
安徳天皇漂海記
宇月原晴明
中公文庫
哀れ日本と中国の幼帝の運命
源実朝に仕える人物を通して語られる第一部、場所を中国に変えマルコ・ポーロが語り部となる第二部で構成されたスケールの大きな歴史小説。壇ノ浦の合戦で入水した安徳天皇と元の皇帝・フビライ・ハンに追われた南宋の幼帝が登場する。当時の日本(鎌倉時代)と中国(元の時代)とを相互に絡み合わせてフィクションとして構成しており、発想はユニーク。実朝の詩歌を交えながら、史実として構成された第一部は読みやすかったが、ファンタジー色が強い第二部は骨が折れた。
1投稿日: 2013.11.09
東洲しゃらくさし
松井今朝子
幻冬舎時代小説文庫
そうだったのか!写楽は・・・
謎の絵師・写楽について、いろいろな作家が推理して描写してきた。この作品もその一つであるが、江戸文化が華々しく花開いた時期に突如現れ、突如消えていった写楽の実体が垣間見れる作品に仕上がっている。時代考証もなされており、周りを彩る人物もそうそうたるものである。ただ、物語の展開としてはちょっぴり物足りない感じがした。
1投稿日: 2013.11.09
幕末あどれさん
松井今朝子
PHP研究所
激動の幕末を生き抜いた二人の次男坊の物語
激動の明治維新を二人の旗本の次男坊を通して展開する不思議なストーリー。一人は剣術に長けているが、その道では飽きたらず、ふとしたきっかけで芝居にのめり込む。別の一人は尊皇攘夷に荒れ狂う江戸末期に最後まで幕府方につき、薩長軍と闘う武士を演じる。その二人の間には、何ら接触はないものの、前者は後者の兄や許嫁との偶然の関係が両者を結びつける。作者が得意とする花魁や芝居の世界がここでも登場する。
3投稿日: 2013.11.09
清須会議
三谷幸喜
幻冬舎
作中人物の個性が「語り」の中に豊かに表現されています
本能寺の変で失脚した織田信長の後継を巡って開催された清洲会議。その席上の居並ぶ4名の人物を中心に、その心理状況を作家がユーモラスに展開する。中心となる人物は豊臣秀吉。陰で糸を引く黒田官兵衛、秀吉を嫌うお市の方等の脇役の個性もおもしろい。今まで見たこともない語りで惹きつけてくれた。
21投稿日: 2013.11.09
