虐殺器官」と同じように、主人公の目線で話は進んでいきます。小説内での世界観は徐々に判明していく形です。  ディストピア(ディストピアはユートピアの反対語です)小説ですので、難解な部分がありますが、非常に共感を持てる部分も多く、理解しながら読んでいけば面白かったです。訳が分かりにくい、話が難解などの理由から敬遠されがちなディストピア小説。しかし、いくつか読んだディストピア小説の中でも、比較的分かり易いし引き込まれると感じたのが本作です。このジャンルの入門としても良いと思います。

    2
    投稿日: 2013.11.27
  • 天使と悪魔(上)

    天使と悪魔(上)

    ダン・ブラウン,越前敏弥

    角川文庫

    ラングドン教授の記念すべき初登場作

     「ダ・ヴィンチ・コード」が先に映画化されたのであちらが先の作品と思っている方がいますが、こっちが最初です。「天使と悪魔」→「ダ・ヴィンチ・コード」→「ロスト・シンボル」→「インフェルノ」(今月発売。早く読みたい!)という順番です。どの作品から読んでも特に問題はなく、ついていくことは可能です。  Readerで読んでいませんが、文庫版のページ数は、上・中・下も大体300ページ弱です。科学VS宗教というのが今作のテーマです。謎解きありアクションありのエンターテイメント作品としては、とても面白い作品です。映画とは異なり、映画では描けないものを小説版は感じさせてくれます。

    1
    投稿日: 2013.11.26
  • 高熱隧道

    高熱隧道

    吉村昭

    新潮社

    この小説で出てくる労働者たちが、今の日本を形成した

     トンネルを通す。そのために、これほどの命が失われていたとは・・・。正直読後は、あまりいい気分で終わらなかったです。しかし、吉村昭氏が記録文学として残さなければ、決して知ることは無かったでしょう。  地熱に加え、労働者の宿舎に起こる大災害。このようなことが起きたら、現在は確実に、トンネルなど掘れません。しかしまるで、とり憑かれたかのように、工事を続けます。これほどの執念が無ければ、自然を切り開くことなどできなかったでしょう。記録文学として素晴らしい小説でした。

    2
    投稿日: 2013.11.25
  • 寄生獣(1)

    寄生獣(1)

    岩明均

    アフタヌーン

    「寄生獣」のタイトルの意味の深さが最終巻まで読むと分かります。

     ある日高校生である新一は、ベットでくつろいでいると、蛇のような生物がいるのに気づく。その蛇を殺そうとするとなんと腕に取りついてしまう。蛇ではなく寄生生物だったのだ。その日以来彼は、右手に寄生した生物を「ミギー」と名づけ、共に生活をせざるを得なくなる。そして同時に、世界各地で人がミンチにされる殺人が多発し・・・。  みなさん「深い」とおっしゃていますが、巻が進むとその深さが解ってきます。一巻では「寄生獣」という物語の序章です。正確には、主人公とミギーの出会い、そして寄生生物と新一(+ミギー)との闘争の幕開けです。戦闘シーンも迫力がありますが、それよりもこの作品は、ミギーと新一との会話や新一の葛藤が重要で考えさせられます。人を喰うシーンなどグロが苦手な方は注意してほしいですが、話はとても面白いです。小説のような素晴らしい読後感を感じました。

    2
    投稿日: 2013.11.25
  • 日本人の英語

    日本人の英語

    マーク・ピーターセン

    岩波新書

    メイド・イン・ジャパンの英文と本場の英文はこんなに違う

     冠詞や数詞、そして過去形や進行形など英語を扱う上で、日本人がよく間違える所を網羅した本です。新書ですので、辞書のような堅苦しい説明はなく、なぜおかしいのかを、実例を交えたりしながら分かり易く説明してくれます。単語の前に置くinやonなどが違うとなぜダメなのかのところが面白かったです。全く違うニュアンスになるのには、驚きでした。  こんな英語の授業を受けたいと思いました。読むにつれ、英語的発想とはこうなのだと分かってくると思います。英語が得意な方も英語に苦手意識がある方にも読んでもらいたいです。

    0
    投稿日: 2013.11.22
  • ABC殺人事件

    ABC殺人事件

    アガサ・クリスティー,堀内静子

    クリスティー文庫

    アルファベット順で殺害していく意味は?

