
会社を変える分析の力
河本薫
講談社現代新書
テクニックは数多ある書にお任せして、
現場力を生かし、向上させるのにデータ分析を活用しないともったいない。大阪ガスで様々なビジネス解析に従事してきたプロによる、分析テクニック抜きの分析活用法(あるいは分析担当者の活用法)と、分析者心得の数々。がめつく現場にこだわらないと、と諭された感じです。
1投稿日: 2016.06.30日本会議の研究
菅野完
SPA!BOOKS新書
これまで見えていなかった保守変質の優れた一分析
デモ・陳情・署名・集会…と民主的な市民運動を徹頭徹尾継続したのが非民主的な思想を持つ一群の人々であったこと。そしていま、安保法制成立後のプライオリティが緊急事態条項と家族の「保護」に移っていること。カルトとさえ言えない何者かの側面が垣間見える興味深い一冊でした。
3投稿日: 2016.06.22トルコ 中東情勢のカギをにぎる国
内藤正典
集英社学芸単行本
立ち位置を不断に移行していく国と観察者の緊張感が深い
複雑な問題をまず複雑なまま捉えることの大事さと難しさを痛感させられた一冊でした。世界はアメリカと日本だけで回っているわけじゃない。多方面の防衛や外交をいかに独自に展開できるかを考えるのに、中東のNATO加盟国であるトルコのケースは貴重です。
1投稿日: 2016.06.12イスラームとの講和 文明の共存をめざして
内藤正典,中田考
集英社新書
いまはとにかくシリアの大虐殺をなんとか…
異文化の理解と共生を説いてきたあの内藤先生が、イスラームとの共生は一旦保留と言わざるを得ない状況。ここ数年で顕わになってきた、西欧諸国が無毒化の理路を考えず悪魔・魔物を壊滅しようと考える傾向が、領域国民国家の宿痾なのだとしても、シリアの大虐殺よりも優先すべき課題がIS対応だという諸国の対応はいかにもおかしい。 さらに、イスラーム問題の最大の焦点は中露イラン対スンナ派テュルク系民族ベルトに移っている、との指摘には震撼せざるを得ない。犠牲がこれ以上でないことを切に願うばかりです。
1投稿日: 2016.05.28タックス・ヘイブン 逃げていく税金
志賀櫻
岩波新書
「パナマ文書」をかき消させてはいけない
元トップGメンによる、熱く広くコンパクトな解説書です。その問題は節税の仕組みだけではないことがよく分かります。繰り返される通貨危機の背景にあるマネーゲームを支えているのがタックスヘイブンであり、その所在は椰子の木が生える南国に限らない。領域国民国家体制の宿痾はここにも明らかで、いかに相克していくかが問われています。
1投稿日: 2016.05.20ビジョナリー・リーダー
北垣武文
ダイヤモンド社
エンパワーメントを成功に導くことは簡単で無いが、それが1番
産業革命が生んだマネジメントの時代がうまく機能しなくなってきているところ、リーダーシップの原点がそのビジョンにあることに立ち戻って考察する1冊。willを起点として能動的なネットワークを構築していくことの実践的な解析が興味深かった。ただ、帯の惹句はミスリーディングだ。
0投稿日: 2016.05.13シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧
エマニュエル・トッド,堀茂樹
文春新書
キャッチーなフレーズが多数。しかし…
訳者がツイッターなどで言われている通り、簡単な本ではなかった。 現下生じている様々な摩擦や崩壊が、社会構成の変化によって足下が崩れる予感に怯える様々な層の下方に向けて生じているようだ、と読むと日本も同じように思える一方で、そういうつまみ食いを拒絶する本でもあると感じます。 その他、スローガンのような短く興味深いフレーズが全編に散りばめられていますが、それを切り出すとあらぬ方向に行きそうで、とてもデリケートな議論の連続です。 正直なところ消化不良ですが、印象論からの距離の置き方を身をもって教える、密度の濃い一冊になっています。
3投稿日: 2016.03.26憲法改正のオモテとウラ
舛添要一
講談社現代新書
かつての保守政党の、健全な議論の姿
郵政解散前の、多様性と切磋琢磨のあった自民党において自主憲法草案が練られできあがるまでの議論と政治が、精緻に語られる。ここからほんの10年の間に一気に生じている変質に、あらためて暗澹たる気分になる。 中道から右派の改正議論が総まとめされているという面で、興味深い一冊でした(もっとも、この時代の左派は護憲一色なので改正議論は無かったかも知れない)。
1投稿日: 2016.02.28僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない(イラスト簡略版)
豊田巧,松山せいじ
ガガガ文庫
のんびり一人旅のはずだったのに、なんてうらやましい
ボーイ・ミーツ・鉄ガールズ@軽井沢、そしてバッタバッタの信州列車旅。テンポがよくて面白かった。 ちょうどこの辺りを20歳頃に列車でウロウロしていたので、ノスタルジーも感じました。
4投稿日: 2015.12.26Ten Years After
片岡義男
ボイジャー
いまなお見事なエンターテインメント
かれこれ30数年前、角川文庫の新刊が出るたびに追いかけていた片岡義男さんの作品が、ボイジャーで全著作電子化計画されていると知った。 プロジェクトを応援するか考えようと、昔、自分の関心が他に移った頃の一冊を読んで、自分が文字を読むリズムの基本がここにあると発見。支援していこうと決めたところです。
1投稿日: 2015.11.20