
ふることふひと 4巻
風越洞,壱村仁
MAGCOMI
ミステリーっぽくなってくる
話が単なる記紀制作秘話の域にとどまらず、主人公の出自の真相に関連するミステリーのようになってきている。なんせ記録伝承が不完全な千数百年前のお話なので、作者の自由な創作の入る余地が多く、とても面白いワクワクするようなお話に仕上がっている。あまり創作しすぎると単なるファンタジーになってしまう危険性があるが。
0投稿日: 2022.06.18センゴク権兵衛(24)
宮下英樹
ヤングマガジン
文禄の役 巨大組織の病弊
文禄の役を中心に描いた巻である。ロシアのウクライナ侵攻でもわかるように、戦争は始めるのは簡単でも終わらせるのはとても難しい。トップが老化してそれを助けるべき周辺の人間が忖度に汲々としているという巨大組織の病弊をあからさまにしている。時代が変わり組織が変わっても人間のやることに大差はないのだなと思い知らされる。ただ、武将の絵がついた解説文 説明文と言った感じでコミックとしてみた場合、面白さはあまり感じられない。
0投稿日: 2022.06.12逃げ上手の若君 1
松井優征
週刊少年ジャンプ
ギャグとシリアスの配分が
日本史の中でも屈指の荒れた時代である南北朝時代を背景に、北条時行というそこまで有名でない人物を主人公にしている。血なまぐさい戦いの場面の連続だが、少年漫画っぽい絵柄でギャグとシリアスの配分がなかなかに良く、あまり残虐性を感じさせない。
0投稿日: 2022.06.11罪
早見慎司
e-NOVELS
改題したほうが良いか
東京壊滅というとすぐに感染症を想起させるが、この作品は意表を突くアイデアで東京壊滅を実現している。短編小説はオチの切れ味が命だと思っているが、この作品もその例にもれない。ただもう少し印象的な言葉遣いが欲しかった。題名は「罪」などというありふれたものではなく、オチを暗示させるもの方法が良いのではないか。
0投稿日: 2022.06.10龍と苺(7)
柳本光晴
少年サンデー
どんどん勝ち進む
ヒロイン苺がどんどん勝ち進む様子を勢いよく描き出している。いくらなんでも中学生が と思う気がないではないが、音楽や数学や碁 将棋のようなものは、本当に天分に影響されるところが大きいので、完全な絵空事とは思えない。同じ作者で文学をテーマにした「響」より、勝ち負けがはっきりした将棋のほうがストーリーがわかりやすくてよい。
0投稿日: 2022.05.31傷はぜったい消毒するな~生態系としての皮膚の科学~
夏井睦
光文社新書
実際に怪我をして
実際に真皮が剥がれるほどの怪我をして外科医に行ったら、この湿潤療法で治療してくれた。かなり深い傷であったので痕は残ったが比較的早く、しかも痛くなく傷がふさがった。本書の書き方にはかなり反感をかうような胡散臭いところがあるが、主題である湿潤療法は正しいようである。それにしても医学の常識はどんどん入れ替わってゆくのだな ということを実感した。
0投稿日: 2022.05.30科学するブッダ 犀の角たち
佐々木閑
角川ソフィア文庫
科学と初期仏教
宗教 仏教は、来世の平安を願い という印象を持っていたが、釈尊はそのようなことは説いていない。 遥かに実践的論証的という下りはとても新鮮であった。今 我々が仏教として信じているものは、後世の坊主たちが釈尊の名を借りていろいろ付け加えていったものにすぎないということがわかった。現代科学の基本的な考え方と釈尊の教えは共通する底流があるのだなとしみじみ感じた。
0投稿日: 2022.05.30比羅坂日菜子がエロかわいいことを俺だけが知っている。(5)
紺矢ユキオ
電撃コミックスNEXT
ファンタジーになってしまった
身近にいるエロ可愛いヒロインとの話がなんだか異世界ファンタジーになってしまい興味を失ってしまった。絵柄は相変わらずとても綺麗でエロ可愛いのに、なぜ作者がこのようなストーリー展開にしてしまったのか、意図が全く不明である。異世界ファンタジーなのでなんでもアリの安易な構成になってしまっている。
0投稿日: 2022.05.24君が夏を走らせる(新潮文庫)
瀬尾まいこ
新潮文庫
主役は鈴香ちゃん
振る舞いの一つ一つが愛らしくも腹ただしい、1歳10ヶ月の鈴香ちゃん。ずっと昔の子育てをしていた頃を思い出してしまった。登場人物が好人物ばかりでやや現実離れしているような気もするが、ほんわりとした読後感はとても心地よい。回収されていない伏線(和音)との関係がどうなるのか少し気になる。
0投稿日: 2022.05.24青年少女よ、春を貪れ。 5
山田シロ彦
週刊ヤングジャンプ
一応の謎解き完了
最終巻第5巻目で一応の謎解きが完了したことになっているが、今ひとつスッキリとしない。芥川龍之介の「藪の中」のように真実は人によって違う のかもしれない。絵柄がとても綺麗で、印象的な台詞がアチラコチラにあるのに、どうも雑然とした印象が拭えない作品であった。登場人物をもう少し減らして、ストーリーをもう少し絞り込んだほうがわかりやすい作品になったのではないか。
0投稿日: 2022.05.22