konohaさんのレビュー
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2001年宇宙の旅〔決定版〕
アーサー・C・クラーク, 伊藤典夫 / ハヤカワ文庫SF
映画の謎解きだけではない
12
「2001年宇宙の旅」はどうしても映画を抜きに考えることはできない。
映画では言葉による説明を省いてしまい、映像のみによって表現しようとしたため、難解な映画となったが、同時に映画史上に燦然と輝く傑作と…なった。
映画があまりにも素晴らしかったため、相対的に小説の価値が低く見られることになったようにも思われる。
久しぶりに読み返してみて、小説の方も決して映画に劣る物ではないと思った。
モノリスは何なのか? なぜコンピューターHAL9000は反乱を起こしたのか? そして、ボーマン船長はどうなったのか?
映画で謎となったことが小説では明らかにされている。
また、映画とは異なった楽しみもある。
映画では木星が目的地だったが、小説では木星の重力を利用して加速し土星へと向かう・・・
映画の謎解きだけでなく、十分に楽しめる内容である。 続きを読む投稿日:2013.10.15
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ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 上
ダヴィド・ラーゲルクランツ, ヘレンハルメ美穂, 羽根由 / 早川書房
世界的ベストセラーの続編
10
「ミレニアム」3部作の作者は死去しており、この第4部はまったく別の作家による続編である。スティーグ・ラーソンが執筆途中だったという第4部の内容は反映されていない、まったくのオリジナル作品。
ということ…で、はたしてこの第4部は3部作同様に楽しむことができるのか心配もあった。
が、読み始めると、あっさりと引き込まれて、ページをめくる手が止まらなくなった。
上巻が読み終わったところだが、まったく違和感なく読めた。予備知識がなければ、別の作家による作品とは気がつかない可能性も大である。
これなら大方の読者には歓迎されるのではないかと思われる。
下巻も楽しみ・・・ 続きを読む投稿日:2015.12.21
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インフェルノ(角川文庫 上中下合本版)
ダン・ブラウン, 越前敏弥 / 角川文庫
今回のテーマは人口爆発
9
病院で目を覚ましたラングドンは頭部を負傷しているが、2日間の記憶を失っており、自分がなぜフィレンツェにいるかもわからないという状況でスタートする。しかも、謎の襲撃を受け、わけがわからないままに逃走す…ることになる。
最初から波乱に満ちたストーリー展開である。
ダンテの「神曲 地獄篇」に導かれながら、フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブールと舞台を移しつつ、多くの歴史的建造物や美術品が登場するのは「天使と悪魔」や「ダ・ヴィンチ・コード」と同様である。
「インフェルノ」で問題となるのは人口爆発である。
すでにして人口は過剰になっているが、このまま増えていったら、食糧不足など事態は深刻であり、人口が激減しない限り、人類は生き延びることができない・・・
中世ヨーロッパにおいては黒死病が猛威を振るって人口は抑制され、黒死病の後にはルネッサンスが到来した。黒死病が良い結果をもたらしたと考え、今また人類に同様のものをもたらそうと考えた者がいて・・・
最後まで先が読めないので、後半は特に先が気になってページをめくる手が止まらなくなる。
ハラハラドキドキしても、最後はめでたしめでたしなんて安易な決着をつけるのではなく、まったく予想外のラストに驚かされる。
やっぱり、ラングドンシリーズはすごい! 続きを読む投稿日:2016.02.25
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幻魔大戦 1 幻魔宇宙
平井和正 / 角川文庫
生賴範義イラストの角川文庫版が奇跡的に復活
5
初めて読んだとき、こんなにも凄い小説があったのかと衝撃を受け、何度も読み返してきました。
元もと、当時スタートした「真幻魔大戦」を補完するために漫画版を小説として書き始めたものが3巻の途中から漫画版と…は変わってきて、4巻からは漫画版とは全く違った展開をたどります。
そんなわけで、3巻まではプロローグと思った方がよいでしょう。4巻から本格的にスタートとなります。
3巻までは漫画版と同様に宇宙の破壊者である幻魔に対して、地球の超能力者が集まって超能力で戦おうという話ですが、4巻以降は超能力では地球を救うことはできないという方向へ向かいます。主人公の東丈は救世主への道を歩むのですが・・・まったく予想もできないような展開をたどり、驚かされたものです。
「地球樹の女神」改竄事件の後、平井和正さんは角川文庫から撤退してしまい、復刊されることはないと思っていた生賴範義イラストの角川文庫版が奇跡的に復活。何か状況に変化があったのだろうか?
1月17日、76歳でお亡くなりになりました。もう新作を読めないのが残念でなりません。ご冥福をお祈りします。 続きを読む投稿日:2014.12.03
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3001年終局への旅
アーサー・C・クラーク, 伊藤典夫 / ハヤカワ文庫SF
シリーズ最終作
4
シリーズ完結編というよりは最終作というべきか。(タイトルはファイナル・オデッセイとなっているものの、このさらに続編というのもあり得たストーリーである。)
ここでは「2001年宇宙の旅」でコンピューター…HAL9000の反乱により死亡し(たと思われ)、宇宙空間を漂っていったフランク・プールが発見され、蘇生するところから始まる。
フランク・プールを主人公にして、1000年後の世界が真実味を持って描かれる。
そして、今作では、かつてモノリスを地球に設置した存在が問題となる。
かつて人類を進化に導いた存在は、その成果(つまり地球人類)をどう評価するのか?
2001年以降の続編を読んできたら、これも読まずにいられないでしょう。 続きを読む投稿日:2014.02.01
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儚い羊たちの祝宴
米澤穂信 / 新潮文庫
非情で残酷・・・そして衝撃的なラスト
4
上流階級のお嬢様が集う読書会「バベルの会」にかかわる5つの事件だが、基本的に独立したストーリーである。
いかにも上流階級のお嬢様然とした文章で綴られているが、非情で残酷な登場人物たち。
そして、衝撃的…なラスト・・・
特に「玉野五十鈴の誉れ」のラスト1行は秀逸である。
「うまいな~~~!」
「こういうオチか~~~!?」
思わずネタバレしたくなってしまうラストである。 続きを読む投稿日:2014.11.28