
ボヘミアンガラス・ストリート 第1部 発熱少年
平井和正,高橋有紀
e文庫
魅力的なキャラクター
インターネットが普及する前、パソコン通信の時代に発表された電子書籍の草分け的存在であり、著者の念願だったラヴ・ストーリーでもある。 著者が「きまぐれオレンジ★ロード」の再放送を見たことがきっかけで生まれた作品ということで、あちこちに「きまぐれオレンジ★ロード」へのオマージュが見られる。 夭折した詩人立原道造の詩がモチーフとして描かれており、作品中にも効果的に配されている。 主人公の円くんは飄々ぬけぬけとしており、重たいテーマのウルフガイや幻魔大戦など他のシリーズの主人公と違って、軽々としている。 円くん、ホタル、小雪、伊福部ほか登場人物がみんな魅力的であり、円くんやホタルに会いたくなると読み返してきたので、電子書籍化を待っていました。
2投稿日: 2016.03.18
インフェルノ(角川文庫 上中下合本版)
ダン・ブラウン,越前敏弥
角川文庫
今回のテーマは人口爆発
病院で目を覚ましたラングドンは頭部を負傷しているが、2日間の記憶を失っており、自分がなぜフィレンツェにいるかもわからないという状況でスタートする。しかも、謎の襲撃を受け、わけがわからないままに逃走することになる。 最初から波乱に満ちたストーリー展開である。 ダンテの「神曲 地獄篇」に導かれながら、フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブールと舞台を移しつつ、多くの歴史的建造物や美術品が登場するのは「天使と悪魔」や「ダ・ヴィンチ・コード」と同様である。 「インフェルノ」で問題となるのは人口爆発である。 すでにして人口は過剰になっているが、このまま増えていったら、食糧不足など事態は深刻であり、人口が激減しない限り、人類は生き延びることができない・・・ 中世ヨーロッパにおいては黒死病が猛威を振るって人口は抑制され、黒死病の後にはルネッサンスが到来した。黒死病が良い結果をもたらしたと考え、今また人類に同様のものをもたらそうと考えた者がいて・・・ 最後まで先が読めないので、後半は特に先が気になってページをめくる手が止まらなくなる。 ハラハラドキドキしても、最後はめでたしめでたしなんて安易な決着をつけるのではなく、まったく予想外のラストに驚かされる。 やっぱり、ラングドンシリーズはすごい!
9投稿日: 2016.02.25
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 下
ダヴィド・ラーゲルクランツ,ヘレンハルメ美穂,羽根由
早川書房
明らかにされるリスベットの過去
下巻もページをめくるスピードは止まらず、息もつかせぬ展開だった。 さて、スティーグ・ラーソンは3部作で一区切りをつけていたが、それでも謎の部分があって、それが第4部以降の展開の鍵となりそうだったが・・・ この第4部の下巻ではその部分に触れられていく。 リスベットの過去が明かされ、宿敵が現れる・・・ 「ミレニアム」は、今後、2017年に第5部、2019年に第6部の刊行が予定されているそうで、続編が待ち遠しい。
3投稿日: 2015.12.23
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 上
ダヴィド・ラーゲルクランツ,ヘレンハルメ美穂,羽根由
早川書房
世界的ベストセラーの続編
「ミレニアム」3部作の作者は死去しており、この第4部はまったく別の作家による続編である。スティーグ・ラーソンが執筆途中だったという第4部の内容は反映されていない、まったくのオリジナル作品。 ということで、はたしてこの第4部は3部作同様に楽しむことができるのか心配もあった。 が、読み始めると、あっさりと引き込まれて、ページをめくる手が止まらなくなった。 上巻が読み終わったところだが、まったく違和感なく読めた。予備知識がなければ、別の作家による作品とは気がつかない可能性も大である。 これなら大方の読者には歓迎されるのではないかと思われる。 下巻も楽しみ・・・
