
konohaさんのレビュー
いいね!された数93
2001年宇宙の旅〔決定版〕
アーサー・C・クラーク,伊藤典夫
ハヤカワ文庫SF
映画の謎解きだけではない
「2001年宇宙の旅」はどうしても映画を抜きに考えることはできない。 映画では言葉による説明を省いてしまい、映像のみによって表現しようとしたため、難解な映画となったが、同時に映画史上に燦然と輝く傑作となった。 映画があまりにも素晴らしかったため、相対的に小説の価値が低く見られることになったようにも思われる。 久しぶりに読み返してみて、小説の方も決して映画に劣る物ではないと思った。 モノリスは何なのか? なぜコンピューターHAL9000は反乱を起こしたのか? そして、ボーマン船長はどうなったのか? 映画で謎となったことが小説では明らかにされている。 また、映画とは異なった楽しみもある。 映画では木星が目的地だったが、小説では木星の重力を利用して加速し土星へと向かう・・・ 映画の謎解きだけでなく、十分に楽しめる内容である。
12投稿日: 2013.10.15そして夜は甦る
原りょう
早川書房
フィリップ・マーロウの日本版
読み始めてすぐに「これは良い」と思った。 一つ一つの文章が良い。私立探偵・沢崎の視点で語られるので、沢崎の語り口が良いとも言える。 そして、それはフィリップ・マーロウを主人公とするレイモンド・チャンドラーの小説とよく似ている。 チャンドラーの小説と同じ感覚で読み進めていくことになった。 作者の原尞自身、レイモンド・チャンドラーの小説を愛読し、強く影響を受けているので、いかにもといった感じである。 フィリップ・マーロウはチェスが趣味で、一人で名人の棋譜を並べたりする場面があるが、沢崎は囲碁が趣味で新聞の囲碁欄を読む場面がある。このあたりにもチャンドラーへのオマージュが感じられる。
2投稿日: 2013.09.26