nannryouさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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制御工学の考え方 産業革命は「制御」からはじまった
木村英紀 / ブルーバックス
制御を数式抜きで説明し、先端研究の一幕をのぞくことができる
7
制御工学は入力、出力、伝達関数の学問であるわけですが、実社会での運用が透けて見えて興味がわきました。
数式があまり乗っていないので、伝達関数までわかっていて、先端応用例を検索できる人にとっては、そこま…で興味が持てる内容ではないかもしれませんが、産業革命から、核融合炉、経済学への伝達関数の応用とロボティクスの未来と本質的なフィードバックを考えさせてくれるよい本だと思います。
しかし、2050年までに人間のサッカーチームに勝てるロボットチームを作るのは無理じゃないでしょうか?
もちろん、リミッターを外した力任せのシュートとかが許されるなら別ですが…。
星5つ。 続きを読む投稿日:2017.03.03
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経済数学の直観的方法 確率・統計編
長沼伸一郎 / ブルーバックス
確率微分方程式と伊藤のレンマ
7
非常に分かりやすく本質が絞られた本だと思う。
特に絶対値とばらつきを使った導入から伊藤のレンマへの持ち込み、微積分の合成積分を使った特性毎の分割への到達はこの分野に興味を持ちながら手をこまねいている読…者には天啓のように響くように思う。
最後のルベーグ積分の説明も良かった。
良書です。
星5つ。 続きを読む投稿日:2017.01.01
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神が愛した天才数学者たち
吉永良正 / 角川ソフィア文庫
歴史の大きな流れが見える…。
7
結局、主たる学問の金字塔は、ギリシャ文明とその後継者である西洋文明が行ってしまった後であるのかなあと思います。
ベルの数学を作った人々の方がレベルは高いです。
日本人が数学史、科学史を読んでもピンと来…ないのは、産業革命と数学の黎明期と無縁な島国であったことも一因ではあるでしょう。
はっきり言えば、朝廷の官位が何位の祖先がいるとか、そういった無意味なことを誇りにして、人類文明の発展への貢献が軽く見られている現代日本の現実があります。
西欧には、さかのぼれば幕臣であったり、御家人であったりすることと同じように、そうそうたる学問の帝王たちの子孫が現存するわけで、そういった知の系譜が決して命を賭けただけの武人の子孫に劣るわけではないわけです。
で、何を言いたいかと言えば、源氏物語や、平家物語、太平記と同じように、高木貞治、岡潔、広中、伊藤と言ったそうそうたる数学者の著述や、湯川、朝永、江崎といった物理学者の著述には現代を支える価値があり、必須の教養として知る必要があるということです。
こういった数学史を俯瞰する作品から、現代文明社会の構成員として世界を構成する諸要素が形作る「現代教養」への橋渡しがなされることは素晴らしいことだと思うわけです。
過ぎ去った過去が今も息づく人類の英知に!
星5つ。 続きを読む投稿日:2016.11.13
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時間の不思議 : タイムマシンからホーキングまで ムムッ、虚時間?
都筑卓司 / ブルーバックス
物理学は…深い…。
7
ブルーバックスは良い。特に物理と数学は良い。虚時間やら4次元のピュタゴラスの定理だったり、どこかで聞いたことのあるような言葉が改めて現れるさまを見るのは良いです。知的好奇心が満たされたような満たされな…いような。ちなみにエネルギー・運動量テンソルを眺めていると、僕は、宇宙の質量問題も応力テンソルでの記述で解決できるのではないかなあとか思ってしまう。ともかく理系の方は実地に計算するから偉い。人類の進歩を祈って星5つ。 続きを読む
投稿日:2015.10.31
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TAP
グレッグ・イーガン, 山岸真 / 河出文庫
イーガンの初期作品
7
グレッグイーガンの初期作品です。
ギミックは相変わらず冴えていますし、医学、ITの知見を基にしたシナリオとミステリー性はずば抜けているように感じました。
もちろん、ミステリー性では子供のころ読んだシャ…ーロック・ホームズやルパン三世、その他のミステリーの金字塔には及ばないでしょう。ですが、SFを技術、知識、新規性、そして美しさと見た複合アーツと見た時、この作者の作品はある面でそれらの金字塔を超えているように感じます。
日本ではSFの評価は低いですし、進歩的世界観で批判にさらされる強い宗教もありません。そして国家制度上も明治維新と敗戦で階級的な縛りが無いため、自由な芸術にあまり関心は集まらないのでしょうが、えり好みせず一冊でも読んでみるべきでしょう。
星5つ。 続きを読む投稿日:2016.12.18
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益川英夫と科学の仲間
日本の科学者編集委員会 / 本の泉社
戦後の終わり
7
ノーベル物理学賞の益川氏を中心としたエッセイを一冊にまとめた本です。
戦前世代の教授陣がいなくなったこれからの世界を分析するとき、理想と計算のギャップを埋める知の世界での冷静な分析が必要不可欠になるこ…とでしょう。
博士課程の5年間をフェーズ分けして目標の達成度を測るなど、練磨され選抜された教授の中でも特に成果をあげたノーベル賞受賞者の含蓄の深い分析には感銘を受けました。
基礎研究の減少とイノベーション分野への投資の集中は現在に価値を置くか、未来に価値を置くかで全く違った見方になります。
持続可能な社会というとき、私たちは多少なりとも未来に価値を置きます。
その時必要なのは過去、現在における種への投資であり、農業ほども成果がでないように見える知識への投資が必要なのだなあと感じました。
星5つ。 続きを読む投稿日:2017.01.08