10投稿日: 2015.12.21
ぼくのメジャースプーン
辻村深月
講談社文庫
主人公の少年、少女がいいな~
ウサギを惨殺し、第一発見者の少女を馬鹿にした犯人に対して主人公の少年が発した言葉に驚かされる。決して褒められるようなことではないけれど、そこまでやってしまう・・・好きですね。 この本読むのは2度目だけれど、肝心なポイントを忘れてしまっていたので、初めて読んだのと同様に楽しめました。 この少年、実は見かけよりも頭がいいし、すごいな~
0投稿日: 2015.09.13
スロウハイツの神様(下)
辻村深月
講談社文庫
辻村さんの本の中で一番好き
上巻は登場人物紹介的な部分がけっこう長いですが、下巻になると物語は一気に動いていきます。 自分も一緒に暮らしたくなるような魅力的なキャラクターたち。 中でも悲惨な少女時代を過ごした赤羽環とチヨダコーキの2人には注目。 読むのは2回目ですが、やっぱりじーんときます。 読後感も最高でお薦めの作品です。
1投稿日: 2015.09.05
原発ホワイトアウト
若杉冽
講談社文庫
現役キャリア官僚による告発小説
小説としておもしろいというのとははちょっと違うかもしれない。単なるフィクションだったら、不愉快に思うだけで終わったかもしれない。しかし、これが現役キャリア官僚が匿名で書いた告発小説となると受け取り方もまったく変わる。 東日本大震災を期に脱原発へと向かいかけたのが、政権交代によってあっさりと原発再稼働へと転換した。この小説を読むと、その辺の裏が見えてくるようである。 自らの利権のために原発再稼働へ向けてひた走る政官財が生々しく描かれている。そして、原発再稼働に反対の知事を陥れて排除していくのも、現実的で空恐ろしい。
2投稿日: 2015.07.15
ファウンデーション
アイザック・アシモフ,岡部宏之
ハヤカワ文庫SF
海外SF最重要作品の一つ
クラーク、ハインラインとあわせて三大SF作家の一人アシモフの代表作。 心理歴史学者ハリ・セルダンは銀河帝国の崩壊とそれにつづく3万年の暗黒時代を予言。第2帝国ができるまでの期間を1000年に短縮するため、2つのファウンデーションを設立した。 第一部は第一ファウンデーションの話。科学者の集まりで、何の軍事力を持たないファウンデーションが周辺の星々を支配していく過程を描く。 ファウンデーションに数十年ごとに訪れる危機。決して容易に対応できるようには思えない故に危機なのだが、それぞれの危機に対する唯一正しい選択をすることにより見事に危機を回避していく。英雄の登場を期待するのではなく、歴史的、必然的にそのような経過をたどっていくのである。 ファウンデーションシリーズは1950年代に三部作としてまとめられたが、その後1982年以降に続編が書かれることになった。 初期の三部作は、第二部、第三部と巻を追うごとに確実におもしろくなるので、是非まとめて読んでほしい。
3投稿日: 2015.04.15
幻魔大戦 20 光芒の宇宙
平井和正
角川文庫
第一期完結
第一期完結とはいうものの、物語の方は何も終わっていない。この後、第二期幻魔大戦はタイトルを「ハルマゲドン」と変えて3巻まで刊行したところで中断。この中では、読者の信を試されるような衝撃的エピソードが・・・。また、「ハルマゲドンの少女」においては、さらにその数ヶ月後が描かれており、想像を絶した展開を見せる。
1投稿日: 2015.01.06
幻魔大戦 16 光の記憶
平井和正
角川文庫
光の記憶を取り戻す
東丈不在のまま進行するGENKEN箱根セミナー。井沢郁江さんが驚異的にしっかりして代理を果たし、そして驚くべき公演を行う。なお、副題の「光の記憶」とは転生輪廻の過去世における記憶のことであろう。
0投稿日: 2014.12.30