    アルファベット順で殺害されていくという異常な犯罪に挑むポワロ。灰色の脳細胞をフルに使い事件を見ていきますが、殺人は止まることなく続いていく。この事件のために、次のアルファベットの地域で、次のターゲットと成りうる人々は、安全や安心などは皆無です。一体犯人は何のためにこのような殺人をするのだろうか?  殺害方法はもちろんですが、殺害をする動機がこれほど読者の想像を超えるものは無いのではないでしょうか。クリスティが「ミステリの女王」と言われるのも納得です。こんな小説普通の人には書けません。少しでも興味がある方は、読んではいかがでしょうか?ものすごく面白いです。

    1
    投稿日: 2013.11.22
  • 「本屋」は死なない

    「本屋」は死なない

    石橋毅史

    新潮社

    書店員が直面する厳しく難しい現実

     書店員の方や元書店員の方が、自分なりに考える本の売り方、本屋の存在意義などについて記した見聞録です。本屋さんが直面している現実に加え、棚創りやお客さんとのコミュニケーションなどの業務に関することや、現在書店がどのようなシステムによって、運営されているのかも知ることが出来ます。  ルポであるため、筆者が考える凝り固まった意見などはありません。しかし書店員の方が言うことはほぼ一致しています。「本を売るのではなく、お客さんの手元に届ける」ことです。時間を潰す為、勉強のため、通勤通学用で、興味があるもしくは好きな作家だから・・・などというような理由から、読者は本自体は詳細に見ていますが、書店は一切見ていないことに気付かされました。本屋はどうあるべきか、書店員だけでなく、読者といった利用者も考えることが必要なのではないかと感じました。読書が好きな方、本屋さんに憧れているまたは働きたい方は、ぜひ読んでいただきたいと思いました。

    1
    投稿日: 2013.11.21
  • 進撃の巨人(1)

    進撃の巨人(1)

    諫山創

    別冊少年マガジン

    サントラからハマった男。

     絵に好き嫌いがあるようですが、私は平気でした。巻数が進んでも、絵に劇的な変化は無いので、不安な方は、サンプルを見てから購入を検討してみてください。あと、手足の欠損表現があります。    主人公エレンの成長や巨人との戦い、徐々に判明する巨人の謎など話の内容としては、グイグイ引き込まれる魅力があります。作品の時代設定や作中の兵器についても段階的に、説明が加わっていきます。私個人としては、かなりの確率でキャラが生き残る(死なない)マンガに嫌気がさしていたので、登場キャラがかなり死亡するのが、斬新で良かったです。人によっては好きなキャラが無残な死に方(食われたり、潰されたりなど)をするので嫌かも知れませんが・・・。過去編も短めなので中だるみもなく、物語が進んでいきます。おそらく近年を代表するマンガとなると思うので、興味のある方は読んでみてください。

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    投稿日: 2013.11.20
  • 半落ち

    半落ち

    横山秀夫

    講談社文庫

    完落ちではない、半落ち

     アルツハイマーの妻を殺害したと自首した、現役の警察官である梶。人柄の良い警察官だったが、とある理由から妻が「殺してくれ!」と懇願したために殺害したという。しかし自首するまでの、空白の2日間に関しては、頑なに口を閉ざす。完全に落ちない、「半落ち」である。動機も殺害も認めているのに、なぜその間の話は話せないのか・・・? そして警察の上層部はこれを重く受けとめ、意地でも落とせと担当の捜査官に迫ります。完全に落ちていないのに、検察に送るのか?これに疑問を持つ現場と上層部との間に亀裂が生じます。梶はどうなってしまうのか?  固定された主人公ではなく、捜査官や検察官など様々な人物の目線から、事件を見ていくこととなります。徐々に判明する梶の素顔。怪しげな目撃情報から、批判をするマスメディア。これらから少しずつ梶の行動が判明していきます。最後はきれいに締めくくられます。梶が胸の奥底に秘めていた思いは、読んで確かめてみて下さい。

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    投稿日: 2013.11.20
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