多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織
マシュー・サイド(著)
/ディスカヴァー・トゥエンティワン
作品情報
読売新聞「本よみうり堂」にて紹介! (2021年9月26日 朝刊)
22か国刊行の世界的ベストセラー『失敗の科学』の著者による待望の新作!
経営者からメディア、著名人までもが大絶賛!
なぜグッチは成功しプラダは失敗したのか。
なぜルート128はシリコンバレーになれなかったのか。
オックスフォード大を主席で卒業した異才のジャーナリストが、
C I A、グローバル企業、登山隊、ダイエットなど、あらゆる業界を横断し、多様性の必要性を解き明かす。
自分とは異なる人々と接し、馴染みのない考え方や行動に触れる価値とは?
【目次】
第1章 画一的集団の「死角」
第2章 クローン対反逆者
第3章 不均衡なコミュニケーション
第4章 イノベーション
第5章 エコーチェンバー現象
第6章 平均値の落とし穴
第7章 大局を見る
才能や知識、スキルがあるからといって成功できるわけではない。
多様な考え方を受け入れる認知的多様性(コグニティブ・ダイバーシティ)を手に入れ、
偏狭なものの見方や盲点にとらわれずに、思考を解放すること。
致命的な失敗を未然に発見し、
生産性を高める組織改革の全てがここにある。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (140件のレビュー)
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多様性万能論ではありません
多様性が集合知を高める。
しかし現在は、個々の多様性は考慮されず、あらゆるものが平準化・平均化され、利用されるツールやノウハウも標準化・画一化されている。
多様性を見過ごせば多様性のメリットはいか…せない。
多様と言っても異なる違いがあることが前提となる。
ただそれって、凡人でも集まれば見落としや間違いを補え合えるという、"三人寄らば文殊の知恵"的平均化じゃないの?
いや、「平均値が適切に利用されれば、複数の人々の視点や意見を活かせる。しかし不適切な場合は、複数の人々に平均的な答えを押し付けることにしかならない」
よくあるもう一つの誤解として、多様性を選ぶことが、フルに能力を発揮することを諦めることにつながるという考え。
しかし、個人知から集団知への転換が重要であることは、人類の歴史が証明しているる。
一人ひとりの知能ではネアンデルタール人に劣っていても、集団の中で知恵を積み重ね、融合のイノベーションを起こした。
人類の脳が大きいのは、結果であって原因ではない。
知恵の蓄積が脳の拡大をもたらした。
人類の繁栄は、知能の高さではなくアイデアの蓄積によっている。
独創性なんかよりも、社交性の方が、数段価値が高かかったわけだ。
偉大な発見や発明が、実は同時期に別々の場所に生まれることが多い理由もそこにある。
アイデアはつながって共有されて初めて波及効果が期待できる。
共有されたアイデアが新たなひらめきを生み、別のものと融合する機会も増える。
数々のアイデアが連鎖していくという集合脳の世界。
異なるレンズを通して見る。
視点があるからこそ盲点がある。
多様な視点で、自分の盲点に気づかせてくれる人が必要なのだろう。
とかくヒエラルキーと情報共有は対立していると考えられ、決断力と多様性のバランスをどう取るかが悩ましい問題のように捉えられているが、両者は共存できると説いている。
山登りのエキスパートであるポールのように「山では反論は一切認めない。判断の是非はあとでいくらでも話し合うが、山の上では受け付けない」という支配型リーダーは大惨事を招きやすい。
集団の中で尊敬を集め、一目置かれる尊敬型リーダーが、異なる視点を持つ人から幅広く意見を集約し、知恵を共有させれば可能なはずだと。
もちろんよく読めば必ずしも多様性バンザイと言っているわけではない。
人々は不確かな状況に陥ると、ある種の支配的リーダーを支持して、秩序を取り戻そうとする「代償調整」が働きやすい。
大戦前後の独裁国家や、恐慌期に隆盛する細かく秩序付けられたヒエラルキー宗派への改宗など、流されやすい。
多様な意見を集めたつもりが、同調圧力が生まれ付和雷同となって、会議をしたにもかかわらず失敗した原因は、会議をしたからこそ起こっていることもありうる。
平準化・標準化が本当に悪いことか?
