ナチ_コチ_ショチさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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翼をください 上
原田マハ / 角川文庫
第二次世界大戦前の史実をベースに、思いっきり作者の想像をふくらませて書かれたファンタジーの始まりです。
3
飛行機が登場して先進国の間で飛行距離競争をしていた頃の史実をベースにした原田マハ氏のほのぼのとしたファンタジー。それにしてもマハ氏に『ずるい』と言いたい。主人公であるエイミー・イーグルウイングが相当に…魅力的なおてんば娘として書いていると同時に、しっかりと彼女の敵・味方をものすごく分かり易く登場させている。しかも、アインシュタインや山本五十六を登場させるあたりは、小憎らしくもある。世界一周を目前にして消えてしまったエイミーやいかに、対してニッポン号はどうなるのか、下巻へ 続きを読む
投稿日:2016.12.19
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自閉症の僕が跳びはねる理由
東田直樹 / 角川文庫
発達の偏った人々へ、息苦しい世界かもしれないけれど、それなりに楽しく頑張れ!
3
我が家の長男も発達障害があり、幼少時に『自閉傾向』と診断されました。対して作者・東田君は“重度の自閉症”と言われていますが、こんなにも豊かな文章表現力があり、思考も感情もいわゆる健常者と何ら変わること…が無いことに気付かせてくれました。実は本書を読み進めるうちに、彼は知的な側面は比較的高い高機能アスペルが-ではないかと疑いましたが、本書の英訳者のあとがき(まさに健常者側)を読んで小難しい文ゆえに納得するあたりは、まだまだ発達障害を上から目線で見ている自分自身が情けなくもなりました。確かに長男を見ていると、人は誰でも能力は同じようなもので誰にでもそれなりの偏りがあり、この偏りが極端にある人々が、『発達障害(普通を押しつけられると我慢できない人たち)』と言われているだけの様な気がします。我が家の長男君も、それなりに生きにくい世の中だろうけど、楽しく頑張れ! 続きを読む
投稿日:2017.01.14
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流星ワゴン
重松清 / 講談社文庫
死んじゃってもいいかな・・・とやり直しの微妙な関係
3
家庭崩壊状態となり、前を向く力もない主人公は『死んじゃっても良いかな』と思う。橋本さん親子の運転する流星ワゴンに乗り、家庭崩壊に至った重要な分岐点を数か所訪れて、実際には気付けなかった分岐点でのやり直…しを経験する。現実にもどってみると、過去のやり直しは何の影響も与えていないが、主人公の心の在りようは、全く違ったもになり、再び崩壊した家庭から一歩踏み出そうとする・・・・。非常に過酷な現実を描写しながら、でも前を向いてという、最後は少しだけ光明の見える作品/秀作だと思う。 続きを読む
投稿日:2014.01.19
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火怨 下 北の燿星アテルイ
高橋克彦 / 講談社文庫
色々な側面をもつ小説家 : 高橋克彦氏の歴史小説
3
写楽殺人事件のような推理小説、竜の柩等の伝奇小説が主体の作家だと勝手に思っていたが、この小説は高橋氏に対する印象をがらりと変えることになった。上巻は痛快な蝦夷の戦争戦術で終わったが、下巻で坂上田村麻呂…が登場するあたりから、田村麻呂一派(朝廷側)とアテルイ一派(蝦夷側)の交流と戦における裏読みを中心に展開される。史実通りに、最後はアテルイ・母礼らが投降して戦の終了となるが、『蝦夷全体を救済するために、あえて負け戦を戦い投降するアテルイ』というストーリーには真実味を感じる。各登場人物の描写も丁寧にされておりリアリティーは十分。思わず涙という場面も多々あった。 続きを読む
投稿日:2014.08.24
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蜩ノ記
葉室麟 / 祥伝社文庫
登場人物たちの感情を抑制した“凛”とした文体、読後にじわっと来る感動が味わえる
3
私としては初めて読む葉室麟氏の小説。さすがに直木賞受賞作ではあると思う。氏の文章の特徴であろうか、一貫して凛とした文体であり、特に前半は登場人物たちへの感情移入を抑制したセンテンスが続く(人によっては…退屈に感じるかも)。終盤に入り、村の少年の死をきっかけに一気にクライマックスに突き進んでいくが、ここでも抑え気味の文体がむしろ心地良い。一気に涙腺が崩れることなく、読後にじわっと涙腺が緩む小説を久しぶりに味わった。 続きを読む
投稿日:2014.07.21
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血の轍
相場英雄 / 幻冬舎文庫
多少は誇張のある警察小説と思うが・・・ストリーは起伏に富み面白かった。
3
公安警察(ひたすら冷徹の世界)がここまで個人をマークしているのかと考えると不気味に思える部分はあったが、かって刑事部(ある意味、義理人情の世界)に所属した兄弟分の志水と兎沢が袂を分かち、理解しえぬ関係…になるのは痛々しくもある。ストーリーテリングとして読むには面白い小説だが、人によっては苦手な世界かもしれない。殺伐とした刑事vs公安の対立の中で、エピローグが秀逸。 続きを読む
投稿日:2014.06.24