ナチ_コチ_ショチさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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出星前夜
飯嶋和一 / 小学館
飯島和一に外れなし。出星前夜も素直に凄い本だが、いかんせん寡作すぎ。
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紀伊国屋書店『飯島和一に外れなし』の書評とおり、一言“凄い本”だった。島原の乱の後半戦・原城跡の戦いの場面が長すぎる気もするが、多くは蜂起軍が鎮圧部隊(糞侍=幕藩体制そのもの)を良いように愚弄する場面…が多く、やはり、体制側 vs 抑圧された庶民と言う構図にあって、庶民側に氏の温かい目が注がれている。この対比は典型的な飯島ワールドだが、今回に限っては、蜂起軍に対して必ずしも100%好意的ではなく、喧嘩両成敗的なニュアンスの方が強い。どんな大義を持ってしても戦そのものが悪と言う事か。そんな中で脱・戦を果たしたジュアンの医師としての終生の活躍が最終章を温かいものにしている。 続きを読む
投稿日:2017.01.15
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神無き月十番目の夜
飯嶋和一 / 小学館文庫
題材こそは江戸時代の一村亡所(小生瀬村)を扱っているが、現在にも通じるテーマ。それにしても重いストーリー。
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飯島氏の小説は、いずれも読み応え十分。徳川幕府・黎明期の一村亡所(為政者の言いなりにならないところは、村中を無きものに)を描いたものだが、“従わざるもの”を従えようとする際に双方の少しずつのズレが積み…重なり、大きな諍いに発展することは、現在の地域紛争にもそのまま通じる。全体のストーリーは相当に重たいものだが、所々に挿入されているエピソードに助けられて、重ぐるしさを相殺するように進んでいく。藤九郎があっけなく亡くなるのは残念だが、その後登場する直次郎のエピソードが秀逸。『雷電本紀』『出星前夜』を積み読しているが、これらはもう少したってから。 続きを読む
投稿日:2015.10.31
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震える牛
相場英雄 / 小学館
大型ショッピングセンターの裏側を鋭く描いた社会派警察小説
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相場英雄氏作品の初読。かって問題になった牛肉偽装をベースに、駅前の商店街をシャッター街化してしまう郊外への大型ショッピングセンターのからくりも交えて、話は展開する。単なる推理物としての警察小説ではなく…、時代背景を巧みに切り取っているところが面白い。それにしても最後の警視庁一課長の悪ぶり・・・これも実際の警察機構(=国家公務員機構)の中に実在するか。お勧めの一冊。 続きを読む
投稿日:2014.02.08
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φは壊れたね PATH CONNECTED φ BROKE
森博嗣 / 講談社文庫
気軽に読める推理(謎解き)小説、旅のお供にいいかも。
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森博嗣作品の初読み。好きな人には根強い人気を持つ作家だと承知していたが、何故か避けてきた(学部こそ違え、同じ大学の先輩というのも敬遠してきた要因かな)。Gシリーズとの触れ込みだが、このシリーズは軽いタ…ッチの”謎解きが中心”のシリーズなのでしょうか(見当違いなら恐縮です)。文章は読みやすく、出てくるキャラクターも面白く、ストーリーもすんなりと頭に入る。あと数冊読んでから私なりの総評をしよう。ひとまず星3/5としました。 続きを読む
投稿日:2017.06.18
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星と祭 下
井上靖 / 角川文庫
エベレスト麓のタンボチェの観月行程の記述は、さすがに山岳に精通した大家だと思う。
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架山・大三浦とそれぞれ娘・息子を失った親の悲しみは、かくも深く、長く続くものかと思う。下巻の前半は、エベレスト麓での観月行程に大部分を割いているが、井上氏得意の山岳ものであり、山麓に暮らす人々の生活・…村の様子が生き生きと記述されていて読み応えがある。『永劫』という言葉を使い、山の自然・そこで暮らす人々を称したのは良くわかる気がする。最後に琵琶湖の満月を観ながら架山・大三浦のそれぞれの仮葬が明けるが、”星と祭”という小説名が分からなかった。 続きを読む
投稿日:2014.09.30
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とんび
重松清 / 角川文庫
久しぶりに出会った『屈抜きでいい』と思う本
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『この本はいい』理屈抜きの感想である。文学作品としての完成度がどうか、ストーリーテリングとしてどうか云々は別として、とにかく良かった、そして随所で涙をこぼした。私自身が、主人公・ヤスさんの後半生と同年…齢であるかもしれないが、本を読んでいて、思わず涙が出たのは久しぶり。今一度、自分は親として、あるいは子としてどうなのかを考えてみたい。 続きを読む
投稿日:2014.12.07