
ピルグリム〔2〕 ダーク・ウィンター
テリー・ヘイズ,山中朝晶
ハヤカワ文庫NV
恐るべきテロ計画とその追跡
1巻では、〈ピルグリム〉と〈サラセン〉のバックグラウンドが語られる部分が多かったが、2巻からはいよいよ本格的に進行する。 〈サラセン〉の恐るべき計画が明らかにされるが、彼の名前もわからなければ、どこにいるのかもわからない。ほとんど追跡不可能かと思われる相手を追う〈ピルグリム〉。 読み進めていくほどにおもしろくなる。
2投稿日: 2014.11.16武士道シックスティーン
誉田哲也
文春文庫
武士道とは
「武士道シックスティーン」は高校女子剣道をテーマにした小説で、「武士道セブンティーン」、「武士道エイティーン」と続くシリーズをなしている。宮本武蔵を心に師と仰ぐ香織は敵を斬るのが目的というような怖い女子高生だが、早苗はまったく対照的でお気楽不動心の持ち主。全く対照的なこの2人が主人公である。 剣道にまったく興味がなくても、この小説はおもしろい。タイトルに「武士道」とあるように、単に青春・スポーツものの話ではない。主人公の香織も武士の仕事は相手を斬ることではなく、戦いを収めることであると身をもって学んでいく。単に強くなるのではなく、確かに成長しているな~ というわけで、楽しくて、全3巻、あっという間に読んでしまった。
1投稿日: 2014.07.04空中ブランコ
奥田英朗
文春文庫
笑っちゃう
精神科医・伊良部を主人公とした連作短編小説。 伊良部はカウンセリングを受けようと思って来た患者に、「話をしただけで治るわけない」と言ってしまうのだから、まともな医者ではない。注射が好きで、患者にはとりあえず注射するのだが、看護師マユミが注射するのを興奮しながらじっと見ているのである。子どもがそのまま大きくなったような人間で、空中ブランコ乗りが患者としてやってくれば、自分も空中ブランコをやりたいと言って実際にやってしまったり・・・ まったく笑っちゃうような話ばかりで、おもしろい。 第131回直木賞受賞作というのも驚き。直木賞は大衆小説を対象とした文学賞だからいいのか。
1投稿日: 2014.07.043001年終局への旅
アーサー・C・クラーク,伊藤典夫
ハヤカワ文庫SF
シリーズ最終作
シリーズ完結編というよりは最終作というべきか。(タイトルはファイナル・オデッセイとなっているものの、このさらに続編というのもあり得たストーリーである。) ここでは「2001年宇宙の旅」でコンピューターHAL9000の反乱により死亡し(たと思われ)、宇宙空間を漂っていったフランク・プールが発見され、蘇生するところから始まる。 フランク・プールを主人公にして、1000年後の世界が真実味を持って描かれる。 そして、今作では、かつてモノリスを地球に設置した存在が問題となる。 かつて人類を進化に導いた存在は、その成果(つまり地球人類)をどう評価するのか? 2001年以降の続編を読んできたら、これも読まずにいられないでしょう。
4投稿日: 2014.02.012061年宇宙の旅
アーサー・C・クラーク,山高昭
ハヤカワ文庫SF
シリーズ3作目
前2作と比べると読後の印象が希薄だったのは否めない。このさらに続編の「3001年」のほうが印象に残った。 さて、今作では老いてなお元気なヘイウッド・フロイドがユニバース号で再接近したハレー彗星へ向かう一方、孫のクリスの搭乗するギャラクシー号が禁断の星エウロパに向かい、そして事件が起きるのだが・・・ お馴染みのモノリスにボーマン、そしてハル・・・ラストはなかなか興味深いです。
1投稿日: 2013.12.052010年宇宙の旅〔新版〕
アーサー・C・クラーク,伊藤典夫
ハヤカワ文庫SF
期待を裏切らない「2001年」の続編
「2001年宇宙の旅」の映画の印象があまりにも強烈なので、続編はどうか? と思う人もいるかもしれないが、小説版の「2001年宇宙の旅」が良かったと思う人なら、決して期待を裏切らない内容だと思う。 「2001年宇宙の旅」から進化・発展した壮大なストーリーです。
4投稿日: 2013.11.16ミレニアム2 火と戯れる女(上・下合本版)
スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,山田美明
早川書房
リスベット、かっこよすぎます!
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」でミカエルが雇った調査員リスベット・サランデルが主役になって再登場する。 義務教育を修了しておらず、無能力者として後見人が付けられているが、その実、優秀な調査員であり、ハッカーであるリスベット。強烈な個性の持ち主だが、非常に謎の多い女性であるリスベットの秘められた過去が明らかにされる。 たった一人で世界を相手に戦おうとするリスベットが実にかっこいい。 まったく、「ミレニアム2」におけるリスベットには完全にまいってしまった。 そして、終盤における衝撃の展開には「え~~~っ! そんな~~~っ!?」 これはスゴイ!
0投稿日: 2013.11.09ロスト・シンボル(上)
ダン・ブラウン,越前敏弥
角川文庫
ラングドン・シリーズ第3作
「天使と悪魔」や「ダ・ヴィンチ・コード」を読んだ後では、いまひとつ物足りなく感じてしまうのは否めない。 あまりにも期待が大きすぎたせいかもしれない。 とはいえ、あらためて読み返してみると、フリーメイソンをテーマにした第3作もなかなかおもしろかった。 なお、電子書籍版には紙の書籍についている写真などは収録されていないので、「メランコリアⅠ」などはネットで検索してみておくといいです。
0投稿日: 2013.10.20天使と悪魔 Special Illustrated Edition
ダン・ブラウン,越前敏弥
角川書店単行本
ジェットコースター
導入部からいきなり引き込まれて、ページをめくる手が止まらなくなる。 息つく暇ないストーリー展開であり、たった一日にこれだけの事件が詰め込まれているというのもすごい。 この小説に登場するローマの美術品や建築物などは事実に基づいて書かれており、ストーリーに真実味がある。イルミナティに関する記述は作者の創作のようだが、読んでいると本当らしく思えてくる。 終盤のどんでん返しやら、あっと驚く展開はまったく見事というほかない。 ビジュアル愛蔵版で、多くの写真が収録されており、このストーリーをよりよく理解するのに役立っている。
0投稿日: 2013.10.20ダ・ヴィンチ・コード Special Illustrated Edition
ダン・ブラウン,越前敏弥
角川書店単行本
聖杯伝説
聖杯伝説といってもキリスト教に馴染みのない日本人の場合、インディ・ジョーンズを思い出す程度だろうか。 しかし、インディ・ジョーンズの聖杯伝説ほど単純ではなく、非常に意味深い。 ここで明らかにされる歴史的事実には驚かされる。これが明らかになれば世界がひっくり返ってしまう! キリスト教会にとっては、とんでもない物議を醸しそうな内容であり、実際にこの小説がどのように受け止められているのか気になるところである。 それはともかく、読みやすく、しかも知的興奮を伴う小説で、ページをめくる手が止まらなくなってしまう。 これを読んで、ルーヴル美術館に行ってみたくなった。
3投稿日: 2013.10.16