この作品のレビュー
平均 3.6 (16件のレビュー)
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自身が地下アイドルである、姫乃たまさんによる地下アイドルに対する解説本。
筆者の文章力や分析力の高さが、所謂アイドルというイメージを遥かに超えていて、まさに本物のライターレベルだと思う。地下アイドル…の裾野の豊かさを感じる。
プロローグに、筆者が地下アイドルになった経緯の記載があり、この記載が一番臨場感にあふれていて生々しく面白い。
この本に書かれているように、地下アイドルは、普通の女の子が、「なんとなくなる」ことが多い。なんとなく誘われてライブハウスのステージに何の気なしに立ってみたら、ファンが付き、声援が送られる。十代のアイデンティティが確立できていない不安な時期の、承認要求から、どんどんアイドル活動にのめり込む。筆者の場合は、最終的に過重労働状況になり、うつ病になり体が動かなくなるまで地下アイドル活動をしてしまう。
SNSと同じように誰かと繋がっていたい、誰かに承認されたいという関係性のネットではないリアルな形でのかかわりなのかなと思った。
地下アイドルは、地上アイドルと異なり、ファンとの距離の近さがある意味、共同体的なチーム活動になる部分があるのが面白いなと思う。昔のいわゆるスター誕生時代の選ばれし時代はネットも発達していないし、メディアもTVからの一方的な発信によって成り立っていた。
最近はyoutubeからの発信など、TVからではなく、表現する側に色々な選択肢や可能性があり、またその発信側に、アイドルのファンも濃くかかわれる、ファン側の価値観を地下アイドルを通して表現できる。
ここにある意味クリエイティブな面白さをファンは感じるのではないか、と思った。
昔のアイドルファンとまた違った進化系の活動があるだろうな。と。
しかし、平日に地下アイドルのライブに行けてしまうとか、土日に地下アイドルのライブに行くとか、仕事や家庭との両立という意味では、相当難しいのではないかと思うが、どうやって両立しているのかな?そちら側のルポも見てみたいと感じた。続きを読む投稿日:2018.04.13
元地下アイドル当事者が書いた本ということもあり、主観に拠った礼讃本か、あるいは裏事情を暴露したスキャンダラスな内容かと思っていた。
しかし、実際はアンケートをベースにした資料となっている。筆者の視点も…、地下アイドルだった自分を研究対象として俯瞰して観察しているような冷静さを感じる。
自営業の人が読んでも参考になりそうな、ある意味でビジネス本としても読める内容。
病んでいて周囲とのかかわりが持てない女の子と、下心で近寄るおじさんで成立しているシーンだという偏見があったのだが、浅はかだった。
アイドルになりたい子は、テレビに出て有名になって経済的な成功も目指しているのだと思い込んでいたのだが、青春の1ページとして通過するだけで満足する子も少なくないと知った。ある意味で部活のようなものなのかもしれない。
たしかに高校球児の全員がプロ野球を目指しているわけではないし、高校野球ファンがプロになれな高校生を応援しているのも変な行為ではない。それは感覚的に理解できる。
地下アイドルも「高校球児」に近い存在なのだと仮定すれば、彼女たちとファンの関係も理屈では理解できそうだ。
ファンにとって彼女たちの価値は「存在」なのだ。歌や踊りは付属物であって、若さを燃焼する姿が「価値」なのだ。
<アンダーライン>
★★★★★
「私は両親のアイドルだったから、大人になってもアイドルをやるのが自然だと思った」
私自身も周囲の友人と比べて両親と仲が良かったので、自分の承認欲求の度合いが同世代の友人たちより強い可能性を考えた。
★★★★
ここから得られる帰結は、地下アイドルの子たちが、両親から存分に愛情を受けて承認されて育ってきたといこと
★★★★★
地下アイドルの8割がいじめの被害に遭った経験がある。一般の若者でいじめにあった人は4割
★★★★
アイドルに興味のなかった私が8年も地下アイドルの世界を居場所にしてきたのも、地下アイドルの女の子たちならお互いの傷が分かり敢えていたからもしれません
★★★
承認されたい地下アイドルと、認知されたいファン
★★★
ファン同士は同好の士とした仲が良い
★★★
女の子と距離を縮めるためにお金を払うのがキャバクラ。アイドルとの関係を保つためにお金を払うのが地下アイドル。
★★★★★
彼女たちは、本来自分がいたはずの幸せな空間を、現場に求めているのかもしれません。地下アイドルという他者からの承認を得る仕事をすることによって、居場所を取り戻そうとしているのが、地下アイドルの世界に足を踏み入れてきた女の子たちだと思います。
★★★★★
あまり可愛すぎない子の方が売れるのは、恋愛をしてファンを裏切る可能性が低いから。
★★★★
スクールカーストの最上位にいる子は、地下アイドルの世界に足を踏み入れない
★★★★
何が人気に繋がるのか分からない「正解の無さ」は成功したい地下アイドルの精神を追い詰める
★★★★
「いいね」の数を増やしやすいのが肌の露出
★★★★
面白くない仕事は面白い仕事に全くつながらない
★★★★★
何をしたら人気が出るのか分からない中で、誰も喜んでくれないよりは、誰か一人が絶対に喜んでくれることをしたほうが良い
★★★★★
どれだけ応援されても、私ではない女の子が応援されている感覚続きを読む投稿日:2024.05.01
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