cozycozyさんのレビュー
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僕らのごはんは明日で待ってる
瀬尾まいこ / 幻冬舎文庫
切なく重く、でも軽やかで爽やかな作品
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文書のリズム、会話のリズム、言葉の選び方、ツッコミ、全てが心地よくて、内容は切なく重いはずなのに、爽やかでほんわかしたリズムに全てが気持ちよく包まれる。高校三年の「米袋ジャンプ」から始まる恋の物語。若…い2人の物語だけども、青臭い恋愛じゃなく、何歳でもあてはまる。ほろ苦く切なく悲しいのに、とっても温かい読後感で、いろんな人にこの本よかったよって勧めたくなる本でした。『悲しみをわかりあえる存在が与えてくれるのは安心だけで、一緒にいることで悲しみが薄まるわけではない。』 続きを読む
投稿日:2017.06.24
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彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?
森博嗣 / 講談社タイガ
人間と人工細胞の違いはいったいどこに
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森博嗣のSFシリーズ一作目。人工細胞で作られた生命体であるウォーカロン。人間との差はほとんどない。人工細胞によって人類はほぼ永遠の命を得たが、何故か子供が産めなくなった。ウォーカロンと人間を識別するた…めの研究をしていた教授が何者かに狙われる。人間とは何なのか、誰が何を守りたいのか。森博嗣作品はやはり会話がいい。SFは個人的に読者が歩み寄らないといけない作品だと思っているが、まさにそんな感じ。シンクロすると楽しい。続編をどうしても今すぐ読みたいとならなかったが、ゆっくり咀嚼してから続編へと手を出してみたい。
と感想の当初は思ったが、人工知能や人工機能のニュースなどを見るたびにこのストーリーを思い出したので、そろそろ続編が読みたい。 続きを読む投稿日:2017.07.15
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神様が殺してくれる
森博嗣 / 幻冬舎文庫
ロードムービーのような美しいサスペンス
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久しぶりの森博嗣作品。淡々と描写され、淡々と進むストーリーが、ロードムービーのようでもあって美しい。登場人物が外国人なので、モノクロの描写も似合うと思ったし、思い描くシーンはリオン以外はほぼモノトーン…の映像。ラスト数ページの展開がスリリングであるのに、どこか詩的な印象を受けたのは聴いてた音楽からかな。ゴリラズの新作の音楽がなぜか本とマッチしていた。衝撃のラストは賛否両論あるかもしれないが、個人的に好き。久しぶりに衝撃を受けた。 続きを読む
投稿日:2017.05.16
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小説 言の葉の庭
新海誠 / 角川文庫
アニメーションだからできること、小説だからできること
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素敵な言の葉たち。作者の映像をまだ見たことが無いけど、この本の空気感はとても好きで、映像を見てみたい。あとがきで、映像の方が雄弁たり得る、映像の方が情緒を喚起できるとあった。ここだけを読むと小説軽視の…ように感じるかもしれないけど、作者は、アニメーションにも小説にも片想いしている。だからこそ、それぞれへの想いが滲み出ているのかもしれない。映像から生まれる小説って当たり外れが多い気がするけど、この本は良かった。複数の視点で語られる恋の物語。万葉集の言葉の響きが全体を包み込んでいる。雨の庭っていいなー。 続きを読む
投稿日:2017.03.08
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バチバチ 壱
佐藤タカヒロ / 週刊少年チャンピオン
相撲漫画の金字塔であり、スポーツ・格闘漫画としても名作
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「死んで生きれるか!」相撲漫画の傑作だと思うし、スポーツ漫画としても熱く心が揺さぶられる名作です。相撲中継でも、視点が変わって、より深く感情移入して見れます。ある事件をきっかけに相撲界を追われ、この世…を去った大関・火竜。とにかく熱い相撲をとった火竜、その息子、鮫島鯉太郎も、孤独の中でも熱く強い芯を持っていたが、父の残したものに葛藤し、硬い殻に閉じこもってもいて、世の中全てが敵のようでもあった。その鯉太郎が、空流部屋に入って、熱く熱く成長していく物語。登場人物がみんな魅力的で続編を読まずにいられなくなります。一巻を読んでしまうと、全巻一気読みして、続編のシリーズ、さらに現在のシリーズへと誘い込まれます。でも、こんなに熱くさせてくれる漫画はなかなかないし、気持ちよく泣けるので、騙されたと思ってぜひ読んでほしいです。 続きを読む
投稿日:2017.03.06
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神々の山嶺(下)
夢枕獏 / 集英社文庫
とことんリアルな空気感
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熱い。心が温まるなんて熱さではなく、血が沸騰して自らの熱で燃えてしまいそうになるように熱い。山岳小説も冒険小説も歴史小説も、好きな本は全て同じような熱を持っていることに改めて気がついた。武士も、海の男…も、山の男も、死なないため、生きるために死ぬ気で挑む。苦悩や悲しみなど全てひっくるめて、覚悟を決め、生きるために命を削りながら闘っているから熱いのか。上巻では、山岳小説でミステリーと書きましたが、下巻はとにかく山岳小説。いろんな謎なんてどうでもよくなってくるくらい、命懸けの登攀のシーンに圧倒される。名作です。 続きを読む
投稿日:2016.02.18