確かに標準的なダイエット法や食事療法など、腸内細菌の構成は人それぞれなのに、バランスの良いとされる画一的な食事によって、数値は結構な乱高下を招いたりもしている。
同じものを食べても結果は異なるんだから、自分にあった食事を選ぶため、自らの体の特徴を知りモニタリングが欠かせないというのはそうだろう。
それでも平均値のマジックは絶大で、むしろ混迷する複雑な世界を生き抜くためには、それなしには生きられないと言うか、そんなことに労力や時間も費やしたくないというのが正直なところ。
それと日本人の合意形成は確かに決定や意見集約に時間かかるが、それぞれの言い分を表明しあい、最後には納得しあうという、宮本常一が評した寄り合いの文化は残す価値がないか?
「気の長い話だが、とにかく無理はしなかった。みんなが納得のいくまで話し合った。だから結論が出ると、それはキチンと守らねばならなかった。話といっても理屈を言うのではない。一つの事柄について自分の知っているかぎりの関係ある事柄をあげていくのである。話に花が咲くというのはこういうことなのだろう」
1996年に起きたエベレスト大量遭難事件のエピソードが出てくるが、人間の勇気・献身・絶望・後悔・決断・躊躇などすべて側面が詰まっていて、クラカワーの『空へ』を読んだ時の深い感動を思い出した。
あと面白かったは、規模の大きな大学と小規模な大学では、ネットワークを広げやすいのはどちらかという問い。
実は、学生数が少ない大学の方が、自分と異なるつながりが生まれやすいのだ。
インターネットも実社会と同様、世界が広がれば広がるほど、自分と似た人を見つけやすくなり、かえって人々の視野は狭まっているんだという指摘は深い。続きを読む投稿日:2022.01.16
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組織、コミュニティにおいて「多様性」がどのような福音をもたらすか、また「多様性」が無い場合どのような不具合が発生するかを考察した本。昨今流行りのテーマでもあり、興味深かった。
メリットとしては
・多…様性による思考範囲の拡大
・アイデアの組み合わせで生まれるイノベーション
・組み合わせを発生させるコミュニケーション
不具合例としては
・エコーチェンバーに伴う思考の排斥
・標準化に伴う本質原因の見落とし
あたりがトピック。
説明されると「分かる」例こそ多いが、普段生活や仕事をする上でその「分かる」を通して世界を見れているかを考えるとなかなかに難しい。
多様性の取り入れを検討する際際、そこに一時的なパフォーマンスダウンが生じることを想定してしまう。その谷を飛び越える腕力が必要だなぁと。
話としておもしろかったのは、小さなコミュニティより大きなコミュニティの方が自身と同質なメンバーを発見しやすいため、エコーチェンバーが発生する傾向があるというもの。
インターネット/SNSが「大きいコミュニティ」の最もたる例が、オリエンテーリング界隈はどちらの要素を強く持つだろうか。
『信条にそぐわない部外者に対し、その人の信頼度を貶める行為を積極的に行っている。YESであればその集団にはほぼ間違いなくエコーチェンバーが生じている』という文章には身をつまされた。
この判定基準でよくよく自身の言動を省みていきたい。
読みながら「大学入試への女子枠導入」について色々考えた。
同種のトピックでこの部分の説明はしっくり来たが、国内議論だと「この大学としてどういう姿を目指しているのか」が語られている・示されていることは少ないなと感じる。この不足は多様性に対する理解の浅さを直結しているだろう。
一方、大陸国と隔絶された島国で思考の違いを比較するのもナンセンスだし、これから課題認識を形成していけばいいのではとも思う。
また、多様性が増すと意思決定が難しくなるので、これから管理者層へと進む身としてバランスや自分のやり方は今のうちに考えておきたいなと思った。続きを読む投稿日:2024.05.01
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