
日本合戦譚
菊池寛
文春文庫
大きく評価が変わった武将
作者菊池寛の時代と現在を比べて一番大きく評価が変わった武将は楠木正成.楠木正行親子への評価だろう。菊池寛の時代は大楠公小楠公ということで手放しで称賛されていたのだが、現在は劣悪な南朝方の君臣にいいように使われて戦死してしまった被害者 というような扱いもされている。現代的な解釈のほうが私には腑に落ちる。
0投稿日: 2025.01.14屋上の狂人
菊池寛
青空文庫
人の幸せとは?
知的障害を持った人の幸せとは?ということについて正面から描いた短編戯曲である。現在でも知的障害者は敬遠され気味であるが、ましてや菊池寛の時代では「狐憑き」と言われて爪弾きにあっていた。その時代にこのような作品を書いた菊池寛に敬意を表したい。
0投稿日: 2025.01.14父帰る
菊池寛
青空文庫
家族各々の気持ち
二十年前に家出をした父親の帰宅に対する家族各々の気持ちをメロドラマ風のタッチで描き出している。実際に父親を知っているかどうかで態度が変わる ということにしているが、実際のところどうなんだろうか?結末を描いていない所が良いのかもしれない。
0投稿日: 2025.01.13若杉裁判長
菊池寛
青空文庫
我が身に降り掛かってくると
世間から超然として理想論を述べているような人が、現実に問題が我が身に降り掛かってくると、まるで違った言動を取ってしまう ということがしばしばある。この作品はそのような事態を端的に描き出している。被害者の立場からも見なくてはいけない、というあたり前のことであるが。
0投稿日: 2025.01.13室町無頼(下)(新潮文庫)
垣根涼介
新潮文庫
時代を作り 時代を壊す者たち
下巻は才蔵の修行の話から大きく発展して、土一揆の凄まじいまでの描写が中心となる。このような者たちによって、不安定だった室町時代は壊されてゆき、新たなる実力本位の戦国時代が作られていったんだな ということを示している好著である。それにしても読者をグイグイと引っ張ってゆく力は大したものである。
0投稿日: 2024.12.31室町無頼(上)(新潮文庫)
垣根涼介
新潮文庫
生き生きとした登場人物
古臭い表現であるが「作者の筆が踊っている」と感じられるほど、生き生きと登場人物を描きあげている。剣の達人や棒術の達人といったような、いわゆる兵法者が生まれたのが室町時代の戦乱期というのが納得できるストーリー展開である。それにしても凄まじい修行を迫力満点に描きあげている。
0投稿日: 2024.12.31後宮メイドの災難~人使いの荒い宮廷書記官と推理する~(2)
大野ちた,永井青
CLLENN COMICS
高まる危機
サスペンスタッチで高まる危機的状況を表現している。ヒロインが追い詰められてゆくなか必死に思い出そうと苦慮している様子がよく判る。しかし、絵柄が比較的端正なせいか、今一つ切迫感が盛り上がらないのが残念である。でも続きが気になるので、読者を引っ張てゆく力はあるのだと感じた。
0投稿日: 2024.12.31ルビンの壺が割れた(新潮文庫)
宿野かほる
新潮文庫
後半で話が壊れてゆく
中盤まではよくある恋愛モノの深刻版かなと感じていたが、後半でどんでん返しになるというよりは、ストーリーが壊れてゆく と表現したほうがあっているような作品だと感じた。中盤までのストーリーに伏線がはられていた形跡もないので、後半 ホント思いつきのように話を壊してしまっている と感じてしまった。
0投稿日: 2024.12.29物語で読む日本の刀剣150
かみゆ歴史編集部
イースト新書Q
トピックスの寄せ集め
古来から有名な日本刀を中心としたトピックスの寄せ集めである。読みやすくはあるが、解説の内容は通り一遍でそれほど深みはない。もっと対象刀剣の数を絞り込んで内容のある話をすべきだろうなと感じた。具体的なイメージを掴むためにももっと写真や図板があればよいと感じた。
0投稿日: 2024.12.29葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
文春文庫
騙された
ロマンチックな題名や冒頭の一節から恋愛小説かと勘違いしていたら、本格的ミステリー小説であった。語り部や時系列が頻々と入れ替わるせいもあるが、少し全体像がわかりにくい。そのせいもあって終盤の二転三転の活劇にすっかり騙され驚いてしまった。主人公のキャラクター設定に伊坂幸太郎を思わせるところがあるような気がした。
0投稿日: 2024.12